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ここで取り上げる「温帯のブラジル」は、上の地図で水色に塗られた部分で、
ブラジルの南部3州とよばれるパラナ、サンタカタリーナ、リオグランデドスールの3州にほぼ
相当するが、パラナ州の北部は除かれる。これは広く用いられているケッペンの気候区分の温帯、
すなわち C 気候の地帯とはだいぶ違う。図の右上隅に示したケッペンの区分では、
Cwa、Cwb、Cfa などの温帯気候(C 気候)が、南回帰線を越えた低緯度(北)まで、大幅に広がっているが、
「温帯のブラジル」はすべて南回帰線以南である。 この違いは、気候区分の考え方の違いである。「温帯のブラジル」の温帯は、おもに気団に注目した 成因的気候区分によるものである(図の表題の GENÉTICOS はこの意味)。すなわち、 高温な熱帯気団と寒冷な寒帯気団に覆われる時期が一年のうちで交替し、またそれらの境界に発生する 寒帯前線や温帯低気圧の影響も受けて生ずる気候である。全般的には温暖で多雨であるが、 夏と冬の温度差がかなり大きく、四季の変化がはっきりした気候となる。 ブラジルにおけるサトウキビやコーヒーの商業的栽培の南限は「温帯のブラジル」の北限と ほぼ一致している。「温帯のブラジル」では、冬にかなり低温になり霜が降りるため、 これらの作物の栽培ができないからである。 (参考:製糖エタノール工場の分布)。 まず、「温帯のブラジル」に属する3州のユニークな州都のプロフィールから・・・ |
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温帯ブラジル 1 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
「温帯のブラジル」の一番北(低緯度)にあるパラナ州の州都クリチバは、標高 900m の
高原にある。この都市は、市民の生活環境の向上・改善を最優先としたユニークな都市政策が
注目され、環境都市とか人間都市とよばれている。住民の利用しやすい公共交通システムとして導入されたのが、
この写真のような三連大型バスとバス専用レーンからなる BRT(高速バスシステム)である。
さまざまな行き先のバスが発着する円筒形の停留所では、切符を買い替えることなく乗り換えが可能なため、
安い料金で目的地まで行くことができる。写真は、そのような乗り継ぎ停留所の一つ、
都心に近いルイバルボーザ広場の停留所である。 「人間都市」というイメージは「工業都市」「産業都市」には程遠いが、近年のクイアバ都市圏の工業化は 目を見張るものがある。1970 年のクイアバ都市圏の工業生産規模は、南部地方最大のポルトアレグレ 都市圏の 1/3 にも満たなかったが、2010 年には 3/4 、2018 年には 87 %1)にまで肉薄してきた。 1) 2018年の工業部門地域総生産:クリチバ都市圏(29市)332億レアル、 ポルトアレグレ都市圏(34市)382億レアル(https://cidades.ibge.gov.br/の資料を集計) 2004年8月27日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 26 10.09, -49 16 30.15 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 102° PanoraGeo-No.352 |
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温帯ブラジル 2 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
サンタカタリーナ州の州都フロリアノポリスは、狭い海峡によって本土と隔てられた
南北に長いサンタカタリーナ島にある。島は、中部で海峡が400mほどに狭まるところにつくられた橋(写真右端
の遠方)で本土と結ばれている。スペインの植民地経営の1つの拠点であったラプラタ川地域に近いこともあり、
この都市と島はスペインの侵入を防ぐための拠点であった。
ポルトガルは、この地域の領有を確実なものとするため、サンパウロからの奥地探検隊(バンデイランテ)
の入植(1675年ごろ~)やアゾレス諸島(大西洋にあるポルトガル領の島)からの移民の入植(1748年~)
などを実施し、いくつもの要塞を建設した。それでも、1977年には、スペインに一時的に占領され、
街が破壊された歴史がある。現在のフロリアノポリスは、商業・サービスを中心とした都市で、
とくに、史跡と施設の整ったビーチが多い観光保養都市の性格が強い。また、ブラジルでは
もっとも治安の良い都市のひとつとして知られている。2015年時点では、
ブラジルの27の州都のなかで、治安の指標の一つである殺人率が最も低く、人間開発指数は最も高い。
このような評判から、サンパウロのみならず、アルゼンチン、北米、ヨーロッパなど内外の人々に
人気のある別荘地として発展している。
(参考:ブラジル各州の首都の殺人率)。
2006年3月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 28 56.86, -48 38 46.81 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 141° PanoraGeo-No.353 |
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温帯ブラジル 3 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジルで最も南にあるリオグランデドスール州の州都あるポルトアレグレ市は
