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Monuments that we don't want to increase: earthquake faults
2025年6月30日 改訂 旧版は こちら
![]() 日本の地震断層の分布Distribution of earthquake faults in Japan |
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地層や岩石に力が加わったために割れ目(面や帯)が出来、それに沿ってずれる現象を断層運動、そうしてできた地質構造を断層という。 徐々に進行するクリープ状の断層運動もあるが、多くの場合、断層運動は瞬発的に起き、そのショックで地震が発生する。 地震が原因でずれた地割れや地滑り面も断層ということはあるが一般的ではない。
いったん断層ができると、その場所で繰り返し断層運動が起こりやすい。 そのような断層運動が最近数十万年のうちに繰り返し起こり、今後も起こる可能性のある断層を活断層と言う。 多くの活断層に沿って、谷や尾根の横ずれや断層崖などの断層地形が見られ、活断層を認定する手掛かりになる。 一回の断層運動で生ずる地表の変位(ずれ)は、一般に、数㎝~数m 程度であるが、断層運動が繰り返し起こることによって、大規模な断層地形になる。
地震発生時に出現したことがはっきりしている地表の変位(ずれ)を地震断層という。 地下深くで生じ、変位が地表に現れない断層でも地震は起きるので地震断層と言えないことはない。 このような断層と区別するために、地表に現れた断層は「地表地震断層」とよばれることがある。しかし、一般には、地震断層という語が通用している。
アメリカ合衆国西岸のサンアンドレアス断層は世界的に有名な地震断層である。 日本では、明治以降、10 余りの地震で地震断層が認められている。 1891 年の濃尾地震で生じた岐阜県の根尾谷断層(表の⑫)は規模が大きく、国の特別天然記念物に指定されている。 ここでは、国の天然記念物になっている野島断層⑯と丹那断層⑤を訪問しよう。
注)地震断層の報告があるのは本州と九州本島だけなので、北海道と南西諸島は分布図から割愛した。 分布図の作成のあたっては、おもに、地理院地図 トップ>土地の成り立ち・土地利用>活断層図(都市圏活断層図)を利用した。 ただし、③と④については、産総研(活断層・火山研究部門)の緊急調査情報の湯ノ岳断層、 および井戸沢断層(塩ノ平断層)に依り、 ⑥については、国土地理院:1974年伊豆半島沖地震災害調査を参考にした。 地震断層分布の詳細な位置を見るには、添付の kml ファイルをダウンロード後、グーグルアースまたは地理院地図で kml ファイルを開いて利用するとよい(地震断層分布資料、kml ファイルのダウンロード)。 拡大して現れる赤い太線の部分が地震断層の確認箇所である。
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地震断層 | 1 /5 |
![]() 野島断層保存館のメモリアルハウスMemorial house of the Nojima Fault Preservation Museum |
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野島断層は、1995 年1月17日、淡路島北部の深さ 16㎞ を震源とする兵庫県南部地震を引き起こした北東ー南西方向に走る断層で、この地震とともに出現した地震断層が、兵庫県淡路市の北淡震災記念公園にある野島断層保存館に保存されている。
写真左の部分に見える地面の数十㎝の段差がこの時できた低断層崖である。 写真手前の北西側の土地が向こうの南東側の土地に対し相対的に沈下した北西落ちの断層である。 さらに、コンクリート塀の破壊の様子から、断層の向こうの土地が手前の土地に対して右に動いていることがわかり、このような断層を右横ずれ断層という。 すなわち、この断層は、水平・ 垂直ともに数十 ㎝ の変位の、北西落ち右横ずれ断層である。
この家屋は、地震を被災した家を保存したメモリアルハウスで、断層の直近にありながら頑丈な家屋本体の倒壊は免れたが、屋内では家具や食器などがひどく壊れて
散乱しており、阪神淡路大震災をもたらしたこの地震の激しさを物語っている。
約9㎞ある野島断層のうち、野島断層保存館を中心とした 185m の区間が、1998 年に国の天然記念物に指定された。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 57.28, +134 56 12.99 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 197°
PanoraGeo-No.6
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地震断層 | 2 /5 |
![]() 野島断層保存館の断層保存ゾーンFault Preservation Zone of the Nojima Fault Preservation Museum) |
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野島断層保存館の中心である断層保存ゾーンの長さ約 140m の細長い建物の内部では、地震断層で食い違った地形(断層線あるいは低断層崖)が、向こうから手前へと続いている。 その一番手前に、断層線を横切る方向に掘られたトレンチがあり、その壁面に、鉛直から 10 度程度、左上から右下に傾いた断層(割れ目)が現れている。
