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南アメリカ大陸中央部を占める大湿原、パンタナールの位置と広がりThe location and extent of the Pantanal, a large marsh occupying the central part of the South American continent |
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野鳥の楽園パンタナール | 1 /17 |
パンタナール横断道路(トランスパンタネイラ道路)のゲートGate of the Trans-Pantanal Road (Rodovia Transpantaneira) |
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マトグロッソ州の北部パンタナールの湿原地帯を走るパンタナール横断道路に設置されたゲートである。 この道路は、アマゾン横断道路などと同様、1970 年代にブラジル軍事政権が地政学的リスクに対応する目的で計画したものである。 当初の計画では、マトグロッソ州の州都クイアバの郊外のポコネー市から南へ、マトグロッソドスール州のコルンバ市まで、パンタナールの湿原を貫いてつくられることになっていた。 しかし実際に建設されたのは、ポコネー市から州境のポルトジョフレまでの 146㎞ である。この道路はマトグロッソ州の北部パンタナールの観光の主軸であるが、通行料はとらない。 お粗末な道路の整備状況を見ればそれも当然と頷ける。
2003年8月12日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 24 23.48, -56 40 11.19 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 202°
PanoraGeo-No.551
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野鳥の楽園パンタナール | 2 /17 |
パンタナール横断道路を行く観光トラックTourist truck on the Trans-Pantanal Road |
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マトグロッソ州の北部パンタナールにつくられたパンタナール横断道路のおもな利用価値は観光である。 ただし、この道路は、国立公園や世界遺産地区に直接通じているわけでもなく、行ったのと同じ道を帰らなくてはならないなど観光コースとしては文字通り中途半端である。 全線が砂利道であることはまだ良いとして、最大の問題は、今にも壊れそうな木橋をところどころで渡らなくてはならないことである。 全線で 122 ある橋のうちコンクリート橋は一つか二つで、ほとんどがこの写真のような木橋である。 したがって、デラックスな観光バスによる快適なツアーなどは望むべくもない。この写真のようなオフロードカーや小型トラックを改造した車がパンタナール横断道路観光のおもな足である。
2003年8月14日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 47 2.36, -56 50 58.60 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 340°
PanoraGeo-No.552
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野鳥の楽園パンタナール | 3 /17 |
パンタナール横断道路を行く牛の群れHerds of cows go along the Trans-Pantanal Road |
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パンタナール横断道路の観光と並ぶもう一つの用途は移牧の道としての利用である。 移牧とは家畜の飼育場所を季節ごとに移動させることで、パンタナールの牧場では、浸水して使えなくなる期間、家畜をほかの牧場に避難させる必要がある。 このような家畜の定期的な移動にこの道路が利用される(参照:パンタナール湿原の移牧)。 この写真の8月は、避難先から水がひいたパンタナールの牧場へ牛が帰ってくる時期で、一日にいくつもの牛の群れがパンタナール横断道路を南下して行く。 パンタナールでは乾季になっても湿原の水はすぐにはひかず、また、雨季になってもすぐには満ちて来ない。 そのため、乾季が始まってから3か月もたち、2か月後には雨季が迫っているこの8月(右の気候表参照)が牛の帰還の最盛期となる。 この日、そのような牛の群れが渋滞するトラブルが起きた。牛の群れの前方には狭い壊れかかった木橋がある。新米の若いカーボーイの誘導のまずさから牛たちが橋を渡るのを嫌がってしまった。 もともと、牛たちにとって、キャトルグリッドに似た隙間だらけの木橋を渡るのは勇気がいることである。 カーボーイが足を踏み鳴らし、大声をあげ、帽子を振って追い立てても牛たちはビクともしない。 *1) クイアバは北部パンタナールの気候を代表する地点。ブラジル気象庁-INMET による 1991-2020 年の平年値。ただし、1月の気温欠測のため、12月と2月の中間値とした。 2003年8月14日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 25 28.82, -56 40 12.40 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 178° PanoraGeo-No.553 |
クイアバの気温と降水量*1) |
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野鳥の楽園パンタナール | 4 /17 |
パンタナールの水鳥とワニと釣人Waterfowl, alligator and anglers in the Pantanal |
