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Pan-American Highway across the Andes through the foothills of Mt. Aconcagua
初版:2019年1月22日 / 最新改訂:2025年7月10日
![]() アンデス越えパンアメリカンハイウェーPan-American Highway across the Andes |
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南北アメリカ大陸の西部~西海岸を通って南下してきたパンアメリカンハイウェーは、チリ中部のサンティアゴ北方で二つに分かれる。一つは、引き続き南向きに進んでチリを縦貫するもの、もう一つは東に向かい、アンデス山脈を越えてアルゼンチンに至るものである。
前者は、南北に長いチリの国土を南北に貫く国道5号線で、チリではこの5号線に対してパンアメリカン(パナメリカーナ Panamericana)の愛称を与えている。 首都サンティアゴより北(Norte)がパナメリカーナ ノルテ、サンティアゴより南(Sur)がパナメリカーナ スルである。
もう一方のパンアメリカンハイウェーは、サンティアゴ北方で国道5号線と別れて東へ向かうチリ国道 60 号線とそれに続くアルゼンチン国道7号線である。 ウイキペディアの付図においては、こちらが本来のルート(Original Route)とされている。ここで紹介するアンデス越えパンアメリカンハイウェーはこちらの方である。
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 1 /14 |
![]() チリ中部、半乾燥気候地帯の国道5号線(パンアメリカンハイウェー)Route 5 (Pan-American Highway) under the semi-arid climate in central Chile |
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チリ国道5号線(パンアメリカンハイウェー)、首都サンティアゴまで 202㎞ の標識。 ペルー砂漠からチリ北部のアタカマ砂漠へと続く長い長い砂漠地帯を通り抜け、パンアメリカンハイウェーが、ようやく、緑が目につく地帯に入ってきた。 砂漠気候から地中性気候への漸移帯にあたるステップ気候地帯である。 前方の山の斜面のように、谷筋にやや密な植生が見られる以外は疎らな植生である。
この雲をかぶった山は、コキンボ、バルパライソ両州の境の海岸にそびえるサンタ イネス山(標高 689m)で、頂上付近面には、チリとアルゼンチン南部の多雨地帯に固有のオリボジョ Olivollo という木(Aextoxicon punctatum)のレリック(残存)林が茂る自然公園がある。 過去の地質時代にこの地が湿潤だった頃、ここに成立していた森林が、乾燥した気候に変わった現在でも生き残っている。これは写真にあるような低い雲や海霧が頻繁にかかるおかげである。 このような雲や霧は、大陸西岸の乾燥地帯に特徴的なもので、ペルーではガルーア、チリではカマンチャカとよばれている。
これより約 100㎞ 先で、アンデス越えのパンアメリカンハイウェー(チリ国道 60 号線)が国道5号線から分岐する。
2003年9月2日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 6 10.07, -71 30 26.03 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 175°
PanoraGeo-No.384
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 2 /14 |
![]() アコンカグア谷のぶどう畑Vineyards in the Aconcagua Valley |
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チリを南北に縦貫する国道5号線から分かれ東に向かうパンアメリカンハイウェーがアンデスの山道にかかる手前の盆地に、サンフェリーペとロスアンデスという二つの都市がある。 それらの郊外には写真のようなブドウ畑がひろがっている。 アンデス山脈から来て盆地を流れる川の名からアコンカグア谷とよばれるチリにおける主要ワイン産地の一つである。 サンティアゴから近いこともあって、いくつかのワイナリーをめぐるワインツアーの対象地にもなっている。
年平均気温 15.7 ℃で、年降水量は 253mm と少ないが、冬雨型なので、ケッペンの気候区分ではステップ気候になる。 特に夏の乾燥は厳しく、ここのブドウ畑は、すべてアコンカグア川の水で灌漑されている。 なお、南米で最も高い山として有名なアコンカグア山は、この川の流域ではなく、アンデス分水界のクンブレ峠を東に越えたアルゼンチンのメンドーサ川流域にある。
2003年8月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 47 2.67, -70 38 42.34 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 253°
PanoraGeo-No.385
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 3 /14 |
![]() アンディ―ナ鉱山発の銅鉱石運搬列車Copper ore transport train from the Andina Mine |
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チリの首都サンチアゴ市の北東 50㎞、アコンカグア川流域南東部の標高約 4000m の高所には、アンディーナ鉱山(ミネラアンディーナ)という、チリ銅公社(CODELCO)所有の中規模な銅鉱山がある。 この鉱山で採掘・選鉱された鉱石を、バルパライソ市の北 35㎞ ほどの海岸にあるベンタナス精錬所に運ぶ貨物列車が、アコンカグア川の谷を下って行く。
この鉄道は、かつてアルゼンチンのメンドーサとチリのロスアンデスを結んでいたアンデス横断鉄道の生き残り区間である。 アンデス横断鉄道のこれ以外の区間は、線路は残っているが列車の運行はなく、各所で土砂で埋まるなど痛みが激しく、実質的には廃線の状態にある。
