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Energy balance of sugarcane bioethanol

サトウキビ原料バイオエタノールのエネルギー収支

 上の図は、ブラジルにおけるサトウキビ原料のエタノールの エネルギー収支の図で、サンパウロ州の要請によりカンピーナス州立大学マセード教授らが 作成した報告(2004年)1)からの引用である。数字は、サトウキビ1トンについて、 栽培・加工などで投入されたエネルギー(メガカロリー単位)と生産物(おもにエタノール) が出すエネルギー(産出エネルギー)である。産出エネルギーを投入エネルギーで割った値が エネルギー収支比で、この場合には 8.3 というかなり高い値なっている。その要因としては、 エタノール工場へ外部から供給される電気エネルギーと熱エネルギーがゼロである ことが大きくきいている。これはサトウキビの絞りカス(バガス)を燃やすエネルギーで 工場を動かしているので外部からのエネルギー投入は必要ないためである。さらに、 余るバガスは、発電などに利用するので、その分(60.2Mcal)が産出エネルギーに加算される。 8.3という値は、平均的な条件での場合であり、さらに洗練された技術を駆使した場合には 10.2 に もなる。
 この報告では、温室効果ガスのバランスについても検討している。エタノール製造過程で 排出される温室効果ガスは、上の図の「農地(サトウキビ生産)」や 「工場(エタノール製造)」で投入されたエネルギーを生むための化石燃料燃焼で生じた二酸化炭素 のほか、サトウキビ収穫前の火入れやバガスの燃焼で 生ずるメタンや亜酸化窒素(N2O)、土壌中の窒素肥料から出る亜酸化窒素などで、その量は、 サトウキビ1トン当たりCO2換算で34.5㎏と見積もられた。 これに対して、ガソリンの代わりにバイオエタノールを使うことによって削減される温室ガス排出量は 255~182㎏(余ったバガス燃焼分を含む)であった。このように、サトウキビ原料のエタノールは、 完全な再生可能燃料ではないにしても、かなりそれに近いので、カーボンニュートラル とみなされている。
1) Macedo, I. de C. et.al (2004): Assessment of greenhouse gas emissions in the production and use of fuel ethanol in Brazil. (https://web.archive.org/web/20080528051443/http://www.eners.ch/plateforme/medias/macedo_2004.pdf)
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