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南アメリカ大陸を北西から南東に斜めに横切る
乾燥ダイアゴナル
の砂漠地帯は、大陸南部では、アンデス山脈稜線より東のアルゼンチン側に分布する。
左の図で、濃い青のプーナ、ヤマブキ色のモンテ砂漠(山地部)、黄色の
モンテ砂漠(平野部)、茶色のパタゴニア砂漠(ステップ)の四者が
アルゼンチンの砂漠である。
プーナは、標高3000~4000mの盆地と 5000~6000m 台の山からなるアタカマ高地の砂漠である。 砂漠には、無植生か植生が極めて疎らな乾燥砂漠(arid desert)と灌木や草本が疎らに生えた 半砂漠(semi-desert)があるが、アルゼンチンの砂漠の大部分は半砂漠である。 アルゼンチンの北端の南緯23度付近では、チリとアルゼンチンにまたがるアンデス山脈の ほぼ全域が砂漠であるが、東端を走る前山の斜面にはユンガス森林(ピンク色)が 成立している。東方の大西洋から侵入してくる湿った空気が山に当たって生ずる地形性降雨 のためである。アンデス山脈の全体が砂漠になるのは南緯 28 度以南で、南緯30度付近までである。 南緯 30 度付近より南では、偏西風が吹きつけるアンデス山脈西側のチリでは、降水量が 増えてステップや森林になる一方、アルゼンチン側では、アンデス山脈を越えて吹き下ろす 乾いた風のために砂漠がひろがるようになる。 原図: https://argentinaxplora.com/activida/natural/nateco.htm |
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アルゼンチンの砂漠 1 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン北西部、アンデス山脈の東斜面から山麓にかけてひろがる
モンテ砂漠(山地部)の植生は、乾燥砂漠のアタカマ砂漠はもちろん、アルゼンチンのほかの半砂漠と比べても
多彩である。草本や灌木のほか、写真のような大型のサボテンも多い。
このサボテンは、標高 800~2000m の土地に自生するカルドングランデとよばれるもので、
学名はEchinopsis terscheckii、背の高さは 10~12m にもなる。
北アメリカのソノラ砂漠にあるサワロ・サボテン(Saguaro cuctus、学名 Carnegiea gigantea)に
似ているので、アルゼンチンのサワロともよばれる。この例をはじめ、赤道をはさんで5000㎞も隔たった
モンテ砂漠とソノラ砂漠とは植物相が非常に類似している。その理由に関しては、長年論争されてきたが
未解決である1)。 1) Grupo de Investigacion em Ecologia de Comunidades de Desierto:Desierto Monte 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 26 17.91, -67 51 32.68 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 189° |
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アルゼンチンの砂漠 2 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
モンテ砂漠(山地部)は、アルゼンチン・アンデス山脈東斜面の
プレコルディレラ(前山山地)と山麓に近いパンパス山地にかけてひろがっている
(参照:アンデス山脈とモンテ砂漠(山地部))。
パンパス山地(現地語ではSierras Pampeanas)は、おもに南北に走る数列の山脈と幅広い盆地
からなっている。写真は、そのようなパンパス山地の西部にあるファマティナ山脈を、東麓の
盆地(サンタエレナ低地)から望んだものである。右寄りに見える雪を頂いた峰は、
この山脈の主峰でパンパス山地の最高峰でもあるヘネラルベルグラノ山(標高 6097m、
正式名ヘネラル・マヌエル・ベルグラノ山)である。半砂漠状の盆地の標高は約 1100m なので、
ヘネラルベルグラノ山とは5000mの標高差があるが、そのように大きな比高があるようには見えない。
それはファマティナ山脈の東斜面が極めて緩やかなためのようである。
ファマティナ山脈をはじめ、パンパス山地を構成する山脈のほとんどは、西側が急な断層崖、
東側がゆるやかな斜面という非対称な地形の傾動地塊(傾動山地)である。
写真手前の鉄道は、チレシトで産する銅鉱などを輸出港に運ぶのに使われた鉄道であるが、
1990年に廃線となった。 2004年9月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 11 40.16, -67 29 23.41 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 293° |
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アルゼンチンの砂漠 3 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
チレシトは、アルゼンチン西部、ラリオハ州のモンテ砂漠(山地部)にある
オアシス都市である。写真は、この都市の中央広場から西にそびえるファマティナ山脈の主峰
ヘネラルベルグラノ山(標高 6097m)を見上げたものである。この山の中腹の標高 4300~4900m には、
