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35. 白い川、黒い川、澄んだ川
色はいろいろ アマゾンの川たち

マデイラ川
マデイラ川

ワイクラパ川
ワイクラパ川

トカンチンス川
トカンチンス川

三種類のアマゾニア(アマゾン地域)の河川

Three types of Amazonian rivers

 アマゾン川に流れ込む無数の支流は、水の色から「白い川」、「黒い川」、無色の「澄んだ川」の三種類に大きく分類される*1)。 「白い川」は、実際には、左上の写真のマデイラ川のように、泥で茶色に濁った水の川であるが、現地の住民が「白い」と言うので、それに従っておく。 これら三種類の河水の違いは、その川の流域における地形、地質、土壌、植生などの自然環境の違いを反映しており、その分布には、上の地図に示されるような、はっきりした地域性がある。

*1) Sioli, H. (1975):Tropical rivers as expressions of their terrestrial environment. in Golley, F. B.and Medina E. ed. (1975):Tropical Ecological System. (Springer)
図:Goolding, M. et al. (2003):The Smithsonian Atlas of the Amazonを資料にして作成。

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泥で濁った「白い川」沿岸にひろがる氾濫原

泥で濁った「白い川」沿岸にひろがる氾濫原

Flood plain spreading along the muddy "whitewater river"

 どういうわけか地元の人たちは泥で茶色に濁った川のことを「白い川」あるいは「白い水の川」と呼んでいる。 とりあえずそれに従うとして、この写真は泥で濁った「白い川」の一つ、ラモス川とその沿岸の景観である。 河岸には堤防のような高まりが続き、その背後には草が一面に生えた土地がひろがっている。 堤防のような高まりは、川から溢れた水に含まれていた土砂が堆積してできた堤防、すなわち自然堤防である。 その背後にある土地にも土砂が堆積するが、自然堤防ほど多くないのでやや低い湿地になっている。すなわち後背湿地である。 このように、川から溢れた水の土砂がたまってできた川沿いの低地が氾濫原である。 現地ではこれをヴァルゼア(várzea)と言い、そのうち、自然堤防のようにやや高いところを高ヴァルゼア、低いところを低ヴァルゼアと区別している。 土砂に富んだ「白い川」沿いでは氾濫原の発達が良いが、土砂に乏しい「黒い川」や「澄んだ川」では氾濫原の発達が悪い。
 6月の最高水位から水位が下がり始めた8月上旬、自然堤防の上に牛が放牧されている。 自然堤防の草はほとんど食べ尽くされているのに対し、後背湿地には青々と草が茂っている。まだ水が残っていて牛が入って行けないためである。

2002年8月7日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 5 11.87, -57 53 55.59 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 225°

PanoraGeo-No.184

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大量の土砂を含んで流れる濁り川マデイラ

大量の土砂を含んで流れる濁り川マデイラ

Muddy Madeira River transporting large amounts of sediment

 ブラジルとボリビアの国境を流れるマデイラ川を、上流を向いて撮影した写真で、右がボリビア、左がブラジルである。 ともに遠いアンデス山脈を源流とするマモレ川とベニ川という二つの大河が合流してマデイラ川という名になってから約 100㎞ 下ったあたりで、川幅は 700m~1㎞ ある。 マデイラ川は、これからブラジルのロンドニア州内の早瀬の多い区間を 250km ほど流れ下って同州の州都ポルトヴェーリョに至り、さらに 1100km でアマゾン川に合流する。 マデイラ川は流域面積および流量などの点でアマゾン川最大の支流で、泥で濁ってミルクコーヒーのような色の水が流れる典型的な「白い川」である。 マデイラ川の土砂流出量はアマゾン本流(ソリモンエス川)より多く、アマゾン川が大西洋に流し出す土砂の半分近くを占めており、アマゾン水系の大河の中ではもっとも濁りの濃い川である。 マデイラ川やアマゾン本流のような「白い川」のほとんどは、アンデス山脈を源流としており、土砂の大部分はアンデスから流れて来たものである。

2007年3月21日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-9 40 16.15, -65 26 22.37 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 112°

PanoraGeo-No.153

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濁水のマデイラ川サントアントニオ早瀬

濁水のマデイラ川サントアントニオ早瀬

Muddy water Santo Antonio Rapids (Cachoeira Santo Antônio) of the Madeira

 ロンドニア州の州都ポルトヴェーリョの市街より約6km 上流にあるサントアントニオ早瀬は、増水期なので多くの岩礁を水没させ、マデイラ川の濁水が渦巻いて流れている。 ブラジル語のカショエイラ(cachoeira)は、ふつう、「滝」と訳されるが、実際にはこの程度のものであることが多い。 しかし、これでも、アマゾニアの主要交通手段である水上交通に及ぼす影響は大きい。 ポルトヴェーリョより上流のマデイラ川には、このサントアントニオ早瀬を皮切りに、早瀬が繰り返し現れて船の航行を妨げてきた。 このため、ポルトヴェーリョからグアジャラミリンに至る総延長 364.7km のマデイラ・マモレ鉄道が建設され、1912 年から 72 年まで使われていた(詳しくは、テーマ9:マデイラ・マモレ鉄道を参照)。 近年、マデイラ川のこの早瀬区間を利用したマデイラ川水力発電所群の建設計画によって、サントアントニオ水力発電所(出力 3150MW)とジラウ発電所(同 3300MW)が建設された。 これらの二つのダムによって、下流の氾濫原に深刻な環境変化が生ずることが心配される。とくに心配なことは、土砂がダム湖に堆積してしまうことにより、下流のマデイラ川やアマゾン川氾濫原へ供給される土砂が著しく減少することである。 泥で濁った「白い川」から供給される土砂は、氾濫原を造成する材料そのものであり、また、アマゾン低地の生態系における栄養分の主要な源泉の一つでもあるからである。

2007年3月18日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-8 48 27.07, -63 56 42.19 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 8°

PanoraGeo-No.147

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マモレ川を流れる巨大な流木

マモレ川を流れる巨大な流木

A huge driftwood that flows through the Mamoré River

 ブラジルとボリビアの国境を流れるマモレ川は、大量の土砂を含んで流れるいわゆる「白い川」である。 この写真のグアジャラミリンより 55㎞ 下流でベニ川と合流してマデイラ川になる。 河岸の侵食によって、「白い川」の流路は頻繁に変化する。その際、岸辺に生えていた大木も崩れ落ち、この写真のような流木になる。 M.グールディング他著、山本・松本訳:「恵みの洪水―アマゾン沿岸の生態と経済」には、「アマゾニアにおける商業的規模の木材産業は、氾濫原よりむしろ河川の流路内で始まった。」 という書き出しで、次のような記述がある。 「自然の状態では、自然堤防上の樹木は河川流路のすぐ縁まで生えている。 自然堤防をつくっている軟弱な沖積土は増水時にしばしば削り取られる。 その結果、高木も低木もそのほかそこにあったあらゆるものが一緒に流されてしまう。 ポルトガル語で「木材」を意味する「マデイラ」(madeira)を冠されたマデイラ川はこの現象を適切に表現している。 このように、商業的伐採が行われる以前には、川自身が有用材を毎年十分に供給してくれたのである。 十九世紀には、毎年の洪水で流されてくる大量の木材は、アマゾン中流部のイタコアチアーラの小さな製材所にとって十分な量であった。」 要するに、むかしのマデイラ川には、それだけで木材産業が成り立つほど大量の流木があったというわけである。 牧場化などにより、上流の多くの場所で氾濫原の森林が消失してしまった現在では、さほどたくさんの流木はみられない。

2007年3月19日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-10 48 19.75, -65 20 49.90 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 120°

PanoraGeo-No.170

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漂流ゴミいっぱい、増水期のアマゾン川

漂流ゴミいっぱい、増水期のアマゾン川

The Amazon in the flooding season full of drifting garbage

 アマゾン川本流は、泥で茶色く濁った水の、いわゆる「白い川」であるが、季節ととも、水位も様相も大きく変化する。 3月は流域のほとんどが雨季になり、これから5~6月の最高水位に向かって、アマゾン川の水位は上昇し続ける(参考:アマゾン川の水位の年変化) 写真はそのような水位上昇期の3月上旬、アマゾナス州東部のパリンチンス市付近におけるアマゾン川の夕景である。 遠方中央の日が沈んだ空には積乱雲が見え、その下の水面まで達した暗い影は、局地的な豪雨が降っていることを示す雨柱(あめばしら)である。 アマゾン川の水面には大小おびただしい数の漂流物があり、小舟にとっては衝突の恐怖がつきとまう。 これらの漂流物は、「白い川」の岸にひろがる氾濫原が浸水し、そこにあった枯れ木などのゴミが流れ出したものや、河岸が侵食されて水に飲みこまれた草木など、種々雑多である。 水位上昇期の「白い川」でよく見られる光景である。

2005年3月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 36 47.35, -56 41 46.13 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 270°

PanoraGeo-No.171

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ネグロ川、世界最大の「黒い川」

ネグロ川、世界最大の「黒い川」

Negro River, the world's largest "blackwater river"

 マナウス市でアマゾン川本流(ソリモンエス川)と合流する直前のネグロ川である。 熱帯に黒い水の「黒い川」は多いが、ネグロ川は世界最大の「黒い川」である。その名の「ネグロ」も「黒い」を意味している。 この写真付近のネグロ川の幅は 10km あり、川幅3~4km のアマゾン川本流よりはるかに広い。 「黒い川」ネグロ川の川幅がこのように広いのは、土砂がたまって川沿いにできる氾濫原がなく、元の広い水面が残っているためである。 「黒い川」の黒い水は、泥で濁った「白い川」のアマゾン川本流の水とは違い、氾濫原をつくるに十分な土砂を含んでいないのである。 写真のはるか遠方には、氾濫原がなく、直接ネグロ川の水面に接した台地(テラフィルメ)の崖が続いている。崖にはネグロ川の侵食で生じた崩壊地が多数見られる。 それでは、そのような元の広い水面とは何なのか? 一言でいえば、それは、海水面が低かった氷河時代にネグロ川が削った深い谷に、その後の海面上昇によって水が入り込んでできた溺れ谷である。 このような広い水面は、河口(川の合流点)にできた湾という意味のマウスベイ(mouthbay)とよばれる。 また、リアス式海岸の湾と同じ成因なので、河川リアス(fluvial rias)とも言われる*1)。 河川リアスの多くは、その出口を本流がつくった州で狭められて堰止湖のようになっているので、マウスレーク(mouth-lake、河口の湖の意)とよばれることもある。

*1) Gourou, P. (1949): Observações georgáficas na Amazônia. Boletim Geográfico, 21

2002年7月29日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 2 27.95, -60 6 24.80 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 215°

PanoraGeo-No.70

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「黒い川」ウルブー川の自然堤防

「黒い川」ウルブー川の自然堤防

Natural levees of the blackwater Urubu River

 ネグロ川の東を流れるこの写真のウルブー川(Rio Urubu)は、長さ400㎞ほどの小河川で、典型的な「黒い川」である。 写真はそのアマゾン川との合流点に近い部分が溺れて(沈水して)できたマウスベイ(河川リアス、あるいはマウスレーク)である。 両岸の台地(テラフィルメ)間の幅は広いところで約2㎞ある。この黒い水面の中央を走る2列の島はこの川がつくった自然堤防である。 泥(粘土やシルト)のような細粒物質はほとんど含まない「黒い川」の流れも、洪水時にはかなりの量の砂を運んでくる。 その際の流れは、マウスベイの広い水面全体ではなく、中心部の限られた幅を流れ、流れの両側に砂を堆積して、このような自然堤防をつくる。 すなわち、この二列の自然堤防間の距離が、この川の規模(流量)に見合った川幅ということになる。 大量の土砂を運んでくる「白い川」であれば、自然堤防の背後の、台地との間の水面も土砂で埋まって後背湿地ができ、氾濫原(ヴァルゼア)が完成するが、流送土砂が少ないこの「黒い川」の場合にはまだ水面のままである。

2004年7月29日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 49 0.99, -58 26 34.86 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 173°
写真中心位置:-2 56 48.98, -58 25 37.54 (Google Map)

PanoraGeo-No.73

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ネグロ川の支流ジャグアペリ川の黒い水

ネグロ川の支流ジャグアペリ川の黒い水

Blackwater of the Jaguaperi River, a tributary of the Negro River

 ジャウアペリ川は、ブラジルとガイアナの国境にあるアカライ山地(またはアカリ山地)を源流とし、ブラジルのロライマ州を流れてネグロ川に注ぐ「黒い川」である。 その流域全体が古期岩石からなるギアナ高地とその山麓のアマゾニア森林の中にある。 ネグロ川最大の支流ブランコ川は濁った「白い川」であるが、その他の無数の支流がこのような「黒い川」なので、ネグロ川は世界一大きい「黒い川」になっている。 「黒い川」の黒い水は、習字で使う墨汁のように濁った黒ではなく、写真のように、やや褐色がかった黒で、泥を含まず澄んでおり、いわば、コーラ飲料のような水である。 この色は、おもに、水に漬かった落枝落葉(リター)から溶け出してくるタンニンの色である。 落枝落葉が分解されてフルボ酸という腐植もできる。石英質の砂からなる白砂(しろすな、水成ポドゾル)のところでは、これらの物質が土壌に吸収されずに即時に流れ出してくるため、川が黒っぽく酸性の水になる。 流域にこのような白砂地が多数存在することが「黒い川」の黒い水の成因である。

2006年3月17日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):+0 30 53.92, -60 27 57.61 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 105°

PanoraGeo-No.69

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小規模な「黒い川」ワイクラパ川の幅広い河口部

小規模な「黒い川」ワイクラパ川の幅広い河口部

Wide mouth-lake of the small blackwater Uaicurapá River

 ワイクラパ川はアマゾナス州東部のパリンチンス市南方にあり、熱帯林に覆われた台地(テラフィルメ)を刻んだ谷の中を流れる全長 200㎞ ほどの小規模な「黒い川」である。 右遠方には、氾濫原のような平地なしに、斜面が直接水面に接した台地が見える。 写真はワイクラパ川河口部の、幅広い河川リアスの溺れ谷の出口が塞がれてできたマウスレークの部分で、川幅は5㎞ ほどもある。
 「黒い川」の多くは、アマゾン盆地の森林地帯を流れるこのように小規模な川である。 このテーマの表紙「三種類のアマゾニアの河川」を見れば、ネグロ川以外の「黒い川」が小規模な河川であることがわかる。 例外のネグロ川は、ほかの大きな「白い川」(泥で濁った川)とは異なり、その源流は大量の土砂をもたらすアンデス山脈に達していない。 その流域には、アマゾニアカーチンガとよばれる白砂植生が生えた白砂地が広く分布する。 そのような地帯から流れ出る無数の黒い水の支流を集め、ネグロ川は世界一大きい「黒い川」になる。

2002年8月2日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 48 31.37, -56 46 59.70 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 30°

PanoraGeo-No.190

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>住民の生活水になる透明な黒い水

住民の生活水になる透明な黒い水

Transparent blackwater that becomes the living water of the resident

 曇った日の深いところでは真っ黒に見えた「黒い川」ワイクラパ川の水も、晴れた日の浅瀬ではこの写真のように透明できれいな水に見える。 アマゾン川の支流で泥で濁っていない川には「黒い川」と「澄んだ川」があるが、両者の間に明確な境はなく、水の黒さは漸移的である。 黒い水はおもに白砂地から湧き出すので、流域に白砂地が多いか少ないかで川の水の黒さが決まる。 ワイクラパ川の流域には白砂地が比較的少ないため、その水は澄んだ水に近い黒い水である。
 地元民は川辺に来て洗濯や食器洗いをするとともに、川の水を汲んで行き、沸かして飲用や料理にも使っている。 写真にある小舟は、ペケペケ(peque-peque)とよばれる船外機付きカヌーで、アマゾニア(アマゾン地方)一帯で広く使われている住民の足である。

