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29.大陸を斜めに横切る南アメリカ乾燥ダイアゴナル: その1
 ペルー砂漠
South American Dry Diagonals crossing the Continent diagonally: Part 1 Peruvian Desert

南アメリカのケッペン気候図と乾燥ダイアゴナル

南アメリカのケッペン気候図と乾燥ダイアゴナル

Köppen climate map of South America and Dry Diagonal





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 ダイアゴナルとは、「斜線(/)」、「対角線」、「斜めの」などの意味があり、乾燥ダイアゴナルは南アメリカ大陸を、北北西から南南東に向かって斜めに横切る乾燥帯(砂漠帯)のことである。 最新のケッペン気候区分図(上の図)では、赤(高温の砂漠)とピンク(低温の砂漠)を合わせた部分である。 この地帯には、北北西から南南東へ向かって、ペルー砂漠(ペルー海岸砂漠)、アタカマ砂漠、モンテ(Monte)砂漠、パタゴニア砂漠などが並んでいる。 この乾燥帯は、アンデス山脈を斜めに横切る形にもなっている。 すなわち、北西部のペルーではアンデス山脈の西の麓や西斜面だけが砂漠であるが、中部のアタカマ砂漠では山脈全体が砂漠になり、南東部のアルゼンチン南部ではアンデス東麓にひろがる平原だけが砂漠になる。 このダイアゴナルを北から南へと見て行くことにし、まずは、一番北のペルー砂漠から。
 なお、この気候区分を簡略にした図は、こちらにある。

図の出典:Wikipediaに 引用されたものを再引用。凡例を改変(日本語訳)。




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ペルー砂漠   1 /11
日干し煉瓦のチャンチャン遺跡

日干し煉瓦のチャンチャン遺跡

Chan Chan Ruins of adobe bricks












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 南アメリカ乾燥ダイアゴナルの北部にあるトルヒーヨ市には、プレインカ遺跡(インカ文明以前の遺跡)のチャンチャン遺跡があり、1986 年、世界文化遺産に登録さた。 紀元後 900 年頃から 1470 年頃まで、ペルーの海岸部北半分を領土としたチムー王国の首都である。 年降水量平年値約 10mm という極端に雨の少ない気候のもとでなければ維持が困難な、アドベ(日干し煉瓦)造りの大都市である。 写真は、城壁で囲まれた宮殿(Ciudadelas)9箇所のひとつである中央宮殿(ツチュディ Tschudi,Nik An ともいう)で、壁面は、魚など、この王国の人々が崇めた海に関するさまざまな彫刻で飾られている。 背後には、高さ 12m で天端1m、下底5m、地震にも耐える台形の断面をもった城壁が連なっている。

1981年7月6日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-8 6 36.35, -79 4 29.41 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 126°

PanoraGeo-No.411




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ペルー砂漠   2 /11
危機遺産、アドベの都市チャンチャン

危機遺産、アドベの都市チャンチャン

World Heritage in Danger, the adobe city Chan Chan












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 ペルー北部海岸、トルヒーヨ市にあるチャンチャン遺跡の宮殿のひとつ、鳥の宮殿(バンデリエル Bandiler 宮殿、Ñain An ともいう)を東から望んだもので、写真右の部分の崩れて鋸歯状になった壁が北の城壁(長さ 320m)で、手前を左右に相当壊れた東の城壁、向こうに西の城壁がある。 手入れされなくなってから 500 年以上たった現在、いずれも損壊が著しい。 雨の少ない砂漠気候であるが、数年に一度、赤道付近から南下してくる暖かい海流(エルニーニョ)で大気が不安定化して降る雨は、土を固めて干しただけの煉瓦(アドベ)で造られた建造物にとって、最大の敵である。1986 年に 14 平方キロあまりが世界文化遺産に登録、同時に「危機にさらされている世界遺産」(危機遺産)にも登録されて以降、保全や補修の努力がなされている。 写真は補修前の 1981 年のものであるが、写真右上の城壁の隅を外側から見た 2014 年のストリートビュー写真では、補修がだいぶ進んだようにみえる。 結構なことではあるが、上の写真のような"自然のままのの迫力"が失われてしまっているのは残念である。

