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この図で、風力階級3~4すなわち赤~紫に塗られたところがブラジルにおける
強風地帯である。強風地帯としては、①南部地方南部の海岸部、②北東部地方(ノルデステ)の
北海岸、および、③北東部地方から南東部地方の内陸をほぼ南北に走る地帯の3つが認められる。
このうちの③はエスピニャッソ山脈とその北に続くジアマンチーナ台地
(シャパーダ・ジアマンチーナ)である。
一方、赤道無風帯という言葉がある通り、アマゾン地方(北部地方)の風は弱い。 出典:ANEEL(国家電力庁)2003:Programma do potencial eólico brasileiro の図を Gustavo Rodrigures Silva(2003):Características de Vento da Região Nordeste (UFPE修士論文) から再引用して編集 (https://repositorio.ufpe.br/bitstream/123456789/5432/1/arquivo7341_1.pdf)、ポルトガル語、8.3MB) |
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ブラジル南部地方南部の海岸一帯は、ブラジルにおける強風地帯の
ひとつである。この写真は、ブラジル最南の港湾都市リオグランデの郊外の冬の"風”景である。
ブラジルでもここまで南(南緯32度)に来ると、冬にはかなり寒い日がある。
この日は、強い南西風が吹きすさぶ寒い一日であった。
写真手前の池に立つ波は、左から右へ吹く南西風による風波で、はるか向こうに見える
パトス湖南部の入り江の水面もかなり荒れている。
この寒冷な南西風は、アルゼンチン南部パタゴニア地方を中心とする高気圧の寒気が
吹き出してくるものである。この寒気と北方の暖気との間にある寒冷前線が通過した後には
とくに強まる。ブラジルのいくつかの地方風のひとつで、ミヌアノ(Minuano)とよばれ
るものである。この地方では大西洋から吹き寄せる暖かい北東風の頻度が最も高いが、
寒冷なミヌアノの方が住民にとっての印象は強いようである。
住居や耕地のまわりの木立は主に防風林として人が植えたもので、もともとのこの付近の海岸低地は
草原であった。
2004年8月21日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-32 5 19.71, -52 13 10.36 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 335° PanoraGeo-No.565 |
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ブラジル高原東部の内陸を南北に走るエスピニャッソ山脈は、ブラジルにおける
風の強い地域のひとつである(
ブラジルにおける風の強さの分布の図における③)。
写真のモーロドカメリーニョ風力発電試験場は、1994 年、ミナスジェライス電力会社(CEMIG)が、
この山脈の標高 1300m の高所に建設したもので、一般配電系統に接続された風力発電所としては
ブラジル最初のものである。写真手前の道路にある構造物は、牧場の家畜が逃げないように
扉の代わりに設置したキャトルグリッドで、ブラジルではマタブーロ(Mata-burro)、
日本では家畜脱出防止溝などとよばれる。人や車は容易に通過できるが、牛などの動物は足が隙間に
落ちるのが怖くて通らない。
2000年1月5日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-18 35 17.25, -43 53 57.17 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 358° PanoraGeo-No.369 |
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ブラジル北東部地方の海岸から東へ 350km、南緯4度付近の
大西洋に浮かぶフェルナンドデノローニャ島には、1992 年、この写真のブラジルで最初の
風力発電装置が設置された。ペルナンブコ連邦大学がデンマーク政府の協力のもとに
造ったものである(この島はペルナンブコ州に属している)。
常に南東貿易風が吹き抜けるこの島が風力発電には適していると考えたからであろう。
この風力発電装置は、当初、島の消費電力の10%ほどを供給していが、この写真を撮影してから
2年後の 2009 年に落雷を受けてプロペラの羽根の一枚が落下して炎上したため、
撤去されてしまい今は存在しない。
2007年3月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 49 58.52, -32 23 58.51 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 208° PanoraGeo-No.375 |
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フェルナンドデノローニャ島の北東部にある港に隣接するサントアントニオ
要塞跡から見た西方の海には、沈み行く夕日を背景に無数の漁船が停泊している。
北東-南西方向に長いこの島の南東側の海は「外の海」(マール・デ・フォーラ、Mar de Fora)、
この写真の北西側の海は「内の海」(マール・デ・デントロ、Mar de Dentro)とよばれる。
南東側の「外の海」は、南東貿易風が吹き付ける荒海、一方、島の北西側の「内の海」は
貿易風に対して島陰に位置する静かな海である。当然、この島の唯一の港はこちら側にある。
ブラジルではその定常性に注目して、貿易風のことを「滑らかな」(liso、リーゾ)を語源とする
アリージオ(Alísio)とよび、フランスやイタリアなど多くのラテン系の国でもそうである。
日本にも「恒信風」という言葉がある。貿易風のこのような定常性のお陰で、この港は、
さして深く入り組んだ湾内にあるわけでもないのに、波が常に静かな天然の良港になっている
(この港付近のGoogle Earth衛星写真)。
2007年3月28日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):3 49 58.63, -32 23 58.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 287° PanoraGeo-No.566 |
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ブラジル北東部地方リオグランデドノルテ州の州都ナタールの郊外にある
観光地ジェニパブ砂丘からナタール市街を遠望した写真である。
南米大陸北東端のサンロケ岬に近いナタールは、ブラジルの州都の中で最も日照時間が長いので
「太陽の都市」とよばれている(資料:ブラジル各州都の
日照時間)。また、アメリカ大陸で最もきれいな空気の街というタイトルをNASAからもらったことも
市民の自慢の種である。しかし、何と言ってもナタール一番の売り物は砂丘である。都市公園としては
ブラジル1~2の広さといわれる「砂丘公園」、2014 年のサッカーワールドカップの会場となったサッカー場の
名は「ドゥーナ(砂丘)スタジアム」である。言うまでもなく、砂丘は風によって運ばれてきた砂がたまって
できた丘であるから、まさに"風"景である。ナタールはノルデステ(北東部地方)北海岸の強風地帯
(参照:ブラジルにおける風の強さの分布の図の②)の
東の端にある。これより西へ伸びる強風地帯の海岸には多数の砂丘が並んでいる。
001年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-5 42 25.98, -35 12 8.99 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 181° