写真や図をクリックすると、拡大画像がポップアップし、右下の ✕ で戻ります。
フェルナンド デ ノローニャ島は南アメリカ大陸の北東端に近いナタール市の東北東約 370㎞ にある。
21 の島からなるフェルナンド デ ノローニャ諸島(総面積 26㎞2)で最大の島(面積 18㎞2)で、人が住んでいるのはこの島だけである。
行政的にはブラジル、ペルナンブコ州の自治体(ムニシピオ=市町村)である。同州の州都レシーフェから島へは定期航空便があり、1時間 30~40 分かかる。 |
拡大・高画質画像 | PanoraGeo目次へ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 1 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンド デ ノローニャ島は長さ 10㎞、幅 3㎞ ほどの細長い島で、北東―南西方向に長く伸びている。写真はこの島の北西側に広がる「内の海」(マール・デ・デントロ)である。
そのように呼ばれるのは、こちら側が島を常時吹き抜ける南東貿易風に対する島陰になっていて、波静かな穏やかな海だからである。緩やかで広々とした砂浜が小さな岬に仕切られていくつも並んでいる。
この島で唯一の港はもちろんこちら側にあり(参照:サントアントニオ港付近の衛星写真)、ほとんどの集落も「内の海」近くに分布している。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 2.25, -32 26 27.19 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 61° PanoraGeo-No.693 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 2 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
*1)
Emprapa 気候データーバンク、1961-1990平年値
2007年3月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 52 11.01, -32 26 2.31 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 254°
PanoraGeo-No.293
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 3 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンド デ ノローニャ空港に着いてまず目に付くのがこのピコの丘(標高 323m)である。
響岩(small>きょうがん、フォノライト)という日本にはない火山岩からできている。
硬く緻密な板状の岩片に割れやすいが、それをハンマーなどで叩くと金属的な音がするので、フォノPhono-(音)とライト-lite(岩石・鉱物名の接尾辞)と呼ばれ、日本では響岩と訳される。 *1) Almeida, F.F.M.(2002):Arquipélago de Fernando de Noronha. in Sítio Geológico e Paleontológicos do Brasil, p.364. 2007年3月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 15.17, -32 25 36.73 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 22° PanoraGeo-No.291 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 4 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ諸島北部にあるセラジネータ島は、ピコの丘と同じ響岩(フォノライト)からなる島で、白っぽい露岩の圧倒的な存在感は印象的である。 文献によっては粗面岩(トラカイト)としているものもあるが、響岩と粗面岩は化学成分的に近接した岩石なので、どちらに分類されるか微妙なところである。 いずれの岩石もカリウムやナトリウムなどのアルカリ金属を多く含むアルカリ岩で、アルカリ岩の中では珪酸分が比較的多い白みがかった灰色の岩石である(参照:TASダイアグラム)。 これらの岩石は日本にはきわめて少なく、隠岐ユネスコ世界ジオパークの白島海岸(隠岐の島町)などの粗面岩が有名である。 2021 年8月 13 日、小笠原諸島の海底火山、福徳岡の場の噴火で大量に噴出し、沖縄諸島などに漂流して行き問題となった軽石も粗面岩と分析されている。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 49 5.42, -32 23 53.44 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 144° PanoraGeo-No.688 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 5 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンド デ ノローニャ諸島をつくった火山活動は二期に分かれる。
第一期火山活動は 1200 万年から 900 万年前にわたる新第三紀中新世後期のもので、爆発的噴火によって粉々になった岩片や火山灰(火山砕屑物)を噴出・堆積して、深さ 4000m の深海底から海面に達する大規模が山体をつくった活動である。
火山砕屑岩とそれを貫く岩体からなるこの時期の岩層をレメジオス層という。レメジオス層の地域では侵食されやすい火山砕屑岩のところは低い台地や海底となり、硬い岩体のところだけがこの写真手前のピコの丘のようにそびえている。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 49 26.16, -32 24 14.04 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 227° PanoraGeo-No.288 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 6 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンド デ ノローニャ島の北西海岸にあるドイスイルマンス島は、この国立公園のシンボル的存在である。
「二人兄弟」を意味するその名のように、海食崖で囲まれた同じような形の島が二つ並んでいる。
陸に近い右の島は陸繋砂州(トンボロ)によって本島と結ばれた陸繋島になっている。
写真手前に見える水の澄んだ海はポルコス湾で、その岸辺には海水面すれすれの高さの平坦な岩場ができている。
これは暴浪時の砕波で削られてできた波食棚またはベンチという地形である。
右の島の両側の裾にも小さな波食棚が見える。波食棚は海食崖が砕波で削られ後退した後に残った地形である。 2007年3月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 7.81, -32 26 31.85 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 8° PanoraGeo-No.40 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 7 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
同じような形で二つ並ぶドイスイルマンス島の沖側の島を海上から見た。
島を取り巻く海食崖の岩石は、フェルナンドデノローニャ島第二期火山活動(600 万~100 万年前)で噴出したキシャバ層のアンカラトライトという黒い溶岩である。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 50 47.81, -32 26 30.52 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 191° PanoraGeo-No.689 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 8 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
浜辺に降り、二つの島が重なる方向から見たドイスイルマンス島は正面から見た時とは著しく異なった印象である。
例えるなら将棋の駒を立てて置いたような形の島なので、正面から見るとどっしりと腰を据え安定した印象なのに、横からだとこの写真のように細い塔のようになる。
この塔のような横姿は左右から押し寄せる波による侵食の激しさを物語っている。
手前の島の左側の岩壁などは裾を削られてオーバーハングしている。 2007年3月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 1.91, -32 26 22.80 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 315° PanoraGeo-No.690 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 9 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ島の南西端のサパタ岬に向かっては細長い半島が突き出している。
島の北東部にある港を出て、波の静かな「内の海」をめぐる遊覧船はここまで来て引き返す。半島の向こうは遮るもののない南東貿易風が吹きすさぶ荒海である。
この半島の中ほどに半島を突き抜ける天然のトンネルがある。サパタ洞門とよばれる海食洞門である。
遊覧船のガイドが客に向かって問いかける:何の形に見えますか?・・・あっ、ブラジルだ!、南米だ!地図を思い浮かべてみるとそう見えないこともない。 *1) Magini, C. et al.(2022)の文献における P.8, Fig.6 C にこの洞門付近の溶岩流と砕屑岩層の 境界を示す写真があるが、溶岩流(flow)と砕屑物(Tuffs and Breccias)という記述が誤って 逆になっている可能性がある。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 52 19.13, -32 28 4.54 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 199° PanoraGeo-No.691 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 10 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ島の南西の端まで行って景勝地を一通り観覧した遊覧船は帰路につく・・・というのが大半の日本の遊覧船であるが、ブラジルの人はこれでは満足しない。
「覧」だけで「遊」がないと「遊覧船」とは言わないらしい。遊びを求めて、船は途中で向きを変え、サンショ湾に入って行った。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 14.32 -32 26 39.64 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 132° PanoraGeo-No.39 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 11 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ島の遊覧船は、島の風下側の「内の海」沿岸の景観を1時間半ほどで見終わった後サンショ湾に入って1時間近く停留、観光客は海水浴やシュノーケリングを楽しむことができる。 フェルナンドデノローニャ島遊覧船の最大の呼び物である。 透き通った水の波の静かな水面、砂地の海底のところどころにある魚類や海藻が豊富な岩礁など、これ以上はないとも言える条件である。 サンショ湾は環境保護の規制が厳しい国立公園地区であるが、立ち入り禁止ということはなく、このような秩序ある観光や、教育、学術研究などで入ることは認められている。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 7.81, -32 26 31.85 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 248° PanoraGeo-No.294 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 12 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ島の魅力のひとつは、暖かい澄んだ水の海でいつでもシュノーケリングが楽しめることである。
「内の海」の波が静かなサンショビーチと並ぶ人気シュノーケリングスポットがこのアタライア浜である。
アタライア浜は、南東貿易風が直接当たり波が荒い「外の海」に面しているが、浜から数十m沖に防波堤のように横たわる岩礁があり、これと浜との間にシュノーケリングに適した天然のプールができている。
この岩礁はサンゴ礁ではなく、砂浜の砂がおもに炭酸カルシュウムで固められてできたビーチロックである。
