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22. 洪水の恵み?肥沃なアマゾン氾濫原

アマゾン川中流域の地形図

アマゾン川中流域の地形図

Topographic map of the middle Amazon basin





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 アマゾン川流域の平野は、中流部で南北に幅広く、下流部に向かって窄(すぼ)まって行くのでアマゾン盆地とよばれる。上の図はアマゾン盆地中央部の地形図である。 左辺から右辺に向かってアマゾン川が流れ、右端近くの北岸にこの地方の中心都市マナウスがある。 マナウスでは、北西から来るネグロ川がアマゾン川に合流する。ブラジルではこの地点より上流のアマゾン川をソリモンエス川と呼んでいる。
 この地図では、緑色に塗られた部分は標高200m以下の台地で、とくに濃い緑の 100m以下の台地がもっとも広い。川が増水しても水に浸からないこのような台地を現地ではテラフィルメ Terra firme という。 一方、青い破線でハッチングされて濃く見える部分は、川の水面とほぼ同じ高さの低地で、現地ではヴァルゼア várzea と呼ばれている。川の増水時に水に浸るので地形学では氾濫原と言う。 低地(氾濫原)はアマゾン川の本流や一部の支流に沿って細長伸びるだけなので、台地に比べるとはるかに小面積である。 氾濫原は水に浸かるという不利はあるが、それによって土が更新され肥沃さが維持されるという利点がある。これが人間の土地利用にとっても、動植物の生態にとっても大きな恵みである。

原図:ブラジル地理統計院-IBGE(2010):Mapa fisico do Estado do Amazonas(アマゾナス州自然図)




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 1 /21
アマゾン平野の低地と台地

アマゾン平野の低地(ヴァルゼア)と台地(テラフィルメ)

Lowland (várzea) and upland (terra firme) of the Amazon Plain












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 アマゾン盆地はおもにヴァルゼアとよばれる低地とテラフィルメとよばれる台地からなっている。 台地とそれに隣接する川や低地との比高は数mから100mを超すものまでさまざまであるが、低いものでも川の増水時に浸水することはない。 これに対して、低地は川が土砂を堆積してできた土地、すなわち常に浸水の可能性がある氾濫原である。
 この写真はアマゾナス州東部のパリンチンス市でアマゾン川と合流する支流、ラモス川から見た景観である。 遠方には森林におおわれた台地(テラフィルメ)が横たわり、その上や麓には人家が見える。 台地の麓から手前に低地(ヴァルゼア=氾濫原)がひろがっている。手前の牛が放牧されているところはラモス川の自然堤防である。 この写真を撮影した7月は水位が高い時期であるが、水に浸かっていない。 低地(氾濫原)の中でもこのように比較的高いところを高ヴァルゼアという。しかし、高ヴァルゼアもたまに起こる大洪水の時には水に浸かる。 自然堤防の向こうに見える水面は、水位がもう少し下がると陸化する低ヴァルゼアや常に水を湛えた氾濫原湖である。

2004年7月30日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 42 25.64, -56 42 39.28 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 107°

PanoraGeo-No.11




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 2 /21
サンタレン市付近のアマゾン川と氾濫原

サンタレン市付近のアマゾン川と氾濫原

Amazon River and flood plains near the city of Santarém












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 画面の左端から下端へ孤を描いて流れるのが幅4~5km あるアマゾン川で、その両側に氾濫原が広がっている。 この付近のアマゾン川氾濫原の幅はかなり広く、全体で30~40km もある。 アマゾン川の左岸(写真では右側)の氾濫原はアラピリ島という川中島である。 この島を縁取るように自然堤防が連なり、その内側の水面は水没した低ヴァルゼア(ヴァルゼアの低い部分)や氾濫原湖である。
 アマゾン川の水位は一年を通じて大きく上下する。10 月から 11 月にかけて最も低くなり、6~7月が最高になる (参考:アマゾン川の水位の年変化)。 この写真を撮影した3月は水位の上昇時期で、アマゾン川の濁った水が自然堤防の背後に流れ込み、低ヴァルゼアが水没して水面が拡大中である。 サンタレン市付近におけるアマゾン川の最高水位と最低水位の差は上流のマナウス(約10m)より小さく、約5mである。

2001年3月17日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 27 1.00, -54 35 27.29 (Google Map)  撮影方向:北より時計回り 318°

PanoraGeo-No.10




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 3 /21
増水期、マデイリーニャ川氾濫!

増水期、マデイリーニャ川氾濫!

Flooded period, flooding of the Madeirinha River












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 ブラジルの首都ブラジリアから北西へ向かう飛行機が、目的地マナウスに着く30分ほど前(約100㎞手前)に見える景観である。 明るい赤褐色に濁ったマデイリーニャ川が画面下端から上端へと流れている。 マデイリーニャ川とは小さなマデイラ川という意味。アマゾン川最大の支流で流送土砂量も最大と言われるマデイラ川の分流なので、マデイリーニャ川も土砂を大量に含んだ濁った水の川である。
 右下の森林のない陸地と左上の雲間に見える緑の土地が台地(テラフィルメ)で、その間に広いところで幅8㎞ほどの低地がある。 撮影した3月はこの辺の川の水位がかなり高い時期で、氾濫原の低い部分(低ヴァルゼア)は水没し、自然堤防などの高ヴァルゼアだけが水面上に現れている。

一般の氾濫原に見られる沖積堆積物

   一般の氾濫原に見られる沖積堆積物*1)

アマゾン氾濫原をつくる主な沖積堆積物は、自然堤防堆積物、氾濫盆地堆積物、破堤堆積物であり、 一般の氾濫原における主要な堆積物であるポイントバー堆積物は少ない。

 マデイリーニャ川右岸では自然堤防の一部を破って濁水が流れ込み、背後の水面は濁って赤褐色になっている。 一方、左岸の水面にはまだ濁水が流れ込んでいないが、水位上昇は6月まで続くので、間もなく流入が始まるはずである。 写真のやや上部、中央から左端にかけての水面には鳥趾状三角州を思わせるような列状の島影が見られる。 これは自然堤防の一点を突き破って流入したマデイリーニャ川の濁水が土砂を堆積してつくった地形である。 このような現象をクレバススプレー(crevasse splay)、その堆積物をクレバススプレー堆積物または破堤堆積物という(右の図参照)。
 水位が低い 12 月のグーグルアース画像を見ると、マデイリーニャ川の両岸の氾濫原はかなり広いことがわかる。 かつては、この低地全体が溺れ谷の水面であったが、マデイリーニャ川の土砂が堆積してこのような氾濫原ができた。アマゾン盆地の氾濫原の多くはこのようにしてできたものである。 したがって流送土砂が少なく澄んだ水の川沿いでは、氾濫原の発達が貧弱であるか、あるいは溺れ谷がそのままの残ってマウスレークマウスベイになっている。 溺れ谷と言うと、ふつうはリアス海岸のように海に近いところを思うが、勾配がきわめて小さいアマゾン川では、完新世の海面上昇(縄文海進)による海の入り江(溺れ谷)がこのような内陸にまで及んでいる。

*1)地形学辞典(二宮書店刊)、p.410、「沖積堆積物」(松本栄次 執筆)より。

2006年3月15日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 45 1.74, -59 29 19.51 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 49°

PanoraGeo-No.346




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 4 /21
リマン川沿岸ヴィラサンジョゼー集落付近の自然堤防

リマン川沿岸ヴィラサンジョゼー集落付近の自然堤防

Natural levee near the settlement of Vila São José on the Limão River












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 アマゾナス州東部、パリンチンス市郊外のリマン川沿岸にあるヴィラサンジョゼー集落付近の景観で、牛が放牧されている自然堤防の手前の水面はリマン川、向こうの水面はアロザール湖という大きな氾濫原湖である。 リマン川と氾濫原湖の船の行き来を便利にするために人工的に掘られた水路(運河)の側壁には、川の近くがもっとも高く背後の氾濫原湖に向かって少しずつ低くなる自然堤防の断面形が観察できる。
 パリンチンス付近のアマゾン川の水位は6、7月をピーク、10、11月をボトムとした年周期で変動し、平均的な年間水位差は約 7.5m なので、その支流のリマン川やその沿岸の氾濫原湖の水位もその程度は変動する。 この写真を撮影した8月初めは水位がまだ高い時期で、自然堤防の高いところ(高ヴァルゼア)だけが陸化し、背後の低ヴァルゼアはまだ水の下にある。 下の2枚の画像はこの写真撮影地点周辺のグーグルアース衛星画像で、A)はこの写真と同じような水位の時のものである。 これに対して画像 B)は、水位が最も低くなった10月末の画像で、陸化した氾濫原は数倍の広さになり、人工的水路も干上がっている。 このように、アマゾン氾濫原地帯は高水期と低水期とでは全く違った景観を呈する。
 普通だと、毎年、このような高水期と低水期が繰り返すが、たまには自然堤防全部が水没するような大洪水が発生する。 新しい土砂がたまって自然堤防が成長するのはこのような大洪水の時であり、土が更新されて土地の肥沃さが保たれるのもそのお陰である。 (参照:2009年大洪水のグーグルアース映像

2004年8月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 39 57.87, -56 56 23.28 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 5°

PanoraGeo-No.188

通常の高水期 Normal flooding season in Amazonia

A) リマン川沿岸ヴィラサンジョゼー集落付近の通常の高水期
(PanoraGeo-No.188 とほぼ同じ水位)。
2013年8月15日撮影。

通常の低水期 Low water level season in Amazonia

B) リマン川沿岸ヴィラサンジョゼー集落付近の低水期
リマン川と氾濫原湖をつなぐ運河は干上がっている。
2003年10月26日撮影。




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 5 /21
アマゾン氾濫原の沖積土

洪水の恵み、アマゾン氾濫原の沖積土

Blessing of flooding, alluvial soil on Amazonian flood plains (várzea)












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 アマゾン中流部、パリンチンス市郊外のラモス川の自然堤防とそれをつくる土層の写真である。 ラモス川はアマゾン川から分かれて 200㎞ あまり流れた後アマゾン川に戻る現地ではパラナー(側流)と呼ばれるタイプの分流である。 そのため、この川もアマゾン川と同じような濁り水で、大量の土砂を流送している。 氾濫原は、このような濁った川が氾濫して土砂を堆積することによってできる。この土砂が母材となってできる土壌が沖積土である。 アマゾン氾濫原の沖積土は、毎年、あるいは何年かに一度浸水して新しい母材が加わるので、土壌としてはきわめて未熟なものである。 しかし、その母材である土砂はおもにアンデス山脈の斜面が崩れて生じたものなので養分に富んでいる。 そのため、アマゾン氾濫原(ヴァルゼア)は台地(テラフィルメ)とは比べ物にならないほど肥沃な土地である。 アマゾン氾濫原の肥沃さはまさに洪水がもたらしてくれた恵みである。<

2004年7月30日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 42 44.17, -56 42 43.44 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 70°

PanoraGeo-No.341




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 6 /21
濁り水に浸った氾濫原林(ヴァルゼア林)

濁り水に浸った氾濫原林(ヴァルゼア林)

Inandated forest with muddy water (Várzea forest)












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 現在のアマゾン川中流部の氾濫原(ヴァルゼア)は広く牧場化・耕地化されてしまったが、かつての氾濫原は、自然堤防の高まり(高ヴァルゼア)はもちろん、年間数ヶ月浸水する低い部分(低ヴァルゼア)も、このような森林に覆われていた。 浸水林には、栄養に乏しい澄んだ水や「黒い水」に浸ったイガポー林もあるが、この写真は、栄養に富む濁り水に浸った氾濫原林(ヴァルゼア林)である。 浸水している季節には、林内は魚の格好の住処となる。浸水時に、水面に落ちてくる木の実をおもな食糧にして栄養をつけ、水が引いて川や湖に戻ると、何も食べず、いわば冬眠状態で過ごす果食魚というタイプの魚もいる。 アマゾンの森林で最初に激しく破壊されたのはこのような氾濫原林である。船によるアクセスが便利で、また水に浮かすなどして搬出が容易なためである。

2004年8月3日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 39 27.39, -57 12 36.83 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り -°

PanoraGeo-No.52




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 7 /21
氾濫原の巨大高木、スマウーマ

氾濫原の巨大高木、スマウーマ

Sumauma, a giant tree on flood plains












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 栄養に富む氾濫原に生える氾濫原林(ヴァルゼア林)は樹種も豊富な豊かな森林である。 その中でもとくに目立つのは、樹高 60~70m にも達するスマウーマの木である。氾濫原のような湿った土地に生える熱帯樹に特有の、大きな板根(ばんこん)をもっている。 バオバブをはじめ、熱帯の大木の多くを含むパンヤ科の落葉高木で、東南アジアではカポックともいう。 実の中には軽く耐水性がある綿のような繊維が詰まっており、クッションや浮き輪の詰め物などに利用される。 このほか、種から料理用や薬用の油がとれ、葉や根からは各種の病気に効く薬がとれるなどの有用樹なので、森林が伐採され牧場化された土地でも、写真のように残されていることが多い。

