地震断層 0 / 5 | PanoraGeo目次へ | 次の画像へ |
数十万年前以降に繰り返し活動し、将来も活動すると考えられる断層のことを「活断層」とよぶが、 地震断層とは、そのうち、「地震に伴って地表に変位(ずれ)をもたらした断層のこと。 地下の震源断層の一部が直接的あるいは間接的に地表に達したもので、地表地震断層と呼ばれることもある」 (産総研、活断層データーベース、用語解説)。 この定義で、「震源断層」という語が使われていることからも明らかなように、地震は断層の活動によって生じるもので、 地震によって断層ができるのではない。上の図は、日本におけるおもな活断層の分布であり、今後断層が活動して 地震が起こる可能性の大小を線の色によって示してある。赤が最も可能性が大で、橙、緑、青の順に可能性が小さくなる。 図にはないが、沖縄地方では、宮古島に数本の活断層(活動可能性不明)が知られている。 日本の地震断層としては、1891 年の濃尾地震で生じた岐阜県の根尾谷断層が有名であるが、そのほかにもいくつかの地震断層があり、 国の天然記念物に指定されたり、保存施設がつくられたりしている。ここでは、野島断層と丹那断層について見てみる。 |
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地震断層 1 / 5 | 前の画像へ | 次の画像へ |
野島断層は、1995 年1月17日、淡路島北部の深さ 16q を
震源とする兵庫県南部地震を引き起こした北東ー南西方向の断層で、
その一部が兵庫県淡路市の北淡震災記念公園にある野島断層保存館に保存されている。
写真左の部分に見える地面の数十pの段差がこの時できた低断層崖である。
写真手前の北西側の土地が向こうの南東側の土地に対し相対的に沈下した北西落ちの断層である。
さらに、コンクリート塀の破壊され方から、断層の向こうの土地が手前の土地に対して右に動いているので、
右ずれ断層であることがわかる。すなわち、この断層は、水平・ 垂直ともに数十 p の変位で、
北西落ちの右横ずれ断層である。この家屋は、地震を被災した家を保存したメモリアルハウスで、
断層の直近にありながら頑丈な家屋本体の倒壊は免れたが、屋内では家具や食器などがひどく壊れて
散乱しており、阪神淡路大震災をもたらしたこの地震の激しさを物語っている。
約9qある野島断層のうち、野島断層保存館を中心とした 185m の区間が、1998 年に
国の天然記念物に指定された。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 57.28, +134 56 12.99 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 197° PanoraGeo-No.6 |
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地震断層 2 / 5 | 前の画像へ | 次の画像へ |
野島断層保存館の中心である断層保存ゾーンの長さ約140mの細長い建物の内部では、
地震断層で食い違った地形(断層線あるいは低断層崖)が、向こうから手前へと続いている。
その一番手前に、断層線を横切る方向に掘られたトレンチがあり、その壁面に、鉛直から10 度程度、
左上から右下に傾いた断層(割れ目)が現れている。傾いた断層の場合、断層より斜め上にある岩盤
(この写真では右の岩盤)を上盤(うわばん)、斜め下の岩盤(左の岩盤)を下盤(したばん)という。そして、
上盤が下盤に対してずり上がった断層を逆断層、上盤が滑り落ちた断層を正断層という。
したがって、この写真の断層は逆断層である。逆断層は地盤が水平方向に圧縮されるような
条件のもとでできる。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 57.15, +134 56 13.71 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 52° PanoraGeo-No.500 |
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地震断層 3 / 5 | 前の画像へ | 次の画像へ |
淡路島北西部の海岸にある野島断層保存館には、1995 年の兵庫県南部地震の際に活動し、
北東−南西方向(海岸線に平行)に走る地震断層とそれによって破壊されたさまざまな地物が保存されている。
この写真では野島断層が画面の上から3分の2あたりを左右に走っている。左端の部分はこの断層の活動によって
ズタズタに砕かれたアスファルト道路である。その右にあるジグザグになった板状のものはこの道路の側溝、
さらに右の土の高まりは畦道であるが、両者とも断層を境に、右上−左下方向に数十 p ずれている。
断層の向こう側の土地が右にずれているので、この断層の水平変位は右横ずれであり、
撮影方向が北から 152°のこの写真で手前は北西側なので、垂直変位は北西落ちである。すなわち、
この部分の野島断層は右横ずれ北西落ちで、変位量はともに数十pの断層であることがわかる。
総延長約9q の野島断層全体で最大の変位量は、水平変位 210p、垂直変位 120p である(詳しくは、
文化庁・国指定文化財等データベースの詳細解説を参照)。
2000年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+34 32 58.25, +134 56 15.26 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 152° PanoraGeo-No.501 |
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地震断層 4 / 5 | 前の画像へ | 次の画像へ |
伊豆半島の付け根の部分の内陸にある丹那盆地には、
丹那断層公園がある。1930 年 11 月 26 日にマグニチュード 7.3 の北伊豆地震を
起こした地震断層によって食い違った石垣や断層の断面などが展示されている。
写真では、赤い矢印の表示物があるところを断層線が通っており、これより向こう側の
石垣が左にずれているので、左横ずれ断層であることがわかる。この付近の水平変位量
(ずれの量)は 2.6m 、垂直変位はきわめてわずかである。この部分の丹那断層は、1935 年に、
国の天然記念物に指定された。この地震断層の活動によって、当時建設途上にあった
東海道本線の丹那トンネルの坑道にも横ずれが生じた。 右図の原図--茨木雅子(1995):国指定天然記念物「丹那断層」 (静岡地学 71号)に引用されたの案内板の図。 2011年12月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+35 5 47.94, +139 1 3.81 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 143° PanoraGeo-No.311 |
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地震断層 5 / 5 | 前の画像へ | 次の画像へ |
玄岳(くろだけ)頂上直下の伊豆スカイライン西丹那駐車場の展望台から
北西を望んだもので、左に富士山、右にドーム状の箱根山駒ヶ岳の溶岩円頂丘が見える。
手前左半分に広がる平坦地が丹那盆地である。ほぼ円形の丹那盆地であるが、
その北東(右上)の部分で平地が北(上)へ三角形に突き出している部分がある。
この三角形の平地の西(左)側にある丘の直線的な麓を丹那断層が通っている。
断層はここから北(写真では右上)に延びて、田代盆地(白く見える三角形)へ続き、
南へは、丹那盆地を横切って、丹那断層公園(丹那盆地南縁の中央部)へと続いてくる。
地名入りの写真はこちら。
1930 年の活動の水平変位は最大で 2.7m であったが、この断層は 700 年〜 1000 年ごとにこのような活動を
繰り返してきたことが最近の調査で明らかになった。このような運動が積み重なって、
数十万年のうちに、この断層を横切る谷が1q あまりずれてしまったところさえある。
詳しくは、
丹那断層公園説明版を参照されたい。
2015年2月27日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+35 5 6.06, +139 1 36.14 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 335° PanoraGeo-No.312 |
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