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8月のパンタナールは、水がややひいて、牧場などが使えるようになる。 しかし小川や少し低いところにはまだ水が豊富に残っている。パンタナール横断道路沿いは、道路の盛り土をとるために掘った溝が方々にあるので水面がとくに豊富で、そのようなところが水鳥やワニ、そして釣人のたまり場になっている。 写真はそのような水面のひとつで、遠方の水面に材木が浮いているように見える多数の細長い影はワニである。 ここのワニは穏健で、よほどのことがない限り人に危害を与えることはない。このことを知っている釣人たちは、平気でつりを楽しんでいる。 水鳥、ワニ、釣人三者の共通のターゲットは水中の魚である。
2003年8月12日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 25 35.55, -56 40 12.19 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 310°
PanoraGeo-No.554
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野鳥の楽園パンタナール | 5 /17 |
パンタナールのワニは小型のアリゲーターAlligators are common in the Pantanal |
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パンタナール横断道路沿線では無数のワニと出会える。 ワニには大別クロコダイルとアリゲーターの二つがあるが、パンタナールのワニはアリゲーターである。クロコダイルより小型で、あまり狂暴ではない。 上から見た時のアリゲーターは鼻先が丸くて、細長くV字型のクロコダイルと区別できる。 また、口を閉じたときに、下あごの前から4本目の長い歯が見えるのがクロコダイル。 アリゲーターにもそのような上を向いた長い歯はある(この写真中央の口をあいたワニで見える)が、口を閉じると見えなくなる(右の写真を拡大してみてください)。 パンタナールのワニの大部分は、アリゲーターの中でもコビトカイマンという属で、体長2m にも満たない小型ワニである。 2003年8月14日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 53 37.22, -56 50 40.65 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り - PanoraGeo-No.555 |
コビトカイマン 学名:Paleosuchus palpebrosus -16 25 58.54, -56 40 11.27 2003年8月12日撮影 |
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野鳥の楽園パンタナール | 6 /17 |
パンタナールの植生景観、カンポとカポンVegetation landscapes of the Pantanal, Campo and and Capão |
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カンポ(campo)はブラジルでは樹木を欠いた草本だけの植生景観を指す。 熱帯では、温帯の半乾燥気候地域で見られるステップやプレーリーのような草本だけの草原はまれで、草原に灌木が疎らに生えたサバナ、すなわちカンポセラードが一般的である。 ブラジルの熱帯地域でカンポが見られる代表的環境はパンタナールのような湿地である。 写真の草原は手前にある水たまりが示すようにそのような湿地性の草原で、人工的に樹木を除去したものでない。 パンタナールでは、このようなカンポになっている低湿地のほかに、それよりわずかに高く、この写真のように、樹林になっていたりサバナになっている島状の土地があり、カポン(Capão)とよばれている。 その多くは円形あるいは楕円形の平面形を呈する。カポンのできかたについては、a. 侵食から取り残された、b. 植物の遺物が集積してできた、あるいは c. 先住民が土を積み上げたなどの諸説があり、定説はない。
2003年8月12日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 26 53.63, -56 40 30.17 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 137°
PanoraGeo-No.556
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野鳥の楽園パンタナール> | 7 /17 |
イペーの樹上で子育てをする鳥たちBirds raising children on a tree of Ipê | Page |
*1)さまざまな数値の報告があるが、ここでは Nunes, A. P. (2011): Quantas espécies de aves ocorrem no Pantanal brasileiro?(ポルトガル語、英文要約付)を採用。
2003年8月12日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 37 15.66, -56 46 4.81 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 155°
PanoraGeo-No.242
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野鳥の楽園パンタナール | 8 /17 |
満開のイペー ローショIpê roxo in full bloom |