「温帯のブラジル」では最大の工業集積地である。写真はその都心、ボルジェスデメデイロス通りの
昼下がりである。
この繁華街を歩いている人々をみると、ブラジルの特徴の一つである「人種のるつぼ」という感じは薄く、
肌の白い人が圧倒的に多い。このことは、統計でも明らかである。ブラジルの国勢調査(センサス)には、
「住民の肌の色または人種」という項目があり、リオグランデドスール州の「白人」の比率は 83.2 %で、
フロリアノポリスのあるサンタカタリーナ州(84.0%)とともに極端に高い
(→参考資料)。これはこの地方の
開発の歴史が反映されたものである。すなわち、18 世紀には領土の占有を確実にする国策に応じて、
アゾレス諸島から大勢のポルトガル人が入植してきた。これに続いて、1824 年に始まるドイツ人の移民、
1875 年のイタリア人の移民があり、このほかスペイン人やポーランド人なども入植してきた。
この地域に白人が多いのは、これらヨーロッパ人の流入によって開発が進んできたためである。
1989年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-30 1 48.23, -51 13 39.98 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 181° PanoraGeo-No.354 |
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温帯ブラジル 4 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
「温帯のブラジル」でもっとも目立つ自然と言えば、一目でそれとわかるパラナマツの
姿であろう。写真は、パラナ州南部の高原で見られたパラナマツの木立である。パラナマツは、
ブラジル南部地方のおもな植生型のひとつである常緑混合林(混合林とは広葉樹と針葉樹が
混在する森林)の優占種として自生する針葉樹である。パラナマツは、ナンヨウスギ科ナンヨウスギ属の
木で、学名は Araucaria braziliensis または Araucaria Angustifolia という。
樹高は 30m にもなり、良質の木材を産する。ピニョンとよばれる実は先住民の時代から重要な食料であった。
有用な木のため、この写真のように、牧場化などのために森林が伐採されたときでも、
パラナマツだけは切られずに残っていることが多い。
アラウカリアは南アメリカ大陸の温帯林を代表する木で、南部アンデスの
チリマツ (Araucaria araucana) も有名である。
1994年8月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 22 22.24, -51 16 31.37 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 240° PanoraGeo-No.220 |
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温帯ブラジル 5 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
「温帯のブラジル」(ブラジル南部地方)はブラジル最大の木材産地である。
とくにパラナ州とサンタカタリーナ州では、天然に生えるパラナマツ(アラウカリア)を利用した
木材産業が発達してきたが、現在では人工林(植林)の利用が主体である。ブラジルではユーカリと
マツ類が二大植林樹種(両者で 90 %)である。ユーカリはサンパウロ州以北に多く、
「温帯のブラジル」ではマツ類が圧倒的に多い。成長が遅いパラナマツの植林はごくわずかである。
写真は 1996 年パラナ州南部の小都市ピエーン(Piên)市に建設されたフローリング材製造大手企業
Tafisa Brasil の工場とその近辺に残っているパラナマツ林である。
2004年8月26日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-26 6 1.27, -49 24 44.86 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 308° PanoraGeo-No.221 |
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温帯ブラジル 6 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
マテ茶は、「温帯のブラジル」のほか、パラグアイ、ウルグアイ、アルゼンチンなどで
愛飲されている。原料のエルバマテ(Ilex paraguariensis)は、「温帯のブラジル」の北半部
(低緯度側半分)などに広く分布する常緑混合林(アラウカリア林)の中に自生する灌木であるが、
写真のこの工場では、裏にある畑で栽培されていた。マテ茶は、工場の前に立つ巨大な模型のような
茶器を使って飲む。容器(クイア Cuia)は瓢箪からつくったものが多い。上に突き出した棒(ボンバ Bomba)
は、お茶を吸うための一種のストローで、下端には茶こしがついている。
このような茶器を使って飲むマテ茶は、日本茶でいえば緑茶に当たるものが多いが、このほか、
紅茶のように加工したロースト(orブラック)マテ茶(Mate tostado)もあり、ティーバックなどの
形で売られているものにはこれが多い。
1998年7月22日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 53 40.93, -50 21 32.63 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 120° PanoraGeo-No.362 |
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温帯ブラジル 7 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
「温帯のブラジル」の大部分は、ブラジル高原の一部で南部高原とよばれる
高原である。パラナ州ではこの高原の東端を海岸山脈(セラドマール)が縁取って大西洋を
見下ろしている(地形地質断面図の(1))。
この山脈はクリチバ市がある高原の側から見れば、高さ数百mの平凡な山地であるが、
大西洋岸の低地から見上げると高さ千数百mの巨大な壁である。
その中でも目立つのは、ブラジルにおけるアルピニズムの発祥地といわれる
マルンビ山の岩峰である。写真はクリチバとその外港パラナグアを結ぶ鉄道が
海岸山脈の中腹に設けたマルンビ駅から見上げたマルンビ山。花崗岩のこの山は多くの節理によって
8つの岩峰に分かれ、最高峰はオリンポ峰の1539m。海岸山脈の険しい山腹を下るスリル満点の
この鉄道は観光客に人気があり、毎日朝、クリチバ発の観光列車が運行される。
しかし、この鉄道の役割としては、内陸で生産された大豆などの産物を輸出港パラナグアへ運ぶ
ことの方が大きい。マルンビ山とその周辺は、世界遺産「大西洋岸森林南東部の保護区群」を構成する
25の保護区のひとつ、マルンビ山州立公園である。
1998年7月18日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 26 21.07, -48 55 8.65 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 167° PanoraGeo-No.355 |
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温帯ブラジル 8 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ヴィラヴェーリャはクリチバ市の西北西 80㎞ にあるパラナ州の州立公園である。
パラナ州の高原は東から西へ、第一高原、第二高原、第三高原の三つに分かれるが、ここは第二高原で
ある。第二高原は、西に向かって緩やかに傾斜する古生代の地層がつくるケスタの背面である。
(参照:地形地質断面図の (2))。
この古生代の硬い砂岩層がむき出しになって、各所で写真のような台地(メサ)をつくっている。
メサの縁辺部の岩石が節理(割れ目)に沿って侵食を受けてできた多数の奇妙な形の岩塔が
この公園の呼び物である。その名のヴィラは「村」、ヴェーリャは「古い」の意味で、たくさんの岩塔が
並んだ景観を村の家々が並んだのになぞらえて「古い村」と呼んだものである。
古生代の硬岩層はヴィラヴェーリャの 20㎞ ほど東で、東を向いたケスタの崖をつくっている。この崖より東には、
先カンブリア時代の岩石の準平原である第一高原がひろがり、クリチバなどの都市がある。
ヴィラヴェーリャ付近には、部分的に写真のような草原が発達している。アルゼンチンパンパに代表される
南米温帯草原の最北部である。
1994年8月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 14 26.86, -50 1 49.97 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 114° PanoraGeo-No.356 |
![]() ヴィラヴェーリャの奇岩 |
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温帯ブラジル 9 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
エスペランサ山脈は、パラナ州からリオグランデドスール州へのびる
ジェラール山脈の一部で、パラナ州南部の部分の地方名である。
写真は、エスペランサ山脈を東側から望んだもので、山頂の標高は 1100~1200m でほぼ一定である。
このように頂が揃っているのは、この山脈が本質的にはケスタの崖にほかならないからである
(地形地質断面図の(3))。
左寄りに見えるモルンガーバの丘(俗にシャペーウの丘=帽子の丘の意)
も、手前にあるために高く見えるだけで、標高は 1119m と山脈本体と変わらない。
このケスタをつくる岩石は、基部に中生代ジュラ~白亜紀の砂岩層(ボツカツ層)があるものの、
大部分は中生代白亜紀に噴出した玄武岩質溶岩層(セラジェラール層)である。
写真のスカイラインから向こうには、この溶岩層からなるパラナ第三高原がひろがっている。
ケスタの背面に当たるこの高原は、1㎞ 行くと3m 下がるという程度の
非常に緩やかな傾斜で西に向かって低下して行く。
1994年8月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 17 44.44, -51 8 15.98 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 278° PanoraGeo-No.357 |
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南アメリカでもっともよく知られた観光地のひとつで、世界自然遺産である
イグアスの滝はパラナ州の南西端にある。パラナ州中部のエスペランサ山脈では1000m以上の標高があった
パラナ州第三高原は、西に向かってしだいに高度を下げ、ここまで来ると200m前後の標高になる
(参照:地形地質断面の(4))。
高原の西の端には、高原から100m弱掘り込んだ峡谷の中を、パラナ川が南に向かって流れている。
