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15.世界の車窓から-今はなきボリビアのアンデス鉄道

Scenery from the window of the train - The now-defunct Bolivia's Andean Railway

2021年12月3日 改訂

ボリビアの鉄道網と旅客路線

ボリビアの鉄道網と旅客路線

Bolivia's rail network and passenger lines





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ラテンアメリカでは鉄道の旅客路線が著しく減っているが、ボリビアは比較的それが多く残っている方である。 裏返して言えば、道路の整備が遅れているということでもある。 上図で旅客扱いが無い(黒線)とされている北部のビアチャ・チャラニャ線でレールバスの運行が再開されたので、コチャバンバ・ラパス線は旅客扱いが廃止されたボリビア唯一の長距離路線といえる。 ここで紹介するのは、1986 年当時まだ健在であったコチャバンバ・ラパス線の車窓風景である。

なお、上の資料で同線は「旅客輸送無いが使用可能な路線」になっているが、少なくてもアンデス山脈を登るコチャバンバ・オルーロの区間は「使用可能」と言うには程遠い状態であることは後で見る通りである。

原図 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Railways_in_Bolivia.png




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ボリビア・アンデス鉄道 1 /13
コチャバンバ駅で出発を待つラパス行き列車

コチャバンバ駅で出発を待つラパス行き列車

Train for La Paz wating for departure in Cochabamba Station












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コチャバンバはボリビアのアンデス山脈東斜面にあるボリビア第3の人口をもつ都市で、コチャバンバ谷とよばれる盆地の中にある。 南緯 17 度と比較的低緯度にあるが、標高 2500~2600m という高所にあるため、快適な気候に恵まれ、常春の都市との呼び名もある。

かつて、コチャバンバを出てボリビア東コルディレラ山脈を登り、アルティプラノ(ボリビア高原)の一角のオルーロに出て、首都ラパスまで行く旅客列車(気動車)があったが、現在では廃止されている(本テーマ表紙の鉄道路線図参照)。 その始発駅であった写真のコチャバンバ中央駅は、現在では南東方にある小都市アイキレ(Aiquile)まで週3回運行されているレールバスのターミナルの役割しか果たしていない。

午前8時5分、ラパス行き列車コチャバンバ出発。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 24 15.56, -66 9 13.89 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 343°

PanoraGeo-No.261




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ボリビア・アンデス鉄道 2 /13
カピノタ川の網状流

カピノタ川の網状流

Braded stream of the Capinota River












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コチャバンバ盆地の豊かな農業地帯を過ぎると、列車は南へ流れるカピノタ(Capinota)川に沿ってカピノタの町(標高 2400m)まで下り、そこから西に向かう支流のアルケ(Arque)川を溯ってゆく。 写真は東方上空から見たカピノタ川で、右が上流、左が下流である。 向こう岸(右岸)の川に最も近いところをコチャバンバからの鉄道線路が通っている。線路沿いの一部には密な並木が植わっている。

カピノタ川は水流が分流と合流を繰りかえす網状流を呈している。網状流は、急勾配で粗大な礫を大量に流す川でみられる河床形態で、日本でも扇状地を流れる川などにみられるが、乾燥・半乾燥地域の川の多くはこのタイプである。 コチャバンバの気候(年平均気温 16.1℃、年降水量 363mm)に代表されるように、この付近の東コルディレラ山脈は半乾燥気候(ケッペンのステップ気候 BS)で、山中を流れる大きな川のほとんどすべてが網状(流)河川である。 写真の丘陵の斜面のまばらな植生がこのような気候を反映している。川沿いの低地(氾濫原)が狭く耕地に恵まれない住民は、網状流の中州にまで畑をひらいている。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 33 4.59, -66 16 33.76 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 214°
写真中心位置:-17 35 34.18, -66 18 34.95 (Google Map)

PanoraGeo-No.262




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ボリビア・アンデス鉄道 3 /13
激しい侵食のアルケ川の谷

激しい侵食のアルケ川の谷

Arque River Valley of intensive erosion












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標高3000m、列車はまだアルケ川中流部の深い谷の底を走っている。 谷底いっぱいに網状流をなして広がるアルケ川の河原以外、谷底に平地はなく、また、川に接した斜面下部は急なので、人々は谷斜面中腹のやや緩やかなところに畑をひらき集落をつくっている。

斜面は不安定で、方々に崩壊地やガリー(掘れ溝)がみられる。 画面左の黒っぽい岩の崩壊地からの土砂が流れ出して谷底に小さな沖積錐(土石流などで出来る急な錐状の地形)を形成している。

画面下部の右から左に傾き下るピンクベージュ色の裸地は、右端に見える谷から流れ出した土砂がつくる扇状地である。 支流からこのように大量の土砂が流れ出して堆積すると、本流の流れは対岸(この場合には撮影した鉄道のある側)に寄せられて河岸を侵食する。 その結果は・・・・(資料参照)

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 49 45.35, -66 29 42.31 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 156°

PanoraGeo-No.263




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ボリビア・アンデス鉄道 4 /13
アグアスカリエンテス駅で一休みのラパス行き列車

アグアスカリエンテス駅で一休みのラパス行き列車

Train for La Paz taking a break at Aguas Calientes Station












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コチャバンバを出て約 120㎞、アルケ川上流のアグアスカリエンテスという山村の駅で列車は小休止。 少し早いが昼食のためらしい。乗客の多くが外に出て背筋を伸ばす。 アグアス(水)カリエンテス(熱い)という駅名からすると、この付近に温泉があるのかもしれない。

標高 3370m。 ここまでは比較的大きなアルケ川の岸に沿って少しずつ高度を高めてきたが、ここから最高点 4150m に向かっては斜面を一気に登ることになる。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 49 17.91, -66 36 41.72 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 93°

PanoraGeo-No.264




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ボリビア・アンデス鉄道 5 /13
古い地形へタイムワープのヘアピン登坂

古い地形へタイムワープのヘアピン登坂

Hearpin climbing towards old terrain












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アンデス山脈の高所には、古い時代に低いところでできた準平原やなだらかな山地が隆起した「老齢の」地形が分布している。 これまで通ってきたアルケ川中下流部のように、盛んに川底を掘り下げ川岸を削りつつある「若い」川を上流にたどると、最後に滝や早瀬の多い急流となり、それを越えるとにわかに流れの緩やかな「老齢な」地形へと移り変わる。

写真はそのような地形遷移部の急流・急斜面地帯で、鉄道はヘアピンカーブを繰り返しながら登ってゆく。 これまで通ってきた線路が下に見える。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 49 3.01, -66 40 10.40 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 343°

PanoraGeo-No.265




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ボリビア・アンデス鉄道 6 /13
ボリビア・プーナ帯の集落とジャガイモ畑

ボリビア・プーナ帯の集落とジャガイモ畑

Small village and potato fields in the Puna zone of Bolivia

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海抜 4000m。樹木限界を超え、プーナ帯とよばれる高地草原地帯に入った。 空気の薄さが感じられ、高山病の前兆か、軽い眠気をもよおしはじめる。プーナとは高山病を意味するらしい。 アルケ川中下流部の険しい谷間とは別世界のような穏やかな「老齢の」地形が展開している。

緩やかな谷斜面には一面の斜面畑。遠方の丘などは頂上近くまで畑になっている。 寒さが厳しいこの高さではジャガイモが主な作物となる。

ボリビア東コルディレラ山脈は幅が広い。この写真のような山脈が何十と平行して走っている。 アルティプラノの入口のオルーロまでは約 60㎞、まだ数列の山脈を越えなければならない。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 50 38.94, -66 45 6.03 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 343°

PanoraGeo-No.266




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ボリビア・アンデス鉄道 7 /13
平坦なアルティプラノの一角、オルーロ市

平坦なアルティプラノの一角、オルーロ市

Oruro, entrance of flat Altiplano












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東コルディレラ山脈の西麓、アルティプラノ(ボリビア高原)の東縁にあるオルーロ市に着いた。標高は 3720m 前後、富士山の頂上とほぼ同じ高さである。

初めは銀、ついでスズの採掘地として繁栄と凋落を繰り返したきたこの町は、現在ではブラジル、アルゼンチン、チリなどに通じる交通の要衝、物資流通のセンターとして発展、1992 年国勢調査で 18万 だった人口が 2012 年には 26 万になるというように人口増加が顕著である。 国道1号線(ラパス・オルーロ自動車道、写真左)に沿うこの場所も今では市街地になっている。

丘に囲まれた平野は非常に平坦である。 オルーロより南のアルティプラノにはポーポ湖やウユニ塩原などがあるが、今から2万年ほど前の氷河時代には、これらの湖や塩原をひとまとめにしたミンチン湖とよばれる巨大な湖が存在したことが、湖岸段丘などの地形調査から明らかになっている(資料:氷河時代にアルティプラノにあった二つの湖)。 その水面標高は 3760m くらいだったと推定されるので、このオルーロの平野もその湖底だったことになり、そのためにこのように平坦なのである。 白っぽい色の土壌に塊状植物(クッションプラント)がまばらに生えている。 白っぽい色の土壌は砂漠土と栗色土との中間にあたる半砂漠土(シーロゼム)と考えられる。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 55 18.15, -67 7 16.13 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 156°