2003年8月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 51 23.14, -70 28 39.42 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 252°
PanoraGeo-No.386
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 4 /14 |
![]() 不安定な斜面の山地を行くパンアメリカンハイウェーPan-American Highway under unstable mountain slopes |
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おとなし~い日本の標識
アコンカグア川の上流部はフンカル川と名が変わる。 谷底には平地が少なくなり、パンアメリカンハイウェーは谷斜面にへばりつくように進む。 半乾燥気候(ケッペンのステップ気候、BS気候)のため植生はまばらで、露岩や浮き石が多い斜面から、いつ落石があってもおかしくない状況にある。 落石注意の交通標識も日本に比べるとかなり過激である。
2003年8月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 53 57.92, -70 22 3.70 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 104°
PanoraGeo-No.387
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 5 /14 |
![]() ロス カラコレスの坂、アンデス越え最大の難所Hill of Los Caracoles, the hardest part across the Andes |
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アコンカグア川とその上流のフンカル川の深い谷底をたどってきたパンアメリカンハイウェーは、国境の峠に至る前に、このヘアピンカーブが続くロス カラコレスの坂を登る。 標高 2200m から 2800m への急登で、チリの主要コンテナ港バルパライソを往復する多くのトレーラートラックにとっては最大の難関である。冬には雪で通行が困難になることもある。
正面の山の麓近くにある白い帯は岩脈で自然の産物であるが、よく見ると、その下の谷底近くを、崖錐の裾を削って、アンデス横断鉄道の線路が通っている。 この鉄道にとってもここは最大の難所で、大きく遠回りしながら登ってくる(地図参照)。 また、急勾配を克服するため、この区間にはアプト式の線路が敷設されていた。
2003年8月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 51 31.93, -70 8 33.64 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 226°
PanoraGeo-No.388
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 6 /14 |
![]() 南米最古のスキーリゾート、ポルティージョPortillo, the oldest ski resort in South America |
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ロス カラコレスの坂を登りきったところは二つの氷河谷(U字谷)の合流点で、かなり広々とした谷底が、標高 2800m から 3000m にかけてひろがっている。 春間近の8月末であるが、まだ雪がたくさん残っている。
ここには、南アメリカ最古でもっとも有名といわれるスキーリゾート、スキーポルティージョ(Ski Portillo)がある。 この地では、1910 年に開通したアンデス横断鉄道の建設に関係したイギリス人などが仕事上あるいはレジャーでスキーをしたのが始まりで、鉄道開通後は一般のスキーヤーも訪れるようになった。 当時はリフトなどの設備はなく、スキーヤーはロス カラコレスの坂の下のエルフンカル駅(標高 2231m)からチリ国境に近いカラコレス駅(3176m)まで、列車をリフト代わりにして登り、そこから滑り降りた。
ポルティージョ駅(2867m)は両駅の間にある。1949 年に国営の本格的なスキーリゾートが開業、1961 年に民営化、1966 年には南米最初のアルペンスキーのワールドカップがここで開催された。 スキーは6月半ばから 10 月初めまで可能である。
参考:Miguel Purcell : About Ski Portillo, Chile
2003年8月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 50 40.80, -70 7 22.17 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 325°
PanoraGeo-No.389
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 7 /14 |
![]() シーズンオフのポルティージョ スキーリゾートPortillo Ski Resort in the off season |
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3月下旬、チリでは初秋にあたるポルティージョスキーリゾートである。写真中央に派手な黄色のポルティージョホテルとその向こうにインカ湖(Laguna del Inca)が見える。 画面左から右へ続く道路はパンアメリカンハイウェー(チリ国道 60 号線)。
この道路がロスカラコレスの坂を登りきった上にひろがるこのポルティージョの開けた谷底は、氷河谷(U字谷)の底を埋めるモレーン(堆石)の集まりである。 モレーンはいくつかに細分されるが、大きくみると、ホテルの左にある丸い丘とホテルの右でインカ湖の水面を一部覆う緩傾斜の丘は、最終氷期の氷河による側堆石(ラテラルモレーン)であり、ホテルから手前にひろがる巨礫の多い土地は、その後の氷河後退期に、一時的に前進した氷河がためたモレーン(端堆石 and/or 底堆石?)である。 インカ湖はこのモレーンの堰き止めによる氷河湖である。
参考文献:Caviedes, C.N. and Paskoff, R. (1975): Quaternary Glaciations in the Andes of North-Central Chile. Journal of Glaciology, 14,155-170.
