水源地 | 地名 | 緯 度, 経 度 (°) | ウパマヨダムまでの長さ (km) HP-PanoraGeo : Contos & Tripcevich |
---|---|---|---|
A | ボンボン高原北西部 | -10.676933, -76.471698 | 66.6 ---- |
B | ルミクルス山脈 | -10.731531, -76.646083 | 67.8 68.7 |
C | ククパンガ山 | -10.757834, -76.585570 | 68.0 67.9 | D | フニン市北東山地 | -11.071656, -75.895290 | 68.1 64 |
E | チピアン山 | -11.156628, -75.885343 | 68.8 68.4 |
F | フニン市南東丘陵 | -11.208512, -75.900704 | 68.1 ---- |
G | フニン市南方丘陵 | -11.294404, -75.968279 | 66.8 63 |
マンタロ川上流部おもな支流の水源地とウパマヨダムまでの長さ
(赤い字は最長流路の長さ)
上の地図はペルーアンデスの高所に位置するマンタロ川最上流域の地形図*1)である。 左のアンデス西コルディレラ(西山系)と右の中央コルディレラ(中央山系)の間に、フニン湖を湛えるボンボン高原や丘陵性の山地がひろがり、その中央部をマンタロ川が南流している。 アンデスの高所を縦走する幹線国道3号線が通り、沿線には大きな非鉄金属鉱山をもつセロデパスコやフニンなどの都市があり、かなり開けた地域である。 フニン湖の北東にはマンタロ川を堰き止めたウパマヨダム(Upamayo Dam)があり、ここから下流で、アプリマック川と合流してエネ川となるまでの区間がマンタロ川である。 その長さは 723㎞ あり、これだけでもアプリマック川の 707km より長い。したがって、ウパマヨダムより上流にある支流のどれかが、アマゾン川の「源流」のはずである。
アマゾン川の源流がマンタロ川の上流にあることを明らかにしたコントス&トリプセヴィッチ (2014) の論文*2)では、ボンボン高原西方のルミクルス山脈(Rumi Cruz Range、地図の B点)を源流とし、プンルン湖を経由して流れる川を最長の支流とている。 しかし、この支流がほかの支流に比べて断然長いというわけではなく、同じくらいの支流が多数ある。 そこで、ホームページ PanoraGeo の筆者は、グーグルアースの衛星画像を用いて、いくつかの支流について、ウパマヨダムまでの長さの追試的な計測を行った。
その結果は表のとおりで、 コントス&トリプセヴィッチとはかなり異なるものとなった: 最も長かったのは、フニン湖東方のアンデス中央コルディレラ(中央山系)にあるチピアン山(Cerro Chipián、地図のE点、標高 4751m)の南斜面を源流とする川であった。 フニン市の居住地に近いところを流れてフニン湖に流入するこの川は、各所で蛇行の直線化などの人工的な流路短縮を受けているが、それでも一番長かった。このチピアン山を水源地としたマンタロ川の全長は 792kmになり、アプリマック川より 85㎞ 長い。
今回の計測では、7本の支流が約2㎞ の差の中にあるという微妙な結果なので、さらなる追試が望まれる。 その資料として今回の計測で作成した水系図の kml ファイルを添付する。 ダウンロード後、グーグルアースで開いて利用されたし(アマゾン川源流検討資料ダウンロード)*3)。
では、このように 85㎞ 長くなったアマゾン川は世界最長だろうか? 2024 年の衛星画像で計測した結果は、マンタロ川:792km、エネ川+タンボ川:331㎞、その下流に続くウカヤリ川:1534㎞、アマゾン川(ウカヤリ川・マラニョン川合流点から河口まで):3629㎞ で、合計 6286㎞ であった (アマゾン川全体の長さ計測資料ダウンロード)*4)。 理科年表 2021年版における世界の川の長さは、ナイル川 6695㎞、長江 6380km となっており、6286㎞ のアマゾン川は第3位ということになる。 しかし、ナイルや長江がどのような方法で計測されたものか不明なので正確なランキングは今のところ不可能。 衛星写真が発達したこの時代に、この分野は遅れているとしか言いようがない。
*1) 基図:OpenTopoMap. 図中の青色の大きな扇形は本文3ページの写真、小さな扇形は本文4ページの写真の画角(撮影範囲)である。
*2) Contos, J. & Tripcevich, N. (2014):
Corrent placement of the most distant source of the Amazon River in the Mantaro River draigage. Area, 46.1.
*3) ここでダウンロードされる P738c-UpperMantaro.kml は一種のフォルダで、この中に、各支流の水源地や流路をグーグルアース衛星画像上に表示する支流別の KLM ファイルが入っている。
グーグルアース画面左「場所」の最下の「保留」にあるこのフォルダ名をダブルクリックすると、#A-river などの KLM ファイルのツリーが現れる。
各 KLM ファイルを「右クリック」して「プロパティ」をクリックすると編集パスになり、「測定」で川の長さが示される。
*4) P738d-AmazonTotal.kml というフォルダの中には、アマゾン川の源流(マンタロ川)から河口までを4区間に分けた KLM ファイルと、アプリマック川の KLM ファイルが入っている。
🔍拡大 テーマ 28. 途方もない大河、アマゾン川をたどる P.3 の資料