2002年7月31日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 10 51.90, -59 56 6.12 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 300°

PanoraGeo-No.342




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 8 /21
ラモス川沿岸の浮草原

ラモス川沿岸の浮草原(うきくさはら)

Floating meadow along the Paraná do Ramos












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 ラモス川の沿岸の浅く水流が弱いところには、この写真のように広く浮草に覆われた水面がみられる。 英語ではフローティングメドウFloating meadowとよばれるものである。 適当な日本語は見当たらないが、浮草原(うきくさはら)あるいは浮島草原などと表現できよう。 このような浮草原はアマゾン氾濫原の川や氾濫原湖を縁取って、いたるところに発達している。 この写真にあるおもな浮草は、大きな丸い葉を浮かせたオオオニバスと、手前から遠方まで一面に広がる細長い葉のカナラーナ(Canarana)である。 オオオニバスは水底に根を張り葉だけを浮かせているが、カナラーナは水位が高まるにつれて水底から根を放して浮き上がる。カナラーナは家畜のよい飼料になる。 その枯草が積み重なって浮島ができ、その上に灌木が生えることもある。 右手中ほどにそびえる葉の大きな植物は浮草ではなく、低ヴァルゼアに群生するアニンガMontrichardia Linifera )という水草である。 これらの水草からなる浮草原は稚魚の養育場所として重要である。

2002年8月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 44 36.08, -56 48 11.40 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 120°

PanoraGeo-No.51




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 9 /21
浮草原の華、オオオニバス

浮草原の華、オオオニバス

Victoria amazonica, an attractive aura in floating meadows












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 アマゾン氾濫原の川や湖沼の縁に浮き草が茂っててできた浮草原(うきくさはら、floating meadow)でもっとも目立つのはこのオオオニバス であろう。 学名はビクトリア アマゾニカ(Victoria amazonica)またはビクトリア レジア(Victoria regia)という。 子供が乗っても沈まないといわれる葉は直径3mに達するものもある。水底にある地下茎と浮水葉(水面に浮いた葉)とは長い葉柄で繋がっている。 葉柄の長さは7~8mになるので、数mから10mに達するアマゾン川やその沿岸水域の水位年変動に耐えることができる。 水位が下がり土地が陸化すると葉や葉柄は枯れるが、土の中の根や地下茎は生きており翌年には葉や花が再生してくる。 立ち上がった縁で囲まれて盥(たらい)や大きなお盆のような形の浮水葉と直径 30㎝ 以上にもなる美しい花はアマゾン観光の目玉である。

2002年8月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 44 34.52, -56 48 9.76 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 120°

PanoraGeo-No.50




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 10 /21
牛の放牧が盛んな氾濫原の大規模牧場

牛の放牧が盛んな氾濫原の大規模牧場

Cattle grasing in the large-scale pasture on flood plains












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 20世紀中ごろを中心に、アマゾン中流部の氾濫原ではジュート(黄麻)の栽培が盛んであった。しかし現在の氾濫原にはジュート畑はほとんど見られず、牛の牧場になっているところが多い。 氾濫原の牧場は土壌が肥沃で牧草が良く育つため、1ヘクタール当たり 10 頭もの牛を飼うことができる。ふつう1ヘクタールあたり1頭しか飼えないという台地(テラフィルメ)と比べると雲泥の差である。 ただ、氾濫原の牧場の欠点は、川の水位が高まって浸水してしまうと放牧できなくなることである。 そのような期間は家畜を台地の牧場に移して飼い、水位が下がると連れ戻すというアマゾン式移牧を行う必要がある。 写真は、8月初旬、水がひきはじめ、牛が台地から戻ってきた氾濫原の牧場である。

2002年8月7日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 7 5.95, -57 52 49.89 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 288°