1981年7月6日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-8 6 11.27, -79 4 4.41  (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 291°

PanoraGeo-No.412




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ペルー砂漠   3 /11
トルヒーヨ海岸に並ぶ葦船

トルヒーヨ海岸に並ぶ葦船

Reed ships on the Trujillo Coast












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 砂漠には丸木舟がつくれるような大木はない。それに代わるものとして、チャンチャン遺跡のあるトルヒーヨの漁師たちが考えたのは葦船(あしぶね)である。 海岸の砂浜を掘って水たまりをつくり、そこで葦を栽培する。 2~3m ほどに育った時、刈り取って乾燥し、それを束ねてカヌーをつくる。葦船と言えば、チチカカ湖のバルサが有名であるが、そこも高地草原地帯で樹木がない風土。

1981年7月6日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-8 4 36.07, -79 7 9.54 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 196°

PanoraGeo-No.413




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ペルー砂漠   4 /11
サンタ川、岩石砂漠ネグロ山脈を横切る外来河川

サンタ川、岩石砂漠ネグロ山脈を横切る外来河川

Río Santa, an exotic river across the Negro Mountains of rock desert












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 サンタ川は、ペルーの海岸砂漠に流れ下る多数の外来河川のうち流域面積最大の川である(参照:ペルー砂漠の外来河川)。 上流部は、ワスカラン山をはじめ 6000m 級の白峰が連なるブランカ山脈の水を集めてその西のネグロ山脈との間を流れ、下流部はネグロ山脈を横断して、チンボテ市などのある狭い海岸平野に流れ出る。 写真は海岸平野に出る手前のサンタ川で、谷底は緑であるが、ネグロ山脈の山々はまったく植生がない岩石砂漠である。 サンタ川の水は、この付近の堰で取水され、長い用水路によってサンタ川以外の涸れ川の流域にも導かれ、広い範囲の海岸平野を緑の耕地に変えている。

1981年8月5日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-8 44 33.03, -78 27 51.60 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 22°

PanoraGeo-No.414




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ペルー砂漠   5 /11
ペルー砂漠、チャンカイ河川オアシスの灌漑地

ペルー砂漠、チャンカイ河川オアシスの灌漑地

Irrigation land of Chancay River Oasis, Peru Desert












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 ペルー太平洋岸の砂漠には、アンデス山脈を水源とする外来河川が数十本あって、それぞれの谷底や海岸平野は、農地や集落が発達した河川オアシスになっている。 写真はそのひとつ、ペルー中部(リマ市北方 50㎞)にあるチャンカイ川の河川オアシスで、川からひかれた用水路と育ちの良い灌漑地のトウモロコシ畑である。 トウモロコシの栽培地は、海岸からアンデスの標高 3500m 近くまでの広い高度帯にわたっている(参照:こちら)。 ペルー砂漠の河川オアシスでは、トウモロコシのほか、綿花、サトウキビ、ブドウ、オレンジなど多様な作物が栽培されている。

1981年7月1日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-11 36 30.77, -77 13 3.74 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 133°

PanoraGeo-No.415




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ペルー砂漠   6 /11
ペルー中部、「海岸砂漠」の海岸