PanoraGeo-No.267




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ボリビア・アンデス鉄道 8 /13
アルティプラノを主な棲み処とするビクーニャ

アルティプラノを主な棲み処とするビクーニャ

Altiplano, the main habitat of vicuña












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オルーロからラパスまではアルティプラノの東の端に沿って230㎞。直線の多い単調な鉄路が続く。

と、突然、車窓を何かが走った。目で追ってみると、列車の物音に驚いたのか、数頭の動物が全速力で走り去るところであった。 ビクーニャに違いない。ビクーニャはペルー、ボリビア、アルゼンチン、チリのアンデスに棲むラクダ科の動物で、ボリビアでは、ラパス、オルーロ、スクレ各県のアルティプラノを中心に棲息している。 1960 年代には絶滅の危機にあったが、現在回復の途上にあり、絶滅危惧種には指定されていない。 1頭のオスと2頭またはそれ以上のメスおよび子供がまとまって縄張りの中で生活するという。 写真の6頭はまさにそのような家族であろう。

標高は 3730m、まだ、ミンチン湖の湖底だった平坦な地形が続いている。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 27 24.42, -67 46 31.55 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 193°

PanoraGeo-No.268




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ボリビア・アンデス鉄道 9 /13
アルティプラノの集落と遠方のサハマ山

アルティプラノの集落と遠方のサハマ山

Nevado Sajama far away beyound a town in Altiplano












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手前の建てかけの家のような日干し煉瓦の建物が目立つパタカマヤという小都市、標高 3800m、氷河時代のミンチン湖の底だった地帯を過ぎ、少しずつ高度が上がりはじめた。 ただ、東コルディレラ山脈から流れ出る川の扇状地の扇端なので地形は依然として平坦である。 アルティプラノは北ほど高く、ラパスの郊外都市エルアルトが乗る扇状地の扇頂部などは 4200m を若干超えている。 アルティプラノは湖底や扇状地のような平坦な地形のところばかりではなく、写真遠方に見えるようななだらかな丘陵地も広い。 そしてその向こうに見える白いピークが、ボリビアの最高峰サハマ山(6542m)である。撮影地点からの距離は約 140㎞、これがこの付近のアルティプラノの幅でもある。

サハマ山は、アルティプラノの西を限る西コルディレラ山脈を構成する火山であるが、最後の噴火が 68 万年前といわれる古い火山である。 ボリビアの西コルディレラ山脈には、このほか、チリとの国境にある活動的なパリナコータ山(6342m)をはじめ多数の火山がある。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 21 22.31, -67 51 12.87 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 236°

PanoraGeo-No.269




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ボリビア・アンデス鉄道 10 /13
レアル山脈の白峰群

レアル山脈の白峰群

White peaks of the Cordillera Real












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太平洋岸のアリカ港(チリ)への鉄道とチチカカ湖畔のグァキへの鉄道が分岐する鉄道結節点ビアチャを出ると、終点ラパスまでわずかである。 「これから素晴らしい景色が見られるよ」と言って、運転手がカメラマンを運転室に招いてくれた。何たる幸せ!

「素晴らしい景色」の一つがこの写真。イチューグラスに覆われた平坦なアルティプラノの草原を行く整備された鉄路の向こうにはレアル山脈の白峰がそびえている。 ラパスの市街はこれらの山の麓にあるが、アルティプラノを切り込んだ谷の中にあるためここからは見えない。 右手の山がイリマニ山(6402m*)、正面から左手にかけてみえる頂の平らな山がムルラタ山(5868m*)である。 東コルディレラ山脈の一部であるが、ラパス市近くにあるこれらの高峰が集まった一帯をレアル山脈という。

* さまざまな標高が報告されているが、ボリビア政府発行5万分の1地形図の記載に従った。
1:50000地形図PALCA図幅(3044KB、イリマニ山、ムルラタ山を含む地形図)

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-16 38 32.52, -68 16 43.08 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 77°

PanoraGeo-No.270




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ボリビア・アンデス鉄道 11 /13
イリマニ山と対照的なムルラタ山

イリマニ山と対照的なムルラタ山

Flat-top Nevado Mururata contrasting to Illimani












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有名なイリマニ山はさておき、あまり知られていないムルラタ山に近づいてみた。 北にムルラタ山、南にイリマニ山と、南北に並ぶこの二つの山の間を通過する飛行機から撮影したムルラタ山南壁である。 イリマニ山の頂上からもこのような景色が見られるはずである。 このアングルで見るとムルラタ山の頂上の平らさは一層はっきりする。