PanoraGeo-No.177




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 11 /21
アマゾン中流部氾濫原での水牛の放牧

アマゾン中流部氾濫原での水牛の放牧

Water buffalo grazing on the flood plain of middle Amazon












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 水牛は 19 世紀後半にブラジルに移入された。アマゾン川河口部のマラジョー島が水牛の中心的飼育地域であるが、20 世紀半ば以降、アマゾン中流部の氾濫原でも飼育されるようになり、現在増加中である。 湿地の多い氾濫原は牛より水牛に適した環境といえる。また、ふつうの牛より乳の量が多く脂肪分が高いこと、成長が速いこと、飼料の幅が広いことなどが水牛の長所である。 なお、水牛の肉と牛肉の違いを見分けることは素人には難しいという。
 かつては浮草原うきくさはら、floating meadow)があったであろうこの写真のような川辺の浅瀬は、餌場としても水浴び場としても水牛が好む場所である。 しかし、同時に、そのような浮草原は稚魚などの成育場所としても貴重であり、水牛の蹂躙によってそのようなところが失われるのは深刻な環境問題である。

2002年8月12日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 33 33.50, -56 32 18.21 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 165°

PanoraGeo-No.178




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 12 /21
ラモス川氾濫原における果樹栽培

ラモス川氾濫原における果樹栽培

Fruit tree cultivation in the Ramos River flood plain












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 ジュート(黄麻)栽培が衰退して以降、アマゾン中流部の氾濫原における商品作物に目立ったものがない。 バナナ、カカオ、パッションフルーツなどの果樹やトウモロコシなどが一部で換金作物として栽培されているが、多くは自給生産の域を出ない。 写真は果樹の自給的栽培地である。 カカオ(前列左から2番目の丸い樹姿)、バナナ(同3番目と5番目の背が低く大きな葉)、パパイア(4番目、バナナの間)などが混作されている。 これらの背後にある枝葉の豊かな背の高い木はマンゴーの可能性が高い。 虫害や病害が蔓延しないよう、同一種の作物を広く栽培するのではなく、多種の作物を混作するのが熱帯での一般的農法である。 手前の水面を覆う草は、この地方の河岸を縁取る代表的な浮草で、牛や水牛の飼料となるカナラーナ(Canarana)である。

2002年8月7日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 4 34.70, -57 51 43.64 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 297°

PanoraGeo-No.347




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 13 /21
氾濫原農民のカカオ豆生産

氾濫原農民のカカオ豆生産(1)

Production of cocoa beans by farmers in flood plain(1)












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 19世紀のアマゾンでは、カカオの栽培の小さなブームが起こったが、現在でも、カカオは一部の農民の重要な現金収入源である。 カカオの木は台地(テラフィルメ)でも栽培できるが、土地の肥えた氾濫原ではよく育つ。 カカオの成樹は短期間の浸水には耐えるので、氾濫原での栽培が可能である。
 ラグビーボールのような形をしたカカオの実(カカオポオッド)の中には、白い果肉(パルプ)に包まれた30、40個のカカオ豆が入っている(右の写真)。 家の前のカカオ園から収穫してきたカカオの実の厚い皮に旦那さんが切れ目を入れ、奥さんがパルプがついたままのカカオ豆を取り出している。

2002年8月12日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 32 40.15, -56 31 20.65 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 175°

PanoraGeo-No.344

カカオの実を割ると・・

   カカオの実を割ると・・




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 14 /21
氾濫原農民のカカオ豆生産

氾濫原農民のカカオ豆生産(2)

Production of cocoa beans by farmers in flood plain (2)












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 ココアやチョコレートの原料として商品価値のあるカカオ豆は白い柔らかな果肉付に包まれているので、これを取り去る必要がある。 そのためにここで使われていたのはチピチ Tipiti という細長い籠である。 ミリチヤシの 葉柄の皮などのヒゴを編んでつくった籠で、もともとはすり潰したキャッサバを絞ってキャッサバ粉(ファリーニャ)をつくるために先住民 インディオが使っていたものである。 人の背の高さほどの長いチピチの中に果肉付きのカカオ豆(左下の)を詰める。チピチの上端をカカオの成木の幹にくくりつけ、下端に鉄パイプを通した梃に体重をかけて引っ張る。 チピチの直径が縮まって中に詰められた果肉が甘くておいしいジュースになって絞り出される。

2002年8月12日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 32 40.15, -56 31 20.65 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 175°

PanoraGeo-No.344




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 15 /21
氾濫原農民のカカオ豆生産

氾濫原農民のカカオ豆生産(3)

Production of cocoa beans by farmers in flood plain (3)