傾いた断層の場合、断層より斜め上にある岩盤(この写真では右の岩盤)を上盤(うわばん)、斜め下の岩盤(左の岩盤)を下盤(したばん)という。 そして、上盤が下盤に対してずり上がった断層を逆断層、上盤が滑り落ちた断層を正断層という。 したがって、この写真の断層は逆断層である。逆断層は地盤が水平方向に圧縮されるような条件のもとでできる。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 57.15, +134 56 13.71 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 52°
PanoraGeo-No.500
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地震断層 | 3 /5 |
![]() 野島断層の活動で壊れた舗装道路や側溝Paved road and gutter broken by the activity of the Nojima Fault |
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淡路島北西部の海岸にある野島断層保存館には、1995 年の兵庫県南部地震の際に活動し、北東-南西方向(海岸線に平行)に走る地震断層とそれによって破壊されたさまざまな地物が保存されている。
この写真では野島断層が画面の上から3分の2あたりを左右に走っている。 左端の部分はこの断層の活動によってズタズタに砕かれたアスファルト道路である。 その右にあるジグザグになった板状のものはこの道路の側溝、さらに右の土の高まりは畦道であるが、両者とも断層を境に、右上-左下方向に数十 ㎝ ずれている。 断層の向こう側の土地が右にずれているので、この断層の水平変位は右横ずれであり、撮影方向が北から 152°のこの写真で手前は北西側なので、垂直変位は北西落ちである。 すなわち、この野島断層保存館付近の野島断層は右横ずれ北西落ちで、変位量はともに数十㎝の断層であることがわかる。
総延長約9㎞ の野島断層は、 全体に亘り右横ずれであり、一部を除き北西落ちの傾向も変わらないが、変位量にはかなりの変化が見られ、最大の変位量は、水平変位 210㎝、垂直変位 120㎝ である(詳しくは、 文化庁・国指定文化財等データベースの詳細解説を参照)。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 58.25, +134 56 15.26 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 152°
PanoraGeo-No.501
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地震断層 | 4 /5 |
![]() 左横ずれの丹那断層Left-lateral earthquake fault, Tanna Fault |
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伊豆半島の付け根の部分の内陸にある丹那盆地には、丹那断層公園がある。 1930 年 11 月 26 日にマグニチュード 7.3 の北伊豆地震を起こした地震断層によって食い違った石垣や断層の断面などが展示されている。 写真では、赤い矢印の表示物があるところを断層線が通っており、これより向こう側の石垣が左にずれているので、左横ずれ断層であることがわかる。 この付近の水平変位量(ずれの量)は 2.6m 、垂直変位はきわめてわずかである。 この部分の丹那断層は、1935 年に、国の天然記念物に指定された。 この地震断層の活動によって、当時建設途上にあった東海道本線の丹那トンネルの坑道にも横ずれが生じた。 右の図の原図--茨木雅子(1995):国指定天然記念物「丹那断層」(静岡地学 第71号)に引用された案内板の図。 2011年12月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+35 5 47.94, +139 1 3.81 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 143° |
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PanoraGeo-No.311
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地震断層 | 5 /5 |
![]() 丹那断層が通る丹那盆地Tanna Basin passed by Tanna Fault |
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玄岳(くろだけ)頂上直下の伊豆スカイライン西丹那駐車場の展望台から北西を望んだもので、左に富士山、右にドーム状の箱根山駒ヶ岳の溶岩円頂丘が見える。 手前左半分に広がる平坦地が丹那盆地である。
ほぼ円形の丹那盆地であるが、その北東(右上)の部分で平地が北(上)へ三角形に突き出している部分がある。 この三角形の平地の西(左)側にある丘の直線的な麓を丹那断層が通っている。 断層はここから北(写真では右上)に延びて、田代盆地(白く見える三角形)へ続き、 南へは、丹那盆地を横切って、丹那断層公園(丹那盆地南縁の中央部)へと続いてくる。 地名入りの写真はこちら。
1930 年の活動の水平変位は最大で 2.7m であったが、この断層は 700 年~ 1000 年ごとにこのような活動を繰り返してきたことが最近の調査で明らかになった。 このような運動が積み重なって、数十万年のうちに、この断層を横切る谷が1㎞ あまりずれてしまったところさえある。 詳しくは、丹那断層公園説明版を参照されたい。
2015年2月27日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+35 5 6.06, +139 1 36.14 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 335°
PanoraGeo-No.312
Revised on June 30, 2025