金を含む銅鉱などを産するラメヒカーナ(La Mejicana)鉱山がある。先住民の時代から存在が
知られていたが、19 世紀末ごろイギリス資本による本格的な開発が実施された。チレシトとラメヒカーナ鉱山
の間には延長34㎞、標高差 3325m という長大な索道(鉱石運搬用リフト)が建設され(1905 年完成)、また
鉱石をヨーロッパへ輸出するための港へ通じる鉄道も敷設された。ラメヒカーナ鉱山は 1926 年に閉鎖されたが、
この索道は、現在、国の歴史的記念物に指定されている。
現在のチレシト市のおもな産業はブドウやオリーブの栽培とワインの製造である。
チレシト市とその周辺一帯は、ファマティナ山脈の東麓に発達した大規模な扇状地の地下水を汲み上げ
農業や都市用水とする地下水オアシスである。 2004年9月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 9 52.03, -67 29 43.69 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 300° |
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アルゼンチンの砂漠 4 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン北西部ラリオハ州のタランパヤ国立公園は、アンデス山脈の山麓近くに
ひろがるモンテ砂漠(山地部)の中央部にある。隣接するイスキグアラスト州立公園(サンファン州)とともに
世界自然遺産「イスキグアラスト・タランパヤ自然公園群」に指定されている。
写真は、この公園があるタランパヤ盆地(地質的にはイスキグアラスト・ビジャウニオン
Ischigualasto-Villa Union 堆積盆地)の灌木が疎らに生えた砂砂漠である。
写真左遠方に見える雪を頂いたファマティナ山脈とその南(写真では右)につづくサニョガスタ山脈が
この幅広い盆地の東を限っている。ファマティナ山脈の手前に黒く見える丘は、この盆地の一部に
あるタランパヤ台地で、この国立公園の呼び物タランパヤ川峡谷は、この台地を掘り込んで形成されている。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 56 19.34, -67 51 11.55 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 7° |
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アルゼンチンの砂漠 5 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
世界自然遺産イスキグアラスト・タランパヤ自然公園群の主要資産である
タランパヤ川峡谷は、アルゼンチン北西部ラリオハ州のタランパヤ国立公園にある。
ほとんど水平に横たわる中生代ジュラ紀初期(2.42 億~2.48 億年前)の地層でできた台地に
切り込んだ峡谷の幅は約 300m、垂直にそびえる側壁の高さは 100m 前後ある。
谷筋は上流から下流へ緩やかに屈曲しながら3㎞あまり続いている。
砂質で平坦な谷底には灌木が生え、中心部には植生のないごく浅い溝があって、まれに降る雨の時には
水が流れるらしいが、平常時には乾いていて、観光客を乗せたガイド専用車両の通路になっている。
このように現在のタランパヤ川の貧弱な流れによって、この壮大な峡谷が掘られたとは考えにくい。
おそらく、氷期のような過去の地質時代に、現在より水量も流送砂礫量も多く、侵食力が大きい
タランパヤ川が台地を切り込んで形成したものと思われる。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 46 57.65, -67 50 8.13 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 79° |
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アルゼンチンの砂漠 6 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
モンテ砂漠(山地部)は、アルゼンチン北西部、アンデス山脈東側山麓部の
小さな山脈と盆地が交互する地帯(パンパス山地)に展開している。ミランダ川は、その山脈のひとつ
であるファマティナ山脈から流れ出る川で、世界遺産タランパヤ川峡谷の北 50㎞ ほどの
ところを流れている。沿岸一帯は灌木性の半砂漠であるが、標高 6097m の白雪を頂くヘネラルベルグラノ山を
源流とするため、水が涸れることはない。また、ファマティナ山脈からもたらされる大量の花崗岩の
礫が河床に転がった礫床河川である。壮大なタランパヤ川峡谷を掘り込んだ当時のタランパヤ川は、
このようなエネルギーの大きな川だったのではないかと思われる。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 20 26.63, -67 45 48.92 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 343° |
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アルゼンチンの砂漠 7 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン北西部の乾燥地域、モンテ砂漠(山地部)にある
