水が貯まっていて遊水地というイメージに合う写真であるが、実のところ、母子島遊水地でこのような景観が見られるのはきわめて稀である。 平常時の母子島遊水地は、ダイヤモンド筑波の撮影ポイントである例の小さな池(正式には初期湛水池という)以外のところには水がない。 これは 2019 年 10 月 12 日から 13 日にかけて、茨城県を通過した台風 19 号直後の写真である。 この台風では、茨城県の北部や中部を流れる久慈川や那珂川では著しい水害になったが、南西部の鬼怒川や小貝川では、幸いにも、大きな氾濫は起こらなかった。 小貝川の水位は、この遊水地に水が流れ込むまであとわずかというところまで上昇したが、そこをピークに下がり始めた。 それならば、なぜ母子島遊水地にこのように水が貯まっているのか? この水は小貝川から流入したものではない。小貝川から流れ込んだ水なら、もっと濁っているはずである。 小貝川の河水が逆流しないように水門が閉じられたため、母子島遊水地の中に降った雨水が出口を失って貯まったもの、すなわち内水氾濫である。 水門が閉じられても、そこそこの雨であれば、遊水地内に降った雨水は、初期湛水池に収まって、このように田畑を水浸しにすることはない。 台風 19 号の雨量はその限度を超えていたわけである。
2019年10月13日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):+36 15 18.06, +139 59 20.52 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 56°
PanoraGeo-No.592 テーマ 32. 小貝川母子島遊水地 P.0(表紙) で使用)