イグアスの滝は、このパラナ川に東から流れ込む支流イグアス川にある。かつてはパラナ川との合流点
にあったはずのこの滝は、長い間の侵食によって、25㎞ほど上流に後退している。
滝をつくる硬い岩盤は、第三高原をつくっている中生代白亜紀の玄武岩(セラジェラール層)である。
ゴンドワナ大陸がアフリカと南米に分裂し始めたころ、不安定化したこの地域で、何度にもわたり
大量に噴出・流出した溶岩層である。写真は、高原を浅く掘り込んで溶岩層の上を流れてきたイグアス川
の水が、パラナ川のレベルまで一気に落ち込むイグアスの滝の落ち口である。
1994年8月9日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 41 27.92, -54 26 13.35 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 194° PanoraGeo-No.358 |
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パラナ州中南部からサンタカタリーナ州にかけて、南東方向に伸びてきた
ジェラール山脈(セラジェラール)は、サンタカタリーナ州南部から南では南西方向、すなわち、
海岸に並行して走るようになる。写真はサンタカタリーナ州南部、ラウロミュラー市郊外の丘陵地から
西を向いて、標高1400m前後で一部に雲を頂くジェラール山脈を望んだものである。
この付近ののジェラール山脈は、パラナ州と同様、中生代白亜紀の玄武岩質溶岩層(セラジェラール層)が
つくるケスタであるが、高さ1000m前後の崖が150㎞にわたって連続するという壮大さである。 サンタカタリーナ州はリオグランデドスール州に次ぐブラジル第2の石炭産地で、 ラウロミュラーはその中心地である。この写真でジェラール山脈の麓にひろがる丘陵地は、 セラジェラール層の下位に横たわる古生代石炭紀の層からなっており、ブラジルの石炭のほとんどは、 南部地方のこの地層から採掘される。クリシウーマを中心とするサンタカタリーナ州南部 海岸部の都市群は、炭田都市圏(カルボニフェーラ都市圏)とよばれている。 1998年7月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 22 54.97, -49 26 13.40 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 306° PanoraGeo-No.359 |
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サンタカタリーナ州のジェラール山脈の急な崖を登りきると、
突然、写真のような草原の高原に出る。中生代の玄武岩質溶岩層
(セラジェラール層)がつくるケスタの背面にひろがる温帯草原のサンジョアキン草原である。
谷沿いや谷頭などにはパラナマツの木立がみられるが、あとは灌木などが混じらない草だけの
原野である。ブラジルでは、このような原野を、「きれいな原野」という意味のカンポリンポ
(Campo limpo)とよんでいる。多かれ少なかれ灌木が散在するサバナ(熱帯草原とよばれることもある)
とは大きく異なる温帯草原の特徴である。
サンタカタリーナ州南部からリオグランデドスール州北部にかけては、
このような温帯草原の地区とパラナマツが優占する常緑混合林の地区とが入り混じって、
ほぼ半分ずつ分布している
(参照:植生図)。
1998年7月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 21 28.62, -49 35 24.90 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 49° PanoraGeo-No.360 |
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サンジョアキン市は、サンタカタリーナ州南部の標高 1400mの高原にある小都市で、
ブラジルで最も寒い都市と言われている。年平均気温は 13.5℃、年降水量は 1888mm で、これだけみると
日本の新潟とよく似ている。しかし、気温の年較差は 7.4℃と小さい(新潟は 23.7℃)。つまり
新潟より夏ははるかに涼しく、冬は寒くない。最も寒い6月の平均気温は 9.5℃である
(サンジョアキン資料(1))。 この都市のトレードマークは冬にまれに降る雪とリンゴの栽培で、 街の入口にあったゲートでは雪だるま(左)とリンゴ(右)が旅行者を迎えてくれる。 サンジョアキン市はブラジル第一のリンゴの生産地で(2017年)、日系人が経営する 企業も活躍している(サンジョアキン資料(2))。 1998年7月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 16 13.89, -49 54 54.50 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 226° PanoraGeo-No.364 |
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ブラジルにおける主要リンゴ生産地のひとつであるヴァカリア市
(リオグランデドスール州)の南方 60㎞、同州カシアスドスール市郊外に、常緑混合林(アラウカリア林)
をひらいてつくられたリンゴ栽培地である。有用なアラウカリアの木は切らずに残されている。
かつて、ブラジルでリンゴと言えば、アルゼンチンから輸入したものと決まっていたが、
1980 年代以降のブラジル国内におけるリンゴの生産は驚異的に伸び、リンゴはブラジル人にとって
もっともポピュラーな果物のひとつとなった。
(資料:ブラジルにおけるリンゴの国内生産量と輸入量の推移)。