ビーチロックは熱帯・亜熱帯に多い地形で、日本では沖縄各地で見ることができる(参考:沖縄のビーチロック)。 2007年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 25.19, -32 24 32.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 164° PanoraGeo-No.694 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 13 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタライア浜でまず目につくのは沖に浮かぶ岩だらけの島である。
形がカトリックの修道士(frade)に似ているということでフラーデ島と呼ばれるこの島は、フェルナンドデノローニャ島の最高点ピコの丘と同様、硬い響岩(フォノライト)でできた岩頚である。 2007年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 23.72, -32 24 33.61 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 111° PanoraGeo-No.28 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 14 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
大礫(コブル)とは地学における砂礫の粒径区分で、直径が 64㎜ から 256㎜ までの礫を指す。 アタライア湾の奥にあるビーチの波打ち際は、この写真のような大礫サイズの礫を主とした礫浜である。 ところどころに背後の崖から落ちてきた角張った白い岩塊(おそらく凝灰岩)も見えるが、丸く黒い大礫が圧倒的に多い。 この黒い礫は、フェルナンドデノローニャ島の第二期火山活動で流出したアンカラトライト溶岩である。 地質図を見ればわかるが、この種の岩石は湾の奥にはなく、湾の東岸だけにある。とくに岬付近にはアンカラトライト溶岩の岸壁が連なっており、そこから崩れた岩塊が波打ち際にまで落ちてたまっている。 このような岩塊が荒波によって湾の奥に運ばれてきたのがこの写真の黒い大礫である。 もともとは大きく角張った岩塊も、運ばれてくる間に割れたり擦り磨かれたりして、このようなサイズのつやつやした円礫になる。 (参考:アタライア湾における礫浜の形成) 2007年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 25.19, -32 24 32.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 197° PanoraGeo-No.692 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 15 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
フェルナンドデノローニャ島では、アスファルトで舗装された道路は中軸の国道だけで、多くの観光サイトに入る道路はかなりの悪路である。 このため、島を周遊するにはもっぱらオフロード用のバギーが使われる。 写真はアタライア浜への入場を待つそのようなバギーの列である。混雑によってビーチの自然が損なわれるのを防ぐため、一回の入場者を 20人 程度に絞っているための入場待ちである。 自然保護のための規制はかなり厳格で、かつてクルーザーが寄港して一度に観光客が増えた日には、混乱をさけるためにアタライア浜が閉鎖されたほどである。 緑のシャツの人は入場を管理しているブラジル環境・再生可能天然資源院(イバーマ、IBAMA )の職員である。 2007年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 51 57.60, -32 25 34.94 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 315° PanoraGeo-No.289 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 16 /17 | 前の画像へ | 次の画像へ |
1503 年にポルトガル王室が出した探検隊により発見されたこの島は、探検のスポンサーであるフェルナン・デ・ロローニャ(Fernão de Loronha)に与えられたが、管理不十分で放置されていたため、オランダやフランスに占領されることがあった。 これを防ぐ目的で、18 世紀中ごろ、このサンタナ要塞をはじめ、10 の要塞が島に建設された。 19 世紀になると、長期囚人の刑務所としてこの要塞が利用されるようになったが、その影響で、島の自然は多く損なわれた。 囚人が隠れたり逃亡用の筏をつくったりするのを防ぐため、森林のほとんどが伐採されてしまったからである。この島の刑務所は 1957 年に閉鎖された。 現在の行政中心集落レメジオスにあるこの要塞遺跡の背後には、ピコの丘の岩峰がそびえている。 2007年3月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 50 23.22, -32 24 40.15 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 248° PanoraGeo-No.290 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ ↑ | 次の画像へ ↓ |
フェルナンドデノローニャ島 | 17 /17 | 前の画像へ | 目次へ↓ |
フェルナンドデノローニャ海洋国立公園の主役は、その名に海洋が付されていることからわかるように、透明度 30m とも 50m ともいわれる澄んだ海とそこをオアシスとして集まる海洋生物群である。 面積 112.7㎞2 の国立公園は、全部の島を合わせた陸域(26km2)の 70 %とその沿岸の深さ 50m までの海域からなっていて、面積では 84 %が海という、まさに海の公園である。 この国立公園は、西方 150㎞ にあるロカス環礁とともにユネスコの世界自然遺産「ブラジルの大西洋諸島:フェルナンド・デ・ノローニャとロカス環礁保護区群」を構成している。 海の生物でもっとも目につくのは、ウミガメ、クジラ、そしてこの写真のイルカである。 これらのうち、ウミガメは、この島に人が住むようになって以降、卵をとる、肉を食べるなどの習慣があったため、著しく減少してしまった。 ブラジル政府は、ウミガメの保護を目指すタマール(TAMAR)プロジェクト(TA=Tartaruga 亀 + MAR =海)を全国で実施しているが、この島はその実施地のひとつで、島内にはウミガメ博物館がある。 2007年3月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 50 3.89, -32 24 16.29 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 2° PanoraGeo-No.292 |
拡大・高画質画像 | 前の画像へ↑ | 目次へ↓ | テーマTopへ |