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 50 39.95, -70 7 22.35 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 332°
PanoraGeo-No.390
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 8 /14 |
![]() アルゼンチン・チリ国境のクリスト レデントル トンネルCristo Redentor Tunnel of Argentina Chile Border |
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チリとアルゼンチンの国境をなすアンデス山脈の分水界をくりぬいてつくられたクリスト レデントル トンネル(延長 3080m、標高 3209m)のアルゼンチン側の入口である。 この道路トンネルは、1910 年に開通したアンデス横断鉄道のトンネルを往復2車線(片側1車線)に拡幅し、1980 年に開通した。 鉄道トンネルができる以前の旧道は、標高 3834m まで登ったところにある峠で国境の稜線を越えていた。 この峠には、クンブレ峠、ウスパジャタ峠、リベルタドレス峠、クリストレデントル峠、イグレシア峠、ベルメホ峠などさまざまな呼び名がある。 この峠に大きなキリスト像が立っており、これが「救世主キリスト」を意味するトンネルの名となっている。
なお、入口手前にある ISLAS MALVINAS Son Argentinas! という看板は、イギリスの実効支配下にあり、フォークランド諸島ともよばれる「マルビナス諸島はアルゼンチンのもの」という主張で、国境や州境など、アルゼンチンの多くの場所に設置されている。
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 48 19.17, -70 4 16.51 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 269°
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 9 /14 |
![]() 南アメリカの最高峰アコンカグア山Mt. Aconcagua, the highest peak of South America |
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南アメリカの最高峰アコンカグア山を、その表登山口とも言えるオルコネスHorcones川の谷から望んだもので、二つ見える白峰の右が頂上である。 チリとの国境から 13㎞ ほど東のアルゼンチン領内にある。その標高に関しては、2011~12 年にかけ、地元メンドーサのクージョ大学を中心としたチームが綿密な測定を行って 6960.8m を得ている。 これがアルゼンチンの国立地理院(IGN)によっても公式に認定され*1)、四捨五入した 6961m が、同院発行の各種の地図に採用されている。
アコンカグア山の下部や周囲の山は、写真右手の山の斜面に現れているような堆積岩からなっているが、頂上部は、安山岩質またはデイサイト質溶岩や砕屑岩などの火山物質からなっている。 しかし、これらの岩石は、1370 万年~850 万年前*2)(新生代新第三紀中新世)という古い火山の噴出物で、その後の長い間の侵食によって当時の火山の面影はなくなり、その構成物のほんの一部が削り残されているにすぎない。 すなわち、この山が現在のように高くなったのは地盤の隆起によるもので、火山物質が積み重なって高くなったわけではない。 このような山を火山と言わないのは、日本でも瀬戸内海の小豆島や屋島、あるいは新潟の米山のような火山岩でできた山でも火山とは言わないのと同じことである。(参考:アコンカグア山の地質)
*1)IGN(2012):「アコンカグア山の新しい
公式の高さが発表されました: 6960.8 メートル」(スペイン語)
*2)Ramos,V.A. et al.(1996):
El Volcanismo de la Region del Aconcagua. p.306(スペイン語)
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 49 13.83, -69 56 20.23 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 344°
PanoraGeo-No.392
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 10 /14 |
![]() インカの橋と温泉施設の遺物Puente del Inca (Inca Bridge) and ruins of hot spring facilities |