この写真のリンゴ園の隣には、モモの果樹園もあった。温帯気候のリオグランデドスール州北部の高原地帯
(セラガウーシャ Serra Gaúcha)では、リンゴ、モモ、ブドウなどの果樹やニンジン、
ニンニクなどを栽培する自営農家による農業が発達している。
2004年8月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 4 6.10, -50 56 34.42 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 314° PanoraGeo-No.26 |
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温帯ブラジル 15 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジルにおける大豆生産の中心は、熱帯産大豆を産するマトグロッソ州、
ゴイアス州、バイア州西部などのカンポセラード地域に移った感があるが、もともと、
大豆は温帯地域の産物で、南部地方の高原がブラジルにおける伝統的大豆栽培地であった。
2000 年に、生産量の首位の座をマトグロッソ州に譲った後も、おおむね、パラナ州は第2位、
リオグランデドスール州は第3位を維持しており、温帯ブラジルの大豆生産は健在である
(参照:ブラジル各州の大豆生産量)。
写真はブラジル南部高原、リオグランデドスール州の標高 800~900m の丘陵地にひろがる大豆畑である。
2006年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 43 27.45, -51 5 12.78 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 128° PanoraGeo-No.25 |
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温帯ブラジル 16 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
「温帯のブラジル」最南のリオグランデドスール州の北東部は、ブラジル南部高原
の南の端にあたるが、多くの谷が入り込んで凹凸の激しい地形になっており、ガウーシャ山地
(セラガウーシャ)とよばれている。ガウーシャまたはガウーショは「リオグランデドスールの」という
意味なので、リオグランデドスール山地とよんでもよい。「セラガウーシャ」はリオグランデ
ドスール州北東部を指す地方名でもある。この山地は、写真のように谷は深いが、高所には
平坦な高原が広く残っている。カシアスドスールを最大とするこの地方の都市のほとんどは高原の
上にある。隣の都市に行くには、深い谷へ下りまた登らなくてはならないので、大変である。
谷斜面の上の方にみえる岩壁はこの地域の高原をつくる中生代白亜紀の溶岩層(セラジェラール層)
である。
2004年8月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 19 57.05, -51 25 14.64 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 308° PanoraGeo-No.361 |
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温帯ブラジル 17 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
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リオグランデドスール州の州都ポルトアレグレから北へ向かい、
セラガウーシャを刻む小谷を登りきった高原の上に、
カルロスバルボーザという人口3万あまりの小都市がある。写真はこの都市の鉄道の駅前である。
近くのベントゴンサルヴェス市から来る観光 SL 列車マリアフマーサ号を待つ観光客で賑わっている。
セラガウーシャの都市の多くは観光客の誘致に積極的である。また、この都市はブラジル最大手の
金属キッチン用品メーカー、トラモンティーナ社の企業城下町である。イタリア人移民入植者
の子息が 1911 年に設立した企業で、ブラジル全国はおろか、世界 120 か国に製品を供給している。
写真後方の青地に白い文字で TRAMONTINA と書かれた2本の白い塔のところに同社の主力工場がある。
2006年4月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 16 56.12, -51 29 31.35 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 184° PanoraGeo-No.365 |
![]() 当家愛用のTRAMONTINA ![]() |
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温帯ブラジル 18 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
リオグランデドスール州北東部のセラガウーシャ地方にある都市ベントゴンサルヴェス
はイタリア人移民の入植を起源とする町であるが、その郊外に「ブドウ園の谷」
(ヴァーレドスヴィニェードス Vale dos Vinhedos)という地区がある。そこには、
写真手前や遠方の丘斜面のようなブドウ畑が各所にひらかれ、大小のワイナリーが散在している。
写真はそのうちの大手、ミオーロ社のワイナリーである。
ブラジルワイン6大産地といわれるもののうち5つが「温帯のブラジル」にあり、その中でも最も
