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Fly over the Kamchatka Peninsula, a museum of volcanos
2025年8月18日 増補改訂
![]() 基図は、NASA: Earth observatory:Terrain Map, Kamchatka Peninsula、 火山に関するデータは、スミソニアン研究所: Global Volcanism Program のデータベースに依った。 |
カムチャツカ半島のとくに活動的な火山Particularly active volcanos on the Kamchatka Peninsulaスミソニアン研究所の世界の火山データベースによれば、カムチャツカ半島には新生代第四紀(約 260 万年前以降)に活動した火山が 192、そのうち完新世(約1万年前以降)に噴火したことが確認されている火山、すなわち活火山が 64 ある*1)。 右の図は、近年(主に18世紀以降)に噴火した活動的な火山の分布で、その最新の噴火年を( )内に示た。 赤字のカタカナ表記を付けたものは、このホームページの写真に現れる火山である。 カムチャツカ半島には「カムチャツカの火山群」としてユネスコの世界遺産に登録された6カ所の自然公園や自然保護区がある。 この図において青色の文字で表記されたものは、それらの世界遺産領域に含まれる火山である。 |
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*1) Smithsonian Institution: Global Volcanism Program(Ver.5.3.1) のデータベースの地域別火山リスト(Volcanic regions list)において、Central Kamchatka Volcanic Arc、Eastern Kamchatka Volcanic Arc、Kuril Volcanic Arc の3者をを合算した。 ただし、Kuril Volcanic Arc については、カムチャツカ半島内にある火山を、千島列島などのものと区別し抽出する必要がある。
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カムチャツカ半島を飛ぶ | 1 /5 |
![]() 世界遺産「カムチャツカの火山群」のクリュチェフスコイ自然公園全景Panoramic view of the Klyuchevskoy Nature Park of the World Heritage Site "Kamchatka Volcanos" |
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ワシントン発成田行き UA803 便旅客機は、ベーリング海を過ぎ北太平洋へ、そしてカムチャツカ半島に接近。 四半世紀前の大韓航空機撃墜の事件が脳裏をよぎるのは私のような世代にとっては致し方ないところ。 そんな杞憂をよそに、同機はずかずかとロシア領空に侵入。 眼下に世界遺産「カムチャツカの火山群」の壮大な景観が展開しはじめた。
写真は、2001年、世界遺産「カムチャツカの火山群」登録地域の一つに追加されたクリュチェフスコイ自然公園にある火山群の遠望である。 写真の一番右(北)のに聳えるのが主峰のクリュチェフスカヤ山(Klyuchevskaya Sopka, 標高 4754m、クリュチェフスコイ Klyuchevskoy 山ともいう)である。 その左にカーメン山(Kamen, 4585m)が並び、その左の山麓に接して低いベズィミアニ山(Bezymianny, 2882m)が横たわる。
このクリュチェフスカヤ連山から左に少し離れたところにジミーナ山(Zimina, 3057m)があり、さらに離れた最も左(南)にトルバチク山(Tolbachik, 3611m)が聳えている。 トルバチク山は、氷河で充填された小さなカルデラの平らな山頂と尖った最高点の山頂という二つの峰からなっている。
2007年4月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+55 14 29.59, +162 9 29.53 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 306°
PanoraGeo-No.14
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カムチャツカ半島を飛ぶ | 2 /5 |
![]() クリュチェフスコイ自然公園北部のクリュチェフスカヤ連山Klyuchevskaya Mountain Range in the northern part of Klyuchevskoy Nature Park |
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写真中央部の二つの高峰のうち右がクリュチェフスカヤ山(Klyuchevskaya, 4754m)、左がカーメン山(Kamen, 4585m)である。 カーメン火山は完新世(約1万年前以降)になってからの噴火記録がないやや古い成層火山で、崩壊で生じた急斜面には積雪がなく黒く見える。 これら二つの火山の向こうに隠れてわずかに見える山塊は、1890 年の噴火後沈黙しているウシュコフスキー山(Ushkovsky, 最高点はクレストフスキー峰 4108m)である。
クリュチェフスカヤ山は、6000~7000 年前にでき始めた新しい玄武岩質の成層火山で、活火山としてはユーラシア大陸で最も高い山である。 現在のカムチャツカ半島ではもっとも活動的な火山で、この写真を撮影した 2007 年4月は、2月から7まで続く噴火の最中であった。その後も、ほとんど毎年、噴火を繰り返している。
カーメン火山の南東山麓(写真の左下)にあるベズィミアニ山(Bezymianny, 2882m)の噴火活動も非常に活発である。 2025 年現在、前年に始まった噴火が続いているが、とくに 1955 年から 57 年にかけては、この半島で最も激しいと言われる大噴火を起こし、巨大な火口を形成した。 1000 年余りの休止の後の噴火であること、あるいは大地震(1952年、マグニチュード 9.0)に続く噴火であることなど、2025 年にカムチャツカ半島沖地震(マグニチュード 8.8)の後に噴火した クラシェニンコフ火山と類似したところがある。
20073年4月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+55 21 35.42, +162 25 52.62 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 305°
PanoraGeo-No.750
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カムチャツカ半島を飛ぶ | 3 /5 |
![]() クロノツキー火山とクロノツキー自然保護区Kronotsky Volcano and Kronotsky Nature Reserve |