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 果肉(パルプ)を搾り取ったカカオ豆は天日で乾燥される。 カカオ豆の加工では多くの場合、殻をはいだ後1週間ほど、箱に入れたりバナナの葉で包んだりして醗酵させ、風味を高めるが、ここではチピチで絞り、その後すぐに天日乾燥である。 微妙な風味などは期待できないが、これでも十分商品になる。
 ブラジルは最近 10 年(2013-22年)平均で毎年 26 万トンのカカオを生産しており、これは全世界生産量(約450万トン/年)の約5%にあたる。 ブラジルの植民地時代の一時期、アマゾン地方のカカオ生産がブームになったこともあるが、その後長い間バイア州がブラジルにおけるカカオ生産の中心地であり続けた。 1970年代後半の5年平均ではバイア州が全国の生産量の 96 %を占め、アマゾン地方(ブラジル北部地方)はわずか 0.8 %にすぎなかった。 しかし、このあと、アマゾン地方、とくにその中のパラ州におけるカカオ生産が少しずつ増加し始め、40 年後の 2019 年には、生産が停滞気味のバイア州を抜いてパラ州がブラジル第一のカカオ生産州になった。 もちろん、この逆転劇はこの写真のような家内産業的カカオ生産がブームになったためではない。 アマゾン地方のカカオ生産を復活させたのはアマゾン横断道路沿線の農家である。当初、彼らはコーヒー、コメ、トウモロコシ、キャッサバなど様々な作物を栽培していた。 しかし、カカオがその自然・社会環境で最も有利な作物であると考えるようになってきたのである(参照:アマゾン横断道路沿線における主要作物の作付面積)。

2002年8月12日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 32 39.64, -56 31 20.04 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 120°

PanoraGeo-No.704




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 16 /21
ラモス川氾濫原でのパッションフルーツ栽培

ラモス川氾濫原でのパッションフルーツ栽培

Passion fruit cultivation in the Paraná do Ramos flood plain












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 アマゾン氾濫原で最近増えつつあるのが、パッションフルーツ(ブラジルではマラクジャ maracuja という)の栽培である。つる性の多年生作物で、杭とその上に張った針金の上を這わせる。 浸水には弱いので、氾濫原でも最も高いところで栽培される。それでも、何年か一度不規則に起こる大洪水にあえば水に浸かって駄目になるが、もともと寿命が短い作物なので、その時は植え替えればよいと割り切って栽培されている。

2002年8月7日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 3 52.66, -57 49 57.19 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 220°

PanoraGeo-No.343




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 17 /21
氾濫原住民の杭上家屋と杭上畑

氾濫原住民の杭上家屋と杭上畑

House and vegetable field of riverine people built on stakes












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 アマゾンの氾濫原の低い部分(低ヴァルゼア)は毎年の増水期に水浸しになる。 氾濫原住民の家屋などは、川沿いの自然堤防のようなやや高い部分(高ヴァルゼア)にあるが、ここも数年~十数年ごとに起こる大洪水の際には浸水を受ける。これに備えて、家屋も野菜畑も高床式になっている。 トウモロコシのような生育期間が短く低水期の間だけでも栽培できるものは高ヴァルゼアの地面に直接植えることもあるが、ネギなど生育期間の長い作物は高床式の杭上畑で栽培する必要がある。

2004年8月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 39 58.12, -56 56 28.67 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 218°

PanoraGeo-No.22




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 18 /21
パリンチンス市郊外ラモス川沿岸、先駆植物セクロピアの群落

パリンチンス市郊外ラモス川沿岸、先駆植物セクロピアの群落

Community of pioneer plant, Cecropia, along the Paraná do Ramos, suburb of Parintins












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 氾濫原一面に生えたこの植物は、氾濫原林由来の樹木でもなければ樹木作物でもない。 ブラジルではエンバウーバ(Embaúba)とよばれ、学名はセクロピアCecropia)という木である。 この木はラテンアメリカ(新熱帯区)に広く分布する典型的な先駆植物で、畑や牧場が放棄された跡地に真っ先に生えてくる。 写真のパリンチンス市を中心としたラモス川沿岸の氾濫原は、1930 年代、日系人入植者によるジュート(黄麻)の栽培が始まったところである。 ジュート栽培は、その後、アマゾン中下流部全域に広がり、アマゾンの主要な商品作物となった。 しかし、1960 年代をピークに、プラスチックなどの普及に押されて衰退をはじめ、1991 年の関税撤廃による安価な外国製品の流入によって決定的な打撃を受けた。 放棄されたジュート畑の跡地は、間もなく、写真のようなセクロピアの群落に占められるところとなった。