重要な産地がこのセラガウーシャ地方で、ブラジルのワイン全体の 85 %を生産している。
「ブドウ園の谷」は、そのセラガウーシャ地方におけるワイン生産の中心地である。
「温帯ブラジル」以外のおもなワイン産地は、ブラジル北東部地方のサンフランシスコ川中流部沿岸
(ペトロリーナ市付近)である。そこでブドウ栽培を始めて成功した M.Yamamoto 氏の農場はミオーロ社によって
引き継がれている。最近では、「温帯のブラジル」以外でも、サンパウロ・ミナスゼライス州境のマンチケイラ山地などに
新興のワイン産地が出来つつある
(参照:ブラジルワイン主要産地1))。
1) 出典: ホームページ Vinhos do Brasil:http://vinhosdobrasilreport.com.br/regioes-produtoras/ 2004年8月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 11 9.76, -51 34 50.46 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 331° PanoraGeo-No.366 |
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温帯ブラジル 19 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
サンタカタリーナ州北東部にあるブルメナウ市(人口 36.6 万、2021 年推定)は、
1850 年に第一陣が入ったドイツ人移民の農業入植がもとになってできた都市で、ドイツ人移民の
シンボルともいえる存在である。
写真の商店街は、入植当初の市街建設で川沿いにつくられた「大通り」(ドイツ語で
ハウプトシュトラッセ)という名の生活道路であった。「11 月 15 日通り」と名前は変わったが、
現在でもこの都市の目抜き通りで、両側には白壁の木骨造りのドイツ風建物が並んでいる。
サンタカタリーナ州はサンパウロに次いで繊維製品の生産が多い州であるが、その中心はブルメナウである。
その基礎をつくったのがドイツ人入植者たちで、始めは単純な民芸品づくりにすぎなかった産業を、
綿織物を中心とした繊維産業へと発展させていった。とくに、1880 年にドイツ人移民のへリング兄弟が
設立したエーリング社(Cia. Hering、本社ブルメナウ)は、現在、ラテンアメリカ最大の衣料品
メーカーである。
2004年8月26日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-26 55 8.43, -49 3 57.90 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 139° PanoraGeo-No.367 |
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温帯ブラジル 20 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
このお伽の国にあるような木骨造り(または木骨造
もっこつぞう)の建物は、サンタカタリーナ州北東部にある
小都市ポメローデ(人口 3.5 万、2021年推定)の南ゲートで、市営の観光案内所や売店などが入っている。
木骨造りとは、木を組んだ枠組の間をレンガや漆喰で埋めて造る壁構造の建築で、ドイツでは
どこでも見られるもの。「温帯のブラジル」には、ドイツやイタリアからの移民が起源となって大きく
成長した都市や企業が多いが、この町には 1863 年にドイツ人が農業入植した当時の町や農村の様子が色濃く
残っていて、「ブラジルで最もドイツ的な町」として多くの観光客が訪れる。住民はポルトガル語とドイツ語
のバイリンガル、市の名前は入植者たちの出身地であるバルト海沿岸のポメラニア地方に由来する。
2006年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-26 44 39.24, -49 10 28.42 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 1° PanoraGeo-No.368 |
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「温帯のブラジル」の最も南、リオグランデドスール州の南半分には、温帯草原が
ひろがる(参照: 植生図)。同州北半分が高原なのに対し、
ここは標高の低い平野や丘陵で、最も高いところでも500mくらいである。
この草原はウルグアイやアルゼンチンから続く温帯草原、すなわちパンパの一部である。
牧牛を主とし、羊や馬の飼育も盛んな豊かな牧畜地域である。この温帯草原の牧場で働く勇敢な
カーボーイのことをブラジルではガウーショ、アルゼンチンなどスペイン語圏ではガウチョというが、
ブラジルでは、リオグランデドスール州の住民あるいは出身者のこともガウーショ(男性)あるいは
ガウーシャ(女性)という。また、ガウーショやガウーシャは「リオグランデドスール州の」という
形容詞にも使われことからも、この草原のカーボーイは、リオグランデドスールの象徴的存在と
言うことができよう。
2004年8月21日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-31 19 42.26, -52 2 26.54 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 262° PanoraGeo-No.363 |
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