ペルー中部、「海岸砂漠」の海岸

Coast of 'coastal desert' in the central Peru












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 自然地理では、「海岸砂漠」という語を海岸にある砂漠という漠然とした意味で使うことはない。 「海岸砂漠」は以下のようなキーワードで説明される術語である: 大陸の西岸、南北回帰線を中心とした地帯、亜熱帯(中緯度)海洋性高気圧(気団)の東縁、沿岸を低緯度に向かう寒流、湧昇流、海霧、超安定な大気などなど。 アフリカ大陸南西部のナミブ砂漠、同北西部の大西洋海岸砂漠(サハラ砂漠の西縁部)、北アメリカのカリフォルニア半島の砂漠などとともに、南アメリカでは、ペルーからチリ北部まで、海岸沿いに、南緯4度付近から30度付近まで 3300㎞ 続く砂漠地帯がこれにあたる。 このうち南緯4~18 度の約 2000㎞ がペルー砂漠あるいはペルー海岸砂漠とよばれる砂漠である。 この砂漠は、動植物の特徴の違いなどから、南緯7度と 15 度付近を境に、北から、サチュラ砂漠、ペルー砂漠(中心部)、ペルーアタカマ砂漠に細分される。 写真はペルー中部、首都リマの北 35㎞ にある小都市アンコンの海岸で、砂漣(されん)が美しい無植生の砂漠が海にまで達している。 アンコンは古くからの漁村で、リマ郊外の大衆的海水浴場でもある。 この湾に注ぐ外来河川がないので、緑に乏しい乾いた景観がひろがっている。 ペルーの海岸砂漠では、5月から 11 月ごろまで、ガルーアとよばれる海霧や低い雲に覆われることが多いが、午後には一時的にこのように晴れ渡ることもある。

1981年7月1日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-11 43 52.89, -77 9 22.74 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 217°

PanoraGeo-No.416




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ペルー砂漠   7 /11
リマ市街を流れる外来河川リマック川

リマ市街を流れる外来河川リマック川

Río Rímac, an exotic river flowing through the city of Lima












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リマ/カヤオの気温と降水量<sup>*2)</sup>

リマ/カヤオの気温と降水量*2)

 人口約1千万のペルーの首都リマは、砂漠の都市としては、パキスタンのカラチに次ぐ大都市である。写真のように頻繁に低い雲や霧に覆われるが、右の表のとおり、年降水量はわずか 2.1mm と、ほとんど雨が降らないに等しい。 その都市用水の大部分はこの写真のリマック川をはじめ、北郊外のチジョン川(Río Chillon)や南郊外のルリン川(Río Lurin)などの外来河川の地表水、およびこれらの川が涵養する地下水に依存している。 これらの川の上流のアンデス山脈の高所はツンドラ気候で、年に数百 mm の雨や雪が降る。 たとえば、リマック川の流域をわずかに外れるが、標高約 3700m のラオロヤ(La Oroya)では 650mm、分水界に近い標高 4098m の小村のヤウリ(Yauli)では 723mm *1)の年降水量がある。


*1)https://es.climate-data.org/america-del-sur/peru/junin/yauli-875460/
*2) 気象庁資料平年値(1991-2020年)

1981年6月30日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-12 2 35.55, -77 1 51.80 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 81°

PanoraGeo-No.476





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ペルー砂漠   8 /11
地下水オアシスの土壌に形成されたカリーチ

地下水オアシスの土壌に形成されたカリーチ

i>Caliche formed in the soil of groundwater oasis












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 砂漠には、河川オアシスのほか,地下水が浅いところにできる地下水オアシスもある。 写真はペルーのイーカ市近郊の地下水オアシスの畑であるが、畑の横にはカリーチのブロックがうず高く積み上げられている。 カリーチは土壌中にできる盤層(ハードパン)の一種で、おもに石灰(炭酸カルシウム)が土層を硬く固めたものである。 とくに、地下水の浅い地下水オアシスでは、土に吸い上げられた地下水が地表で蒸発するときに石灰を残して行くためにカリーチができやすい。 コチコチに固まったカリーチは、作物の根を通さないため,畑をつくるには先ずこれを掘り上げて取り除かなければならない。

1986年8月10日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-13 56 5.44, -75 56 28.25 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 320°

PanoraGeo-No.417




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ペルー砂漠   9 /11
礫砂漠に描かれたナスカの地上絵「手」