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アコンカグア山の南麓にインカの橋とよばれる変わった地形がある。メンドーサ川の上流のクエバス川に架かった長さ48m、幅 28m の自然橋である。 近くに温泉が湧いており、アンデス横断鉄道があった時代には、この温泉リゾートに多くのツーリストが訪れた。 写真で橋の右下に見える建物は温浴施設の遺物、右上隅の建物は、かつてあったホテルに付属の礼拝堂である。
インカの橋がこの温泉水から析出したミネラルが砂礫層を固めてできたことは容易に想像がつく。 しかしそのくわしいでき方については、1835年 にここを訪れたダーウィンの説をはじめとしていろいろな説がある。
ここでは、この地域の地質研究の第一人者、V.A.Ramos の説を紹介する:①繰り返し起こる雪崩によって厚い雪で谷底が埋められた状況が長い間つづく。 ②谷を流れていた川は雪の下にトンネルを掘って流れ続けるのでスノーブリッジができる。 ③雪崩に含まれていた土石が雪解けとともに表面に集まり、また斜面から落ちてきた土石が加わりスノーブリッジの上に岩屑層ができる。 ④この岩屑層にしみこんだ温泉水からミネラル塩が析出して岩屑層が固結する。 こうしてスノーブリッジが溶け去った後も壊れない自然の橋ができた。
参考文献::Ramos,V.A.ほか(2008): Puente del Inca. in Sitios Interés Geológico de la República Argentina, Tomo 1-Norte, 203-214. (スペイン語 65MB ダウンロード)
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 49 33.12, -69 54 38.26 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 210°
PanoraGeo-No.393
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 11 /14 |
![]() アンデス横断鉄道の錆びたレールThe rusty rails of the Transandine Railway |
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1984 年に最後の列車が通った後、使われなくなったアンデス横断鉄道のレールである。 チリのロスアンデス市とアルゼンチンのメンドーサ市の間 248㎞ を結ぶこの鉄道は 1910 年に全通、太平洋と大西洋が鉄道で結ばれることになった。
ただし、両国で一般に使用されている線路の幅(軌間)は 1676mmであるが、アンデス横断鉄道は工事を容易にするために 1000mm で建設された。 したがって、直通列車の運行はできず、ロスアンデス、メンドーサ両ターミナルで乗り換え・積み替えが必要という不便さがあった。
写真はアルゼンチンのアコンカグア山麓、プエンテ デル インカ(インカの橋)駅構内から西(チリ方面)を望んだものである。 ここから峠のトンネルまでは約 20㎞、アンデス越え最後の胸突き八丁とも言えるところであるが、その割には地形が穏やかに見える。 チリ側にあるロスカラコレスの坂のような厳しさはない。
麓から峠までの高度差はチリ側、アルゼンチン側ともに 2400m 前後と大差ないが、これをチリ側は 70㎞ のうちに登るのに対し、アルゼンチン側は 178㎞ かけて少しずつ登るので穏やかなのである(参照:鉄道路線高低図)。 この地域のアルゼンチン側のアンデスには、アンデス主山系(プリンシパルコルディレラ)と並走して、フロンタルコルディレラ(前衛山系)とプレコルディレラ(前山山脈)という副山系があり、麓から分水界までの山地の幅は、チリ側に比べてはるかに広い。
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 49 32.09, -69 54 37.80 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 300°
PanoraGeo-No.394
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 12 /14 |
![]() メンドーサ川中流部山岳の岩石砂漠Rocky desert in the mountainous middle Mendoza River |
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アルゼンチン側のパンアメリカンハイウェーとアンデス横断鉄道はメンドーサ川に沿って走る。 写真はフロンタルコルディレラ(前衛山系)の中を流れるメンドーサ川中流部である。 古生代末から中生代始め(二畳紀~三畳紀)の火山性物質が風化した赤っぽい山肌の山々が続いている。
斜面に岩石が露出しほとんど植生がない岩石砂漠の山地を、泥で濁った水のメンドーサ川が流れている。 この川は、源流部にあるアコンカグア山(6961m)やトゥプンガト山(6570m)などの高山の氷雪から水を供給されるので涸れることがない典型的な外来河川である(メンドーサ川水系図)。