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1934年 に厳格な自然保護を目的にロシアが設立したクロノツキー自然保護区は、1984年にはユネスコの生物圏保護区にも指定された。 さらに、1996年には、クロノツキー国立生物圏・自然保護区(Kronotsky State Biosphere Nature Preserve)として世界遺産「カムチャツカの火山群」を構成する5登録地域(後に1自然公園追加)の一つになった。
この保護区の名の元であるクロノツキー山(Kronotsky, 3482m)は、この写真中央に聳える端麗な円錐形の成層火山である。 この山は、1922 年と 23 年の小規模な噴火以外は歴史時代に噴火の記録がない静穏な火山である。 その山腹には、侵食で生じた深さ 200m に達する放射状の谷が多数走っている。
写真の左の部分に見えるのは、カルデラ火山、クラシェニンニコフ山(Krasheninnikov, 1816m)の一部で、クロノツキー山と山麓を接している。 両火山の背後にひろがる三角形の湖は、カムチャツカ最大のクロノツキー湖で、両火山の噴出物により川が堰き止められてできた火山(性)堰止湖である。
クロノツキー火山の真後ろに、孤立した成層火山のキジメン山(Kizimen, 2334m)が見える。 海岸からこの山までがクロノツキー国立生物圏・自然保護区の範囲である。 写真右上遠方には半島最高峰のクリュチェフスカヤ連山の火山群がかすかに望まれる。
2007年4月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+54 34 36.62, +160 41 59.16 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 320°
PanoraGeo-No.15
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カムチャツカ半島を飛ぶ | 4 /5 |
![]() 典型的なカルデラ火山、クラシェニンニコフ山Mount Krasheninnikov, a typical caldera volcano |
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カムチャツカ半島南東部、クロノツキー火山の南西には、世界遺産カムチャツカの火山群に含まれる火山、クラシェニンニコフ山(1816m)がある。 この山は地上から見るとさして目立たない山であるが、上空からの景観は圧巻である。 3万年前に陥没し形成された*1)直径約 10×9km のカルデラがあり、その中央部に二つの中央火口丘がそびえている。 典型的な二重式火山(複式火山)である。
北の山麓には、この火山や隣のクロノツキー火山の噴出物の堰き止めてできたクロノツキー湖がある。 この季節(4月)にはまだ全面凍結している。 この湖から南東(写真右下)方向に流れ出す川の始まり付近には、この火山の寄生火山の一つである爆裂火口、クロクル・マール(Krokur maar)がある。約 4300 年前に形成されたものという。
この火山は、2025 年7月 30 日にカムチャツカ半島東方沖で起きたマグニチュード 8.8 の地震直後の8月2日に噴火した。 スミソニアン研究所のホームページ*2)によると、クラシェニンニコフ山の最新の噴火は 1550 年ごろとなっているので、これは約 500 年ぶりの噴火である。 日本でも、南海トラフで起きた宝永地震の 49 日後に富士山の宝永山の噴火があった例などがあり、クラシェニンニコフ山の噴火も、巨大地震の発生後に火山活動が活発になる可能性を示すものではないかと注目された。
*1)Ponomareva, V.V. et al.(2025):
Krasheninnikov Caldera (Eastern Kamchatka): Age and Magnitude of Eruption. Russian Jorual of Pacific Geology, Vol.19.
*2) Smithsonian Institution: Global Volcanism Program
2007年4月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+54 29 38.30, +160 28 38.26 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 324°
PanoraGeo-No.16
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カムチャツカ半島を飛ぶ | 5 /5 |
![]() 観光資源豊富な地熱地帯、ウゾン・カルデラUzon Caldera, a geothermal area rich in tourism resources |
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クラシェニンコフ火山から 20㎞ ほど南西にはウゾン・カルデラがある。 写真下部に見えるほぼ半円形の山稜は、ウゾン・カルデラの外輪山で、その最高点がウゾン山(1617m)である。 その背後(写真左端中段)には成層火山タウンシツ山(Taunshits, 2301m)が聳えている。
標高約 650mのウゾン・カルデラの底(火口原)はほぼ平坦で、湖沼や湿地が多数分布する。多くの場所で温泉が湧くので、暖かい沼と冷たい沼がある。 まだ寒いこの時期に、黒く水面が見えるのは暖かい沼に違いない。 火口原の北東部(写真下部中央)に見える丸い西洋菓子タルトの生地のような凹地は、完新世初期に形成されたダルニ湖マール(Lake Dal'ny Maar)で、湖水が温水でないため凍っている。
写真下端部のやや起伏がある部分は、ウゾン・カルデラの東南東にあるゲイゼルナイア・カルデラ(Geysernaia Caldera)の一部である。 両カルデラは、このように、五輪の輪のように一部重複して繋がっているので、ウゾン・ゲイゼルナイア・カルデラと称されることもある。
このカルデラ一帯は世界有数の地熱地帯で、1986 年と 89 年には水蒸気爆発(熱水噴火)が起きている。 温泉、間欠泉、泥火山など観光資源が豊富で、とくに、その南東部のゲイゼル谷(Valley of Geyser、間欠泉の谷)は多数の間欠泉があるので有名。 ヘリコプターでしかアクセスできない僻地であるが、世界遺産クロノツキー自然保護区の中でもっとも多くの観光客が訪れる場所である。
2007年4月4日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+54 20 46.75, +160 10 35.34 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 332°
PanoraGeo-No.751
Enlarged and revised on August 18, 2025