礫砂漠に描かれたナスカの地上絵「手」

Nazca Lines 'Hands' drawn on the gravel desert












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 砂漠には、砂砂漠、礫砂漠、岩石砂漠などの種類がある。 このうち、南アメリカの乾燥ダイアゴナルでは岩石砂漠が圧倒的に多いが、砂砂漠(たとえば、こちら)やこの写真のような礫砂漠も一部にはある。 ペルー南部のナスカの地上絵は、近くの山地から流れ出る小川がつくった扇状地に描かれている。 この礫砂漠の地表を埋め尽くす礫の表面は、砂漠ワニスという被膜ができて黒っぽくなっており、その下には白い砂がある。 地上絵の線は、地表の黒い礫をどかして下の白い砂を露出させれば引ける。つまり、作りやすいと同時にきわめて壊されやすいものでもある。 砂漠ワニスは礫の表面に付着した塵などが乾燥した気候下で酸化してできる被膜で、おもにマンガンや鉄の酸化物からなっている。 写真は、展望塔から見下ろした地上絵のひとつ、ハンズ(手)である。

1986年8月9日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-14 41 37.94, -75 6 49.90 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 182°

PanoraGeo-No.418




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ペルー砂漠   10 /11
ペルー南部、砂漠高原を緑化するマヘス灌漑プロジェクト

ペルー南部、砂漠高原を緑化するマヘス灌漑プロジェクト

Majes Irrigation Project to greening the desert plateau in southern Peru












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 ペルー南部のアンデス山脈上空から南西を望んだ写真である。 遠方に太平洋の海岸が見えるはずであるが、海霧(ガルーア)に覆われていて見えない。 この海霧が切れるあたりが標高 1000m で、そこから手前に、写真下端、アンデス山脈の麓の標高 2000m まで、漸次高度を増す高原がひろがっている。 地質的にはモケグア堆積盆地とよばれる新第三紀の地層からなる平原である。 この平原は、写真左手を手前から遠方へ流れるシウアス(Sihuas)川に 300m 前後も掘り込まれて、高い台地になっている。 シウアス川に沿う濃い緑の帯は、この外来河川の水を使った農地である。 ペルー砂漠の農地の大部分はこのような外来河川沿いの低地にあり、川と川の間の台地や丘陵は無植生の砂漠である。 そのような土地にも水を引いて農地を広げようという試みのひとつが 1980 年代に始まったマヘス灌漑プロジェクトで、写真のように、台地の上に広い緑の農地が出現した。 現在、アマゾン上流域のアプリマック川から水を引き、シウアス川両岸の台地の灌漑地の拡大を目指すマヘスシグアス(Majes-Siguas)特別プロジェクトⅡが進行中である。

2011年9月15日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-16 0 46.68, -71 58 2.43 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 210°
写真中心位置:-16 22 1.15, -72 10 49.55 (Google Map)

PanoraGeo-No.419




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ペルー砂漠   11 /11
アルティプラノの西を縁取る火山群

アルティプラノの西を縁取る火山群

olcanoes bordering the west of Altiplano












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 ペルー・ボリビア・チリ三国国境付近の上空から南南東方向、アルティプラノ(ボリビア高原)の中部を望んだ景観である。 写真左の孤立した山がボリビアの最高峰サハマ山で、その向こうに見える白い地平線がコイパサ塩地(塩原)である(地図参照)。 右端にある黒い地肌の円錐火山はチリ最北部の州の名にもなっているパリナコータ山で、そこから遠方の写真中央部に向かっては、ボリビアとチリの国境をなす山々が連なっている。 アルティプラノの西を限る西コルディレラ山脈(アンデス西山系)を構成する山々で、多くは火山であるが、歴史時代の活動記録があるものは少ない。 南アメリカ乾燥ダイアゴナルの砂漠は、この付近から著しくひろがって、標高 3500~4000m のアルティプラノの上にまで達するようになる。コイパサ塩地やその南のウユニ塩地など、塩地 が目立つようになるのもこの付近より南である。

2011年9月15日撮影  カメラの位置 (緯度,経度):-17 7 58.53, -69 30 49.74 (Google Map)  撮影方向:北から時計回り 152°

PanoraGeo-No.423


Uploaded on May 08, 2021