谷底には高低2段の河岸段丘が発達し、高位段丘の段丘崖下部をトラバースするアンデス横断鉄道とその駅(アルゼンチンのリオブランコ駅)が見える。 メンドーサ川を渡る鉄橋もみえる。
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 44 9.28, -69 34 5.20 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 208°
PanoraGeo-No.37
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 13 /14 |
![]() オアシス都市ウスパジャタUspallata, an oasis city |
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ウスパジャタは、アルゼンチンのアンデス山脈の東斜面を並走する二つの副山系、すなわちフロンタルコルディレラ(前衛山系)とその東のプレコルディレラ(前山山脈)との間にできた細長いウスパジャタ盆地に立地する小都市(人口約 3000)である。 写真の山は、ウスパジャタ盆地の西に連なるフロンタルコルディレラのティグレ山地にあるモントゥラ山(標高 4958m)で、5000m に近い山頂部は雪に覆われ、山腹はほとんど裸地である。
ウスパジャタは緑豊かなオアシス都市である。 年平均気温 10.5℃、夏雨型で年降水量 156mm という砂漠気候であるが、ティグレ山地から流れ出るサンアルベルト川などの恒常河川がつくる扇状地の扇端部にあるため、湧き水に恵まれている(参照:メンドーサ川水系図)。
モントゥラ山を正面に見てアンデスに分け入るパンアメリカンハイウェー、ここを過ぎるとチリのアンデス山麓のロスアンデス市まで、都市らしい都市はない。
2005年3月24日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 35 28.50, -69 20 50.41 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 287°
PanoraGeo-No.395
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アンデス越えパンアメリカンハイウェー | 14 /14 |
![]() メンドーサ平野より望むアンデスの白峰White peaks in the Andes from Mendoza Plain |
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アルゼンチン西部の中心都市メンドーサの郊外を西に向かうパンアメリカンハイウェー(アルゼンチン国道7号線)の前方に、プラタ山(またはエルプラタ山、5963m)の白い峰が横たわる。 平野の近くまで張り出しているため、非常に目立つ存在で、しばしばアコンカグア山と間違えられる。 しかし、プラタ山はアンデスの副山系のひとつのフロンタルコルディレラ(前衛山系)に属する山で、アンデス主山系(プリンシパルコルディレラ)のアコンカグア山はこれよりはるかに奥にあって、メンドーサ市付近からは見えない。 ただ、アコンカグア山を目指す多くの登山家が高度順化のためにプラタ山を利用するという点で、両者はまったく無関係というわけではない。 プラタ山などの白峰の手前に横たわる雪のない山塊は、もう一つの副山系、プレコルディレラ(前山山脈)である。
年平均気温 16.2℃、夏雨型で年降水量 255mm という砂漠気候下のメンドーサの平野が、この写真のように緑に富んでいるのは、ひとえにメンドーサ川のおかげである。 ポプラの木立が目立つが、これは、5月から 10 月にかけてアンデスから吹き下ろすソンダ(Zonda)とよばれるフェーン性の強風に対する防風林の働きをしている。
メンドーサ最大の産物はワイン(参照:メンドーサのブドウ畑)で、とくにメンドーサ川谷口の扇状地にあるこの写真のルハン デ コージョ(Luján de Cuyo)地区は、メンドーサでもっとも有名なワイン産地のひとつである。 写真右遠方にブドウ畑が見え、左遠方にも防風林に囲まれて広大なブドウ畑がある。
*1)気象庁資料 1981-2010 年平年値(気象庁 1991-2020 年平年値には降水量記載なし)
2005年3月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-33 6 4.75, -68 53 18.19 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 282°
PanoraGeo-No.396
First uploading: January 22, 2019 / Latest revision: July 10, 2025