タランパヤ川峡谷の高さ約100mの垂直な谷壁には、半シリンダー形の縦溝が
一面に発達しており、巨大な「パイプオルガン」になぞらえられている。
あるいは、巨大なヒダ有りカーテンという形容も可能かもしれない。そのでき方について、
現地ガイドの説明や研究者の書いたものは、渦を巻いた風が擦り磨いてできた
ものと説明している(下の図を参照)。
このような風食説には、腑に落ちない点が少なくなかったが、当時はそういうものかと
信じていた。しかし、後になって、もっと妥当な説明が可能と考えるような
事例に出あうことになる。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 46 33.63, -67 49 9.06 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 138° |
PanoraGeo-No.32 |
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アルゼンチンの砂漠 8 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
タランパヤ川峡谷の垂直な谷壁に刻まれた多数の縦溝、いわゆる「パイプオルガン」のパイプの
ひとつを、下から望んだものである。その水平断面は見事な半円で、まさに円筒を縦に割った形のハーフパイプ
である。
ただ、このパイプをよく見ると、中心となる径の大きなパイプの右に沿って径の小さなパイプが付随している。
従来言われてきたような渦を巻いた風による侵食によって、このように微妙な地形ができるだろうか? 風といっても、
空気ではなく、風で巻き上げられた砂が紙やすりのようにして岩盤を削磨するのであろう。とすれば、砂塵の濃度が
薄い崖の上部ではパイプができにくいはずであるが、パイプは下から上まで一様にできている。 従来の風食説に対し、ここでは水食説を提案する。それは、多雨期で水量も流送砂礫も豊富だった タランパヤ川が、峡谷を掘り下げると同時にパイプも彫り上げた、という考えである。パイプは 下刻が進みつつある河床につくられたポットホール(甌穴)である。この考えのヒントとなった のは、同じ南アメリカではあるが、ここよりはるかに離れた ブラジル北東部での事例である。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 47 26.23, -67 50 27.21 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り - |
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アルゼンチンの砂漠 9 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
世界自然遺産タランパヤ川峡谷の垂直な崖は、中生代三畳紀初期(約2.5億年前)
の、川などによる陸成の堆積岩でできている。その主体は、現在と同じような乾燥した気候のもとで
川が堆積した砂からなる砂岩層(タランパヤ層)であるが、最上部(水平なやや深い割れ目が目立つ部分)
には、やや粘土質で崩れにくいタルハドス(Tarjados)層が不整合に載っている。
タルハドス層の崖の表面が黒っぽいのは、長い間乾燥気候にさらされた結果、砂漠ワニスができたためである。
できた時にはほとんど垂直だったタランパヤ川峡谷の崖も、一部ではその表面が崩れ、落ちた岩屑が
麓にたまって崖錐ができている。崩れやすい下位のタランバヤ層が崩れると、支えを失った上位の
タルハドス層も大きなブロックとなって落ちてくる。崖錐の上に散在する表面が黒い岩塊がそれである。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 47 29.68, -67 50 40.80 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 134° |
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アルゼンチンの砂漠 10 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
タランパヤ国立公園タランパヤ川峡谷の垂直な崖の下にできた崖錐の上に横たわる
岩塊の表面には、さまざまな岩絵が描かれている。岩の表面を削って描いたペトログリフ
というタイプの岩絵である。ここのペトログリフは、乾燥した砂漠気候のもとで岩石の表面にできた
黒い砂漠ワニスを削って描かれている。砂漠ワニスは、岩石の表面に付着した塵などが、
乾燥した気候下で酸化してできる被膜で、おもにマンガンや鉄の酸化物である。
タランパヤの岩絵には、幾何学的模様、人物、動物(とくにグアナコが多い)、動物や人の足形などがある。
この付近の遺跡から見つかる有機物の C14 年代測定では 2590 年~960 年前という結果が出ているので
1)、岩絵もその頃の人々が描いたものと考えられる。 >2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 47 29.68, -67 50 40.80 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 134° |
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アルゼンチンの砂漠 11 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン西部のタランパヤ国立公園のあるタランパヤ盆地から、