尖った峰々からなる高いイリマニ山と平らで低いムルラタ山のコントラストを、地元住民は古くから不思議に思っていたらしく、「かつて、自分より高かったムルラタ山に嫉妬したイリマニ山が、ムルラタ山の頭を切り取ってしまった」という言い伝えがある。 日本の八ヶ岳と富士山の神話に似ている。

この「謎」を地学的に説明すれば以下のようになろう。 レアル山脈が属するボリビアの東コルディレラ山脈は基本的には古生代の堆積岩からなる褶曲山脈である。 西コルディレラ山脈のサハマ山のような高い火山があるわけではない。 しかしレアル山脈の部分には、中生代前期に貫入した深成岩(おもに花崗岩)の岩体が各所にあり、削られにくいこの岩体がイリマニ、ワイナポトシ、イヤンプーなどの高峰をつくっている。 これに対して、写真で見れば明らかなように、ムルラタ山は地層に沿って平坦な地形ができやすい堆積岩の山である。

1986年10月15日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-16 36 23.19, -67 47 45.66 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 350°

PanoraGeo-No.271




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ボリビア・アンデス鉄道 12 /13
レアル山脈のワイナポトシ山とチャカルタヤ山

レアル山脈のワイナポトシ山とチャカルタヤ山

Nevados Huayna Potosi and Chacaltaya in Cordirella Real












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列車はやや左にカーブを切った。正面にはワイナポトシ山(左、6088m)の尖った峰とチャカルタヤ山(右、5395m)の幅広い山体が並ぶ。 チャカルタヤ山の麓から手前に延びてくる緩斜面(扇状地)の端に、白く雪をかぶった崖がわずかに見えるが、これはアルティプラノに切り込んだラパス川(チョケアパ川ともいう)の谷頭部の崖で、ラパスの市街はこの崖の下に展開している。

鉄道沿線は依然としてイチューグラスの草原であるが、ところどころに人家が見られるようになり、エルアルトの市街が近いことが感じられる。 撮影当時はラパス市の一部であったエルアルトは、半年後の 1987 年3月に独立してエルアルト市となった。 ラパスのベッドタウンまたは空気の薄いラパス空港がある地区でしかなかったエルアルトはその後、産業都市として急発展し、2012 年国勢調査人口は 85 万、本家のラパス(76 万)を抜いてボリビア第二の都市となった(人口で第一の都市はサンタクルス)。 Google Street に切り替えてこの付近の現在の状態をみてみれば、この都市の急成長ぶりを実感できる。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-16 32 53.29, -68 10 33.54 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 11°

PanoraGeo-No.272




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ボリビア・アンデス鉄道 13 /13
アルティプラノから見下ろしたラパス市街

アルティプラノから見下ろしたラパス市街

La Paz City overlooked from Altiplano












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最終コースはエルアルト市のあるアルティプラノからラパス市街があるラパス川の谷底への下りである。

写真は下り始めの標高 4100m で撮影。なだらかなラパス谷を埋めてラパス市街がひろがり、正面にイリマニ山、左端にムルラタ山がそびえている。 高層のビルが立ち並ぶ市の中心部は、標高 3550m~3650m なので、アルティプラノより 500m ほど低い谷底に位置している。 鉄道の終点、中央駅は市の中心部よりやや高い 3700m にあるが、それでもここからの比高は400m、列車は大きく迂回しヘアピンを繰り返しながら下って行く。

空港も上のエルアルトにあるから、ラパスの市民は何処に行くにしてもこの比高を克服しなければならない。 鉄道全盛の時代には SL 用と電車用の2本の鉄道が谷底とアルティプラノを結んでいた。 鉄道が2本とも廃止された後、谷から抜け出す手段は道路しかなくなったが、近年あらたな手段が導入された。 2014 年の旧鉄道中央駅と空港近くを結ぶロープウェーの開通である。 2018 年現在、これを含め3路線がラパス市内あるいは市内とエルアルトを結んでいる。 市当局は今後ロープウェーの路線を大幅に増やし、都市公共交通の中心に育てる計画である。 いわば「空のメトロ」という、長い間、比高に悩まされてきた都市ならではのアイデアである。

16 時 30 分、コチャバンバ発の列車は予定通り終点ラパス中央駅に到着した。

1986年8月24日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-16 29 9.37, -68 10 9.77 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 114°

PanoraGeo-No.273


Revised on December 3, 2021