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パンタナール湿原の微高地の樹林で比較的背が高く目立つ木がイペー(Ipê)である。先住民ツピー・グアラニー族の言葉で「樹皮の厚い木」という意味をもつ。 イペーには、この写真のようにピンク色の花をつけるイペー ローショのほか、黄色の花のイペー アマレーロ(右の写真)、白い花のイペー ブランコなどがある。イペー アマレーロはブラジルの国花である。 パンタナールで多いのはピンクの花のイペーローショ(Ipê roxo、学名:Handroanthus impetiginosus)で、乾季の7~8月に開花する。葉がまだないうちに開花する点では日本の桜と同じである。 ローショ(Roxo)は赤紫という意味であるが、実際の花はこの写真のように鮮やかなピンク色である。樹皮の内側から採れる物質には抗癌作用があるという説もある。 イペーは腐りにくい良質な木材にもなり、フローリング材や船の甲板などに使われる。 日本では横浜大さん橋国際旅客ターミナルで、フロアーや屋外のウッドデッキに、ブラジル産イペー材が大量に使用されている。 |
イペーアマレーロ (黄色い花のイペー) 学名:Handroanthus albus 緯度、経度:-16 41 0.65, -56 49 9.13 2003年8月12日撮影 |
2003年8月12日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 28 25.56, -56 41 21.29 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り -°
PanoraGeo-No.241
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野鳥の楽園パンタナール | 9 /17 |
パンタナールの牧場ファゼンダRanch Fazenda in the Pantanal |
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ブラジルだけでも 14万km2 あるという広大なパンタナール湿原のうち自然保護地になっているのは、パンタナールマトグロセンセ国立公園(1350㎞2)、 タイアマン(Taiamã)生態ステーション(116㎞2)およびセスキ(SESC)パンタナール民営自然保護地(879km2)程度で、そのほかの部分では民間の牧場化が進み、数千という牧場ファゼンダがつくられ、おもに牛が放牧されている。 パンタナールにおける牧牛は、クイアバ川流域におけるゴールドラッシュが契機で、それが収まった後は、パラグアイ川を通じてのシャルケ(塩漬け干し肉)と皮革の輸出地として発展した。 しかし、土壌が劣悪で飼料となる草が十分でないため、1頭の牛につき4ヘクタールくらいの土地が必要で、その結果、牧場の広さは平均して1万ヘクタールと大規模にならざるを得ない*1)。
*1) EMBRAPA(2007):Pecuária de Corte no Pantanal Brasileiro: Realidade e Perspectivas Futuras de Melhoramento, p.10.
2003年8月14日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 56 0.35, -56 53 2.10 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 187°
PanoraGeo-No.557
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パンタナール横断道路沿いのファゼンダホテルHotel fazenda along the Transpantaneira Road |
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パンタナール横断道路沿線には10軒ほどの宿泊施設があるが、そのうちのいくつかは、牧場の中にある民宿程度の小規模なホテルで、現地でオテルファゼンダ(Hotel fazenda、ファゼンダホテル)とよぶものである。 普通のホテルのように快適とは言いかねるが、牧場の様子を見たりエコツーアーをしたりするのに適した施設である。 ポウザーダ・リオ・クラーロというこの写真のホテルは、パンタナール横断道路に面したところにある入口から3㎞ あまり、この先に本当にホテルがあるのかと心配するほど細い泥道を行ったところにあった。牧場の管理小屋を改装して、20 ほどの客室をもつ宿泊施設にしたものである。 ホテルを囲む牧柵の外は、牛が草を食み、そこここに満開のイペーローショが生えたのどかな景観である。
2003年8月13日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 37 9.19, -56 44 20.55 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 123°
PanoraGeo-No.558
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野鳥の楽園パンタナール | 11 /17 |
歴史を秘めたクイアバ川の流れFlow of the Cuiabá River with its history |
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パンタナール横断道路の起点ポコネーの市街から南東へ 40㎞ ほど別の道を行くと、この写真のクイアバ川に臨むポルトセルカードという小集落に着く。
18 世紀を通じてブラジルの経済を盛り立てたゴールドラッシュの舞台としてはミナスジェライス州が有名であるが、1718 年に金が発見されたマトグロッソ州クイアバ川流域もその舞台のひとつであった。
この辺境の地で働く人たちと交易するサンパウロの商人たちを乗せた船団がこの川を行き来した。
この船団の旅は、途中の河川が増水して航行が容易な3月末から6月初めまでという決まった季節に実施されたので、東南アジアの季節風になぞらえて、モンソン (Monção、モンスーンのボルトガル語)とよばれた。
1838 年まで続いたこの旅行で大規模なものは、300 艘のカヌーで 3000 人という例もある。
この写真のクイアバ川対岸の自然堤防上の茂み向こうには、パンタナールに5つあるラムサール条約湿地1)のひとつ、社団法人ブラジル商業連盟(セスキ、SESC)が管理するセスキ パンタナール民営自然保護地がひろがっている。
ポルトセルカードには、セスキが経営するセスキ ポルトセルカード ホテルがある。快適なホテルの他、充実した環境教育・社会教育用の施設やプログラム(エコツアーなど)が用意されている。