東方のサニョガスタ山脈を望んだ景観である。
手前には、中生代三畳紀の赤色の砂岩層(タランパヤ層)からなる丘陵があり、
遠方には、古生代に貫入した花崗岩からなる灰色のサニョガスタ山脈が横たわっている。
植生が疎らな砂漠なので、色の違いで地質の違いがはっきりわかる。
サニョガスタ山脈はパンパス山地を構成する山脈のひとつで、ほかの山脈と同様、
西に写真のような急な断層崖を向け、東に緩やかに傾く傾動山地(または傾動地塊)である。 2004年9月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 26 36.87, -67 51 12.86 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 77° |
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アルゼンチンの砂漠 12 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン西部内陸のモンテ砂漠(山地部)は、パンパス山地から
アンデス前山山脈(プレコルディレラ)にかけて広がっている。
写真の山はメンドーサ市の裏山に当たるアンデス前山山脈で、麓の扇状地の表面は
緑がやや濃いが、山地斜面は植生疎らで半砂漠の状態である。
この山脈は、アンデス東部山系(東山系)の一部で、アンデスの北端コロンビアから延々と続いてきた
東部山系はこの付近を最後に姿を消す(地図参照)。
手前の水面は、メンドーサ川に建設されたポトレリージョスダムの貯水池である。
メンドーサ川は、アコンカグア山などアンデス高所の雪解け水をメンドーサ平野の半砂漠へ
もたらす外来河川である。ポトレリージョスダムはこの川の貴重な水を有効に利用するために
建設された多目的ダムで、洪水調節、発電、灌漑を目的としている。ダムの完成は2003年と
比較的新しいため、リゾート地として発展途上段階にあるが、すでに、貯水池の湖畔は
写真のように緑豊かになり、宿泊施設や各種のアウトドア―スポーツ施設が完成している。 2005年3月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 56 53.83, -69 12 31.94 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 107° |
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アルゼンチンの砂漠 13 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン西部メンドーサ州中央部にあるサンラファエル市の郊外から
西方を望んだもので、灌木性のモンテ砂漠(平野部)の約 100㎞ 向こうにはアンデス山脈
の白い峰々が連なっている。モンテ砂漠(平野部)は、北はアルゼンチン内陸のサンファン州南部から
南はチュブ州中部の海岸まで 1350㎞ つづいている(こちらの地図
の黄色の部分)。モンテ砂漠(山地部)とともに、アルゼンチンでは
もっとも乾燥した地域であるが、アタカマ砂漠のような無植生の乾燥砂漠(Arid desert)ではなく、
時には背の丈2~3m の灌木もみられる半砂漠である。モンテ砂漠(平野部)の植生は、モンテ砂漠(山地部)の
それに比べて大型のサボテンが見えなくなるなど、多様性が若干小さい。 2005年3月22日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-34 33 33.65, -68 28 24.96 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 288° |
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アルゼンチンの砂漠 14 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アンデス山脈の高峰の雪解け水を集めたメンドーサ川の水は、
メンドーサ市南西の谷口付近にある取水施設で採取され、メンドーサ地方の平野一帯に流送される。
写真はメンドーサ市東方の平野へ延びる灌漑水路幹線のひとつで、沿岸には
ブドウ園がもっとも多いが、
一部には写真のような果樹園(おそらくプラムあるいはモモ)もある。
プラムに関してはメンドーサは世界的産地である。 この水の恵みをもたらしたアンデスの山並みが遠方に見える。左の円錐形の白峰はトゥプンガト火山(6635m)で、 メンドーサ川最長の支流トゥプンガト川の源流、中央やや右の高峰は(エル)プラタ山(5963m)である。 2005年3月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 54 36.78, -68 24 38.62 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 254° |
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アルゼンチンの砂漠 15 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチン西部の中心都市メンドーサ(人口約 10 万)は、アンデス山脈の
東山麓、モンテ砂漠(平野部)にあるオアシス都市である。年平均気温 16.2 ℃、夏雨型で年降水量 255mm