2003年7月31日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 56 41.12, -56 47 9.34 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り  -

PanoraGeo-No.191

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Igapó

"> 「黒い川」の浸水林、イガポー林

「黒い川」の浸水林、イガポー林

Flooded forest of the "blackwater river", Igapó

 「黒い川」や「澄んだ川」の河岸や中州などに生え、一年の半分くらいは水に浸かっている林をイガポー林という。 同じ浸水林でも、養分に富んだ水と土壌の氾濫原に生えた氾濫原林(ヴァルゼア林)は、樹種も豊富で、なかには樹高数十mの巨大高木もみられるが、イガポー林は、はるかに貧弱で、その生育環境は著しい貧栄養である。 とくに、「黒い川」の黒い水は、蒸留水と同じと言われるほど無機養分に乏しく、また強い酸性である。 したがって、イガポー林の木々は、時には樹高 20m のものもあるが、この写真のような4~5m の低木がほとんどで、また、離れ離れに生えていることが多い。樹種数もほかのタイプの熱帯林より少ない。

2005年3月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 46 48.17, -56 46 46.50 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 36°

PanoraGeo-No.110

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アマゾン川の「白い水」とネグロ川の「黒い水」の会合

アマゾン川の「白い水」とネグロ川の「黒い水」の会合

Meeting of "whitewater" of the Amazon and "blackwater" of the Negro

 ブラジルでは、マナウスにおいてソリモンエス川とネグロ川という二つの大河が合流したあとの川をアマゾン川とよんでいる。 ソリモンエス川は、アマゾン川の本流で、アンデス山脈を源流とする泥で濁った「白い川」である。 一方、ネグロ川はアマゾン盆地の北西部やギアナ高地を源流とし、大部分が熱帯林の中を流れる「黒い川」である。 このように色が異なる二種類の水が会合する光景は、「河水の会合」(Encontro das Águas)とよばれ、マナウス観光のひとつの目玉である。 マナウスの対岸、マナウス-ポルトヴェーリョ道路起点のカレイロダヴァルゼア(Careiro da Várzea)集落へ渡るフェリーも、二つの水の境目を横切って航行するので、安上がりにこの写真のような景観を楽しむことができる。 写真手前がネグロ川の黒い水、写真向こうがソリモンエス川の「白い水」であるが、実際には泥で濁った茶色の水である。

1981年7月10日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 8 23.39, -59 54 50.18 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 113°

PanoraGeo-No.72

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マナウスにおける白い水と黒い水の会合

マナウスにおける白い水と黒い水の会合

Meeting of "whitewater" and "blackwater" at Manaus

 マナウス市の観光の目玉の一つである「河水の会合」を空から見た写真で、写真右が下流である。ソリモンエス川(アマゾン本流)の茶色い濁り水(いわゆる白い水、写真の手前)がネグロ川の黒い水と接して流れている。 合流後7㎞、二つの河水の境界部では混合が始まり、水温が高く軽い黒い水が茶色の水の上にひろがって、独特の模様を描いている。 ソリモンエス川の流量はネグロ川の3倍以上もあるので、次第に、濁り水がネグロ川の黒い水を飲み込んで行くが、黒い水の帯が完全に消失するのは、合流後数十キロ下流である。

2006年3月22撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-3 8 42.62, -59 52 49.45 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 13°  写真中心位置:-3 5 36.33, -59 52 9.54  (Google Map)