*1)パンタナールのラムサール条約湿地:パンタナールマトグロッセンセ国立公園、タイアマン生態ステーション、セスキ(SESC)パンタナール民営自然保護地(以上ブラジル)、 エルパンタナールボリビアーノ(ボリビア)、リオネグロ(パラグアイ)。
2003年8月13日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 30 56.53, -56 22 39.77 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 88°
PanoraGeo-No.559
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野鳥の楽園パンタナール | 12 /17 |
ポコネーの砂金採取場(ガリンポ)Placer gold site (Garimpo) in Poconé |
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ポコネーはマトグロッソ州の州都クイアバから 100km 南西にある小都市で、パンタナール横断道路(トランスパンタネイラ)の起点である。 パンタナールの入り口に当たるこの町の中に掘られた大きな穴は、今でも稼働中の砂金の採取場(ブラジルではガリンポ Garimpo という)である。 州都クイアバ周辺は、1700 年代以降に多数のガリンポがつくられて、ブラジルにおける主要な金産地のひとつになった。 クイアバ(1719 年創立)の発祥と発展のもととなったのは、このようなガリンポの存在である。 2011 年現在でも、マトグロッソ州は年に8トンの金を産出している。 ブラジルにおける金の多くは砂金として産出される。砂金は川底の砂をポンプで吸い上げて選り分ける方法のほか、この写真のように、台地や丘陵をつくる堆積物から採取する場合もある。 この写真のガリンポでは、砂と角礫が不規則に混ざった、一見、土石流あるいは山崩れの堆積物を思わせるような未固結の堆積物から砂金を採っている。
2003年8月13日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-16 16 37.69, -56 37 58.72 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 307°
PanoraGeo-No.128
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野鳥の楽園パンタナール | 13 /17 |
パンタナールにひろがる植生と地形のモザイクMosaic of vegetation and topography in the Pantanal |
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マトグロッソドスール州に属する南部パンタナールの中心都市はコルンバである。同州の州都カンポグランデからコルンバへ向かう飛行機の窓からは、パンタナール湿原のさまざまな顔を見ることができる。 この写真の中央から下にかけてひろがる白っぽい土地は、毎年定期的に浸水する低地で、カンポ(Campo)とよばれる樹木の無い草原である。 カンポに点在する青ないし黒っぽい丸みを帯びた模様はバイア(Baía)とよばれる沼地で、乾季に涸れてしまうものもあれば常に水を蓄えているものもある。 写真上部にあるまだらな緑の模様は、草原に低木が疎らに生えたもの、すなわちブラジルではカンポセラード(単にセラードともいう)とよばるサバナである。 このようなサバナや場合によっては森林になっているのは、カンポの低地より1~3m 高く普通では浸水することのない微高地である。 パンタナールではこのような微高地のことをコルジリェイラ(Cordilheira)という。 「山脈」という意味であるが、日本で平地林のことを「山」と言うことがあるのと同じと考えれば違和感はなかろう。 カンポの中に島状に分布するこのように樹木のある微高地はカポン(Capão)である。
1982年8月19日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-19 17 52.90, -56 53 17.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 207°
PanoraGeo-No.560
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野鳥の楽園パンタナール | 14 /17 |
コルンバ付近の浸水した南部パンタナールFlooded southern Pantanal near Corumbá |
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写真右上に白い滑走路が見えるコルンバ空港へ着陸のため、大きく左旋回中の飛行機から低い台地上にひろがるコルンバ市街とパラグアイ川を遠望した。 コルンバはボリビアとの国境にあるブラジルの都市で、国境防衛のために設置された軍事都市が起源である。 この写真の撮影地点はボリビアのプエルトキハロ市街の上空で、この都市のすぐ前を流れるタメンゴ水路(Canal Tamengo)がブラジルとの国境である。 ボリビア東部鉄道のターミナルでブラジルとの交易の拠点となるプエルトキハロの成長は著しく、現在ではこの写真の下部(煙が上がっているところより手前)は市街地になっている。 8月の半ばともなれば、パンタナール湿原のかなりの部分から水がひくが、コルンバ付近のパラグアイ川沿岸の低地はまだ広く水没していて、列状の自然堤防などの微高地だけが水面から顔を出している。 コルンバ市街の前から左へ延び、自然堤防に挟まれた逆S字型に見える水面がパラグアイ川である。 写真手前の陸地に沿うおおまか2列の自然堤防の間をタメンゴ水路が流れている。タメンゴ水路は内陸国ボリビアにとって唯一の海へ続く航路である。
1982年8月19日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-19 0 43.19, -57 43 23.95 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 76°
PanoraGeo-No.561
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野鳥の楽園パンタナール | 15 /17 |
水がひき始めたパンタナール湿原The Pantanal where the water began to draw |
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パンタナール湿原全体の水を集めて流れるパラグアイ川の水位は、南部パンタナールのコルンバ付近では、6~7月に最も高くなり、12月に最低になる。 その水位差は平均すれば約 2.5m であるが、年ごとの変動が大きく、5m を超えることも稀ではない(資料:コルンバ付近のパラグアイ川水位と降水量の年変化)。 写真はコルンバ付近のパラグアイ川の小支流、パラグアイミリン川に沿う氾濫原の8月の状態である。 最高水位から2か月たち、樹木の根元の白っぽくなっている部分の長さから、水位が数十センチ下がったことが推定できる。 手前の自然堤防のような微高地は水面上に現れたが、後背湿地はまだ水浸しである。水位はあと少なくとも 2m くらいは下がるので、まだ減水が始まったばかりの状態と言える。
1982年8月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-18 55 29.40, -57 25 25.01 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 233°
PanoraGeo-No.564
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野鳥の楽園パンタナール | 16 /17 |
ブラジルの代表的淡水大型魚、ドラードDourado, a typical large freshwater fish of Brazil |
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マトグロッソドスール州のコルンバ港を出てパンタナールを周遊する観光ボートの船頭さんが、船の速度を緩めて流し釣りを始めたなと思ったら、間もなく獲物がかかった。ドラード(Dourado) という大型魚である。 ドラードはアマゾン流域やパンタナールを流れるパラグアイ川とそれが注ぐパラナ川の流域などに棲息する淡水魚で、体長1m くらいのものもいる。 その名はポルトガル語の黄金(オーロ、Ouro)を語源とする「金色の」という意味で、その名の通り金色に輝く美しい魚である。 パンタナールでは、地元民の漁業はあまり盛んでないが、観光客によるスポーツフィッシングの人気は高まりつつあり、その中心がここコルンバである。 ただし、魚が餌と産卵場所を求めて川を一斉に遡るピラセマという現象が起こる時期、すなわち魚の繁殖期は禁漁である。 ピラセマの時期は、北部パンタナールでは 10 月から翌年1月、南部パンタナールでは 11 月から翌年2月くらいまでと若干のずれがある。 ピラセマの開始はその年の雨季の始まりを告げるものでもある。
1982年8月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-18 56 32.25, -57 25 49.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り -
PanoraGeo-No.563
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野鳥の楽園パンタナール | 17 /17 |
パラグアイ川から見たウルクン山地Urucum Mountains seen from the Paraguay River |
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南部パンタナールのコルンバ市付近には、標高100m 前後のパンタナールの低地から突き出して最高 971m に達するウルクン山地がある。 そのうち、この写真の遠方に見える山塊には鉄鉱石とマンガン鉱を産するウルクン鉱山があり、カラジャス鉱山やイタビラ鉱山を持つ世界的資源企業ヴァーレ社が生産にあたっている*1)。 ウルクンという名は、鉄鉱石(ヘマタイト)の条痕色がベニノキ(ブラジルでウルクンという)の実からとれる赤い色素(アナトー)に似ていることに由来する。 ウルクン鉱山の鉄鉱石は、カラジャスやイタビラと同じような堆積性(化学的沈殿性)の縞状鉄鉱床から産出する。 しかし、前二者が 20 億年くらい前の先カンブリア時代原生代の前期に生成された、いわば普通の縞状鉄鉱床であるのに対し、ウルクンの鉱床は原生代末期(6~6.5 億年前)という比較的新しい時代にできたものである。 また、この鉱床では鉄鉱石(ヘマタイト)とマンガン鉱(クリプトメレン)が互層をなしていて、両者が一か所で採れるという特徴もある*2)。 このよう特徴的な鉱床を含む地層(ジャカジゴ層群サンタクルス層)の生成については昔から現在までさまざまな意見が出ているが、最近では、この地層に寒冷な気候を示す特徴があることから、原生代末に地球全体が氷に覆われるような寒冷期があったとするスノーボールアース〈雪球地球)仮説の証拠にもなっている。
*1)
VALE(2014):Learn about the mines of the Central-West System in Mato Grosso do Sul(英語)
*2)Godoi, Hélios de Oliveira et al.(2001):
250,000分の1地質図-Corumbá/Aldeia Tomázia/Porto Murtinho図幅の説明書、 p.45。
1982年8月20日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-19 1 34.82, -57 28 10.54 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 201°
PanoraGeo-No.562