2004年7月30日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 41 6.51, -56 41 41.37 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 198°

PanoraGeo-No.345




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 19 /21
アマゾン氾濫原の集落

アマゾン氾濫原の集落

Settlemant of the Amazonian flood plain












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 アマゾン氾濫原には都市はない。都市は洪水時にも浸水の恐れのない台地の上の、多くは河川に接した位置にある。 しかし、氾濫原にも、この写真のリマン川沿岸ヴィラサンジョゼー集落のような小さな集落や孤立した人家はいたるところにある。 作物や牧草がよく育つ肥沃な土地と魚とりや交通に便利な川へのアクセスの良さは氾濫原住まいの利点である。 このような氾濫原集落は普通の洪水では浸水しない自然堤防の上にあるが、大洪水に備えて高床式にしてある。 しかし、近年頻発する観測史上最大の洪水では、床上浸水の憂き目にあう (参照:リマン川沿岸ヴィラサンジョセー集落の 2009 年大洪水の際の状況)。

2004年8月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 40 1.04, -56 56 49.66 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 66°

PanoraGeo-No.187




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 20 /21
低ヴァルゼアの超高床式家屋

低ヴァルゼアの超高床式家屋

Ultra-stilt house in lower varzea












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 この年の水位のピークから約1月半たち、水位が数十㎝下がった8月上旬のパリンチンス市郊外の氾濫原地帯である。 まだ川や湖の水面とほとんど同じこの土地は、氾濫原でも低い部分、すなわち高水期には毎年浸水する低ヴァルゼアである。 このようなところにも超高床の家を造って住んでいる家族がいる。この付近を所有する牧場主の言いつけで牧場の番をする使用人の家である。 水が引き始めたので、間もなくこの付近の牧場にも牛が戻って来て忙しくなるが、水に浸った高水期の3、4か月はどう過ごすのだろう。 決して豊かそうに見える家ではないが、ここには少子化の問題は存在しないようである。

2004年8月3日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 39 20.40, -57 14 2.06 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 10°

PanoraGeo-No.705




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アマゾン氾濫原(ヴァルゼア) 21 /21
パリンチンス港から望むアマゾン川とツピナンバランーナ島

パリンチンス港から望むアマゾン川とツピナンバラーナ島

View of the Amazon River and Tupinambarana Island from Parintins Port












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 アマゾナス州東部の都市パリンチンス市付近のアマゾン川を上流(西方)に向かって撮った写真である。 左端にはパリンチンス市街が乗る低い台地(テラフィルメ)と同市の港が見える。 この付近のアマゾン川は流れが速いので地元の船は入り江にある別の港を使う。このため、アマゾナス州第2の都市の港としてはやや寂しい感じである。
 写真遠方の左右両岸にある低い陸地はすべて氾濫原である。とくに右岸(写真では左)のものはツピナンバラーナ島の一部である。 この島はここパリンチンス市から西南西へ約 300㎞ 続く細長い大きな島である。 その東半分、アマゾン川とその側流ラモス川(パラナー・ド・ラモス)に挟まれた 160㎞ は、パリンチンス市がある長さ 10㎞ 足らずの台地を除いてすべてがアマゾン川がつくった氾濫原である。 このように広大なアマゾン氾濫原は、この写真のように常に明褐色に濁った水のアマゾン川が土砂を堆積してつくったものである。
 「テーマ 35. 色はいろいろ アマゾンの川たち」にある通り、アマゾン盆地の川のすべてがアマゾン川のように大量の土砂を含んで濁った川ではない。 アマゾン盆地の台地(テラフィルメ)を源流とする小河川や、北にあるギアナ高地と南のブラジル高原から流れ来る川はこのように濁った川ではない。 濁った川はアマゾン川本流や最大の支流マデイラ川のように、アンデス山脈を源流とする川である。 すなわち、アマゾン平野でもっとも肥沃で価値が高いといわれる氾濫原は、アンデスからはるばる運ばれてきた土砂の産物なのである。

2005年3月3日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 37 20.82, -56 43 55.39 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 277°

PanoraGeo-No.173


Revised and supplemented on February 15, 2024