という砂漠気候下にある。写真は市の中心インデペンデンシア広場に近い繁華街エスパーニャ通りで、
街路樹が繁茂し、緑のトンネルをつくっている。この都市のほとんどの街路がこのような緑豊かな
並木道になっていて、水に乏しい砂漠の都市という感じは薄い。メンドーサ川など、アンデスから
流れ出る水の豊かな外来河川の恵みである。遠くの木陰を行くのは、最盛期には6系統あったが現在では
1系統だけになってしまったメンドーサのトロリーバス。メンドーサは、試験的ではあるが、1913 年から2年間、
ラテンアメリカで最初にトロリーバスが走ったという歴史をもつ都市である1)。 1)The Trolleybuses of Latin America in 2017 2) 気象庁資料平年値(1981-2010 年) 2005年3月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 53 24.59, -68 50 30.99 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 12° |
![]() メンドーサの気温と降水量2) 夏雨型で、年降水量が、(年平均気温+14)×10=302mm 以下なので、砂漠(BW)気候 |
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アルゼンチンの砂漠 16 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチンには5つの産油地域(堆積盆地)がある
(参照 こちら)が、同国の石油の 82 %は
サンホルヘ湾盆地(コモドロリバダビア市周辺)とネウケン盆地で生産されていた(2004 年)。
ネウケン盆地では、古生代の火成岩や変成岩を基盤の上に、最大 6000m に達する中生代の地層が
横たわっており(参考:
ネウケン盆地の地下構造)、この地層から原油や天然ガスが採取される。
写真は、ネウケン盆地の東部、コロラド川沿岸カトリエル市付近の油田で、
灌木性の半砂漠の原野に油井が点在している。 ネウケン盆地は、莫大な量の非在来型石油・天然ガスの埋蔵地として、近年注目されるようになった。 すなわち、この盆地の地下 1000~2000m に横たわる厚さ 400m 以上のバカムエルタ層 (Vaca Muerta Formation)は、おもに頁岩(シェール)と泥灰岩からなるが、その中に世界有数の量の シェールガス・オイルが埋蔵されていることが明らかになった。 2010 年には、ここからアルゼンチン最初のシェールガスが産出され、同年、シェールオイルの産出も始まった。 このガス田・油田だけで、アルゼンチンのエネルギー不足問題は解決すると大きな期待が寄せられている。 2005年3月21日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-37 59 54.64, -67 54 40.13 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 96° |
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アルゼンチンの砂漠 17 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルゼンチンのパタゴニア地方とは、ほぼコロラド川以南の地域を指し、
州ではネウケン州、リオネグロ州、チュブ州、サンタクルス州が含まれる。
写真はネウケン州南東部、エルチョコンダムのダム湖付近の原野で、地方としてはパタゴニアであるが、
生態地域としてはモンテ砂漠(平野部)の一部で、灌木に覆われた平野や台地がひろがっている。
空が褐色に濁り、遠くの台地が霞んで見えるのは、強い西風で巻き上げられた砂塵のためである。
太平洋の偏西風がアンデスを越えて来たこの風は、パタゴニア地方の自然を
支配する最大の要素である。アンデス山脈に雨を降らしたあとの乾燥した空気が吹き下ろすため、
パタゴニアはいわゆる雨陰(あまかげ)砂漠になる。強い風のため背の低い植物しかみられない。
この西風は、パタゴニアを南に行くほど強くまた寒冷になる。 2005年3月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-39 37 15.83, -69 21 23.43 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 40° |
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アルゼンチンの砂漠 18 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ネウケン州の州都ネウケン市からアンデス山麓の著名な観光地バリローチェ
(正式にはサンカルロスデバリローチェ)へ通じる国道 237 号線を行くこと 330㎞、発電用にリマイ川を
せき止めたアリクラ(Alicurá)ダムの貯水池を望むあたりまで来ると、パタゴニア砂漠(ステップ)の
景観が展開する。1~3m ほどの低灌木が主体のモンテ砂漠と違い、50㎝ に満たない小灌木や草本が
卓越するようになる。厳しい乾燥、低温、および強風に適応した植生である。生態地域としての
パタゴニア砂漠(ステップ)は、メンドーサ州南部の南緯 35 度付近の内陸から南方へ、しだいに幅を
広げて伸び、チュブ州中部の南緯 44 度付近から南では、アンデスから大西洋の海岸まで、
全体を占めるようになる(こちらの地図の茶色の部分)。
遠方にわずかに見える水面はアリクラダムの貯水池(水面標高約 700m)路傍の標識 km1163 は、
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスからの距離である。 2005年3月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-40 36 33.72, -70 55 47.76 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 95° |
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南アメリカの安定陸塊で、古い岩石からなり標高が比較的高い地域には、ギアナ高地、
ブラジル高原、パタゴニア台地の三つがあり、それぞれの地形を反映して、「高地」、「高原」、
「台地」と呼び分けられている。パタゴニアが「台地」とされるのは、この写真のような台地が広く分布する
ためである。台地とは、水平に横たわる地層から構成され、平坦な頂と急峻の崖からなる台状または
階段状の地形である。写真はアルゼンチンのネグロ川支流リマイ川の中流部で西方(アンデス方向)
をに向いて撮影したもので、中景にはこの付近にひろがる標高 700m 前後の台地が、その遠方の
スカイラインにはアンデスの山麓から続く標高約 1000m の台地が連なっている。
近景の低地は東方(撮影地点の背後)にひろがる 500m 前後の台地につながる。このように、
パタゴニア台地はアンデス山麓から大西洋に向かって、いくつもの段をなして低下して行くところが多い。 2005年3月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-39 58 56.58, -70 2 35.57 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 276° |
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アルゼンチンの砂漠 20 / 21 | 前の画像へ | 次の画像へ |
リマイ川は、アンデス山脈東斜面にある氷河湖ナウェルウワピ湖を源流とし、
ネウケン市付近でネウケン川と合流してネグロ川になる。最深460mという深い氷河湖を源流とするため、
河水は常に澄んでいる。川沿いは緑豊かであるが、それ以外の丘陵地は背の低い草が覆うステップである。
アンデス山麓の丘陵地を流れるリマイ川のこの地形は、基本的には生育蛇行(Ingrown meander)タイプの
穿入蛇行(Incised meander)といえる(穿入蛇行について詳しくは
こちら参照)。
川の対岸左寄りの平らな丘から右手前に向かって少しずつ低下する尾根は生育蛇行の蛇行山脚
(Meander spur)である。また、撮影地点の足元から右前方には、流路に沿って円弧状の急斜面が続くが、
これが生育蛇行の攻撃斜面である。現地では、この地形から、この景勝地を円形劇場を意味する
アンフィテアトロ(Anfiteatro)とよんでいる。
この生育蛇行の谷底を流れるリマイ川の流路がいくつかに分岐しているのは、生育蛇行の谷ができた後、
その谷底が幾分土砂で埋められたためである。この地点からナウェルウワピ湖までは
15㎞ という近さにあり、この湖つくった氷河から流れ出た融氷河流がこの土砂を堆積した可能性が高い。 2005年3月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-40 56 42.65, -71 2 48.95 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 116° |
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アルゼンチンの砂漠 21 / 21 | 前の画像へ | PanoraGeo目次へ |
アルゼンチンパタゴニア地方ネウケン州西部のアンデス山脈東麓に広がる
草原で、豊かな牧草に恵まれた牧場がひろがっている。遠方にはチリとの国境に積雪を戴いてそびえる
ラニン火山が見える。南緯 40 度のこの地域は、アルゼンチンの生態地域区分
では、パタゴニア砂漠(ステップ)に含まれているが、降水量が若干多いため、ケッペンの気候区分では、
乾燥気候(B 気候)ではなく、温帯気候(C 気候)に属する地中海性気候(Cs)である。
チリ中部の地中海性気候はよく知られているが、アルゼンチンのパタゴニアにもそれがかなり広く分布する
ことはあまり知られていない。その範囲は、南緯 37 度から 44 度あたりまでのアンデス東斜面から
山麓にかけてで、州で言うと、ネウケンおよびリオネグロ両州の西部とチュブ州北西部である
(南アメリカのケッペン気候図参照)。
この地域の代表都市サンカルロスデバリローチェの気候表を右に示す。この地域における夏(12、1、2月)の
乾燥は、南下してきた中緯度高気圧の影響によるもので、チリ中部のばあいと同じである。
1) 気象庁資料平年値(1981-2010年) 2005年3月18日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-40 4 35.65, -71 6 50.95 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 317° |
![]() 冬雨型で最乾月降水量 30mm 以下なので、典型的な地中海性(Cs)気候 |
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