PanoraGeo-No.71

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小規模な「黒い川」と「白い川」の合流

小規模な「黒い川」と「白い川」の合流

Confluence of small black- and whitewater rivers

 アマゾナス州東部、パリンチンス市の南方で、黒い水のワイクラパ川が茶色に濁ったいわゆる「白い川」のラモス川に流入するところ、すなわちワイクラパ川の河口である。 写真の下部を右から左へ流れるラモス川は、ここより 200㎞ あまり上流でアマゾン川から分岐、その南方を流れ、パリンチンス市でアマゾン川に戻る水路である。 現地ではこのようなバイパスのような水路は、リオ(rio、川)とは言わずパラナー(paraná、側流)と呼んでいる。 パラナーには数百m程度の短いものからこのように何百 km という長大なものまである。
 写真の上半分に広がる黒い水面は、ワイクラパ川下流部の溺れ谷の出口(河口)がラモス川沿いの氾濫原で塞がれてできたマウスレーク(河口の湖)である。この湖の幅は5㎞くらいある。 ラモス川の氾濫原を抜ける部分のワイクラパ川は、そのわずかな流量に見合った幅 170m 前後の細い流れになり、ラモス川に流入するとその黒い水は瞬時に濁り水に同化されてしまう。

2003年7月26日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 38 53.93, -56 43 31.13 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 198°  写真中心位置:-2 45 14.84, -56 45 36.08 (Google Map)

PanoraGeo-No.494

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澄んだ水のシングー川

澄んだ水のシングー川

The Xingu, a clearwater river

 アマゾン地方の川には、泥で濁った「白い川」(実際には茶色の水の川)、有機物を溶かした「黒い川」のほか、泥も有機物も少ない「澄んだ川」がある。シングー川は代表的な「澄んだ川」である。 「澄んだ川」の多くは、ブラジル高原の先カンブリア時代岩石地帯を流域として北流し、アマゾン川に注いでいる(参照:三種類のアマゾニアの河川)。 写真は、マトグロッソ州とパラ州両州の境界付近の森林地帯を流れるシングー川中流部で、青空を映した澄んだ水の水面が美しい。 「澄んだ川」は泥(粘土やシルト)の運搬は少ないが、増水時にはかなりの量の砂を運搬し、それがたまって各所に中州ができている。 マトグロッソ州北部は、大豆畑などの造成による森林の破壊が激しい地域であるが、この付近のシングー川沿岸は先住民保留地に指定されているため、この写真のように緑が豊かである。

2002年7月29日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-10 27 13.58, -53 12 30.30 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 62°  写真中心位置:-10 21 12.21, -53 1 54.84 (Google Map)

PanoraGeo-No.495

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澄んだ青い水のトカンチンス川

澄んだ青い水のトカンチンス川

Tocantins River of clear blue water

 厳密にいえば、アマゾン川に合流していないトカンチンス川(参考:アマゾン河口部の衛星写真)をアマゾン川の支流とするかどうかは、人によって意見が異なるが、トカンチンス川がアマゾニア(アマゾン地方)の川であることに違いはない。 トカンチンス川は、タパジョス川シングー川とともに、アマゾニアにおける三つの大きな「澄んだ川」のひとつである。 この写真は、トカンチンス州の州都パルマス付近に建設されたラジェアード発電所(UHE Lageado、902.5MW)のダム下流のトカンチンス川の澄んだ水である。 深いところではオリーブ色に近い緑、浅い砂地のところではエメラルドのような緑にに見える。この川は、河口部のわずかな区間を除き、すべて先カンブリア時代の古い結晶質岩石(花崗岩や片麻岩)からなる起伏の小さなブラジル高原を流れる。 このような地質・地形状態では、川に供給される泥は少なく、川はおもに砂を流送するだけの「澄んだ川」になる。

2007年8月31日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-9 43 37.48, -48 21 35.90 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 186°

PanoraGeo-No.496

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タパジョス川のサンルイス ド タパジョス早瀬

タパジョス川のサンルイス ド タパジョス早瀬

São Luís do Tapajós Rapids in the Tapajós River

 タパジョス川は、トカンチンス川、シングー川と並び、アマゾン川中下流部に南から注ぐ三つの大きな「澄んだ川」のひとつである。 この川にあるサンルイス ド タパジョス早瀬は、西隣を流れるマデイラ川のサントアントニオ早瀬の泥で濁った流れとは対照的な、澄んだ水の早瀬である。
 この早瀬は、タパジョス川における大型船の遡行限界である。 アマゾン川の支流で大型船が遡って行くことが可能なのは、本流の合流点から遡って来て最初に出会うこのような滝や早瀬までである。 アマゾン盆地のアマゾン本流に近い部分は比較的削られやすい堆積岩層からなっているので、支流に滝や早瀬はないが、支流を上流に行くと、先カンブリア時代の硬い岩石になり、滝や早瀬が連続するようになる。 タパジョス川で最初の早瀬が現れるまでの距離は、この写真のサンルイスドタパジョスの早瀬までの約 320km。この早瀬をつくる岩石は先カンブリア時代の花崗岩類である。

2007年9月6日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-4 28 11.33, -56 15 20.86 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 315°

PanoraGeo-No.203

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タパジョス川沿岸のピンドバール河水浴場

タパジョス川沿岸のピンドバール河水浴場

Pindobal River Beach on the Tapajós

 ひろびろとした海原、どこかの海水浴場かと思わせる景色であるが、実はタパジョス川の河口(サンタレン市街)から45kmほど遡った右岸にある小さな集落、ビンドバールの河水浴場である。 風のない日には、澄んだ水の水面に波はなく、鏡のように静かである。上流からの砂や沿岸の台地(テラフィルメ)の崖が崩れた砂が川底にたまっており、川の水位が下がるとこの写真のような広い砂浜が現れる。 タパジョス川河口部の水位は、アマゾン川の水位の変化に伴って上下する。サンタレン付近のアマゾン川の水位は、季節とともに平均して5m ほど上下し、5月~6月が最高、10 月~11 月が最低になる。
 この付近でタパジョス川の幅は 15㎞ くらいあり、目を凝らさないと対岸が見えない(この画像を拡大すれば、左端にかすかに見えるかも・・)。 このように川幅が広いのは、海水面が低かった氷期の間に掘られた深く広い谷が、その後の海水面の上昇によって溺れ谷になったもの、すなわち、リアス海岸と同じような成因の河川リアスだからである。 このような水面はマウスベイ(湾状の河口)と呼ばれ、本流への出口(合流点)が本流の砂州などで閉じられたたものはマウスレーク(河口の湖)という。タパジョス川河口の水面は後者である。

2007年9月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度)-2 33 39.68, -54 58 36.44 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 320°

PanoraGeo-No.105

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タパジョス川沿岸、アルテールドシャン河水浴場の砂州

タパジョス川沿岸、アルテールドシャン河水浴場の砂州

Alter do Chão River Beach on a bay-mouth bar of the Tapajós River

 アマゾニア(アマゾン地方)には、観光都市マナウス市のネグロ川などに多くの人が訪れる河水浴場があるが、サンタレン市郊外のアルテールドシャンも人気のある河水浴場である。 写真は1981年当時、まだ田舎という雰囲気が漂うアルテールドシャン河水浴場である。アマゾン川のような濁り水ではなかなか泳ぐ気になれないが、このように濁りのない「澄んだ川」や「黒い川」での河水浴は快適である。 向こうに見える水面は、タパジョス川に面した小さな入り江の出口が湾口砂州によって隔てられてできたヴェルデ湖である。 手前の岸には、たくさんの渡し船がこの砂州にある河水浴場へ渡る客を待っている。
 砂浜をつくる砂は、おもに沿岸の台地(テラフィルメ)の崖が風波にさらされ崩れ落ちたものである。 崩れ落ちた砂は、波や沿岸流で岸沿いに運ばれ(沿岸漂砂、または汀線漂砂)、このような砂州や砂嘴をつくる。 平常時の穏やかな水面からは想像できないが、しばしば発生する雷雨に伴う突風(スコール)によって、崖を侵食し砂浜の砂を運ぶような強い風波が発生する。

1981年8月9日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 30 9.90, -54 57 9.44 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 17°

PanoraGeo-No.499

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「澄んだ水」のアルテールドシャン河水浴場で水浴を楽しむ人びと

「澄んだ水」のアルテールドシャン河水浴場で水浴を楽しむ人びと

People enjoying a bath at the Alter do Chão River Beach in clearwater

 アマゾン川中流部、パジョス川河岸のアルテールドシャン河水浴場は多くの点で恵まれた環境のリゾート地である。 何といっても、第一はタパジョス川の澄んだ水とサラサラな石英砂質のビーチ。第二は、アマゾン地方の中では比較的乾季が長く日照時間が長い気候である。 直近のベルテラ観測所(15㎞ 南)の日照時間は 2217 時間で、リオデジャネイロの 2182 時間を凌いでいる。 第三は交通の便である。サンタレン市街やサンタレン空港から 35㎞ という近さもさることながら、2020年に、長年待たれていたクイアバ・サンタレン道路全線の舗装が完了し、車で来やすくなったことはおおきな強味である。 アマゾニア内陸部で、ブラジルの他の地方から舗装道路だけを使ってアクセスできる河水浴場は、今のところ他にはない。

2007年9月4日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 29 59.05, -54 57 12.51 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 47°

PanoraGeo-No.497

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アマゾン川と合流するタパジョス川の河口部

アマゾン川と合流するタパジョス川の河口部

River mouth of the Tapajós that joins the Amazon

 青く澄んだ水の広大な水面は、アマゾン川に合流する直前のタパジョス川で、上流から下流を向いて撮影したこの写真である。 画面右の森林に覆われた陸地はサンタレン市郊外の台地で、そのうち、森林が無くなっている部分はサンタレン空港である。 空港の向こうの小さな入り江を隔てたところにある、白い建造物は穀物メジャー、カーギル社の流通ターミナルで、その付近にサンタレンの市街地がある。 そこから左へ延びる二列の陸地の間をアマゾン川が左から右へ流れている。 手前の列は、アマゾン川がタパジョス川の出口を塞ぐようにつくった砂州で、その右の端の、サンタレン市街との間のわずかな切れ目から、タパジョス川の水がアマゾン川に流れ出ている。 すなわち、この広大な水面は、タパジョス川河口部の河川リアスの溺れ谷が、アマゾン川によって、出口を塞がれてできたマウスレーク(mouth-lake)の水面である。

2003年7月26日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 24 38.57, -54 54 35.82 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 79°

PanoraGeo-No.498

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サンタレンにおける「澄んだ川」タパジョスと「白い川」アマゾンの合流

サンタレンにおける「澄んだ川」タパジョスと「白い川」アマゾンの合流

Confluence of the clearwater Tapajós and the whitewater Amazon at Santarém

 パラ州西部の中都市サンタレンはタパジョス川とアマゾン川本流の合流点にある。その沖合では、タパジョス川の澄んだ水(手前)とアマゾン川の濁った水(いわゆる「白い水」)が会合し、向こうへ流れて行く。 ただし、流量比では 13.5:1 とアマゾン川が圧倒的に勝っているので、タパジョス川の水はすぐに見えなくなってしまう。
 写真の中央手前、タパジョス川の青い水面に突き出した施設は、アメリカの穀物メジャー、カーギル社の穀物積み出し施設(サンタレン穀物ターミナル)である。 ブラジル一の大豆産地となったマトグロッソ州産の大豆が、全線の舗装が最近(2020年)に完成したクイアバ・サンタレン道路を使ってここに運ばれ、輸出される。

2003年7月26日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-2 23 54.69, -54 46 52.55 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 111°
写真中心位置:-2 26 16.01, -54 40 47.16 (Google Map)

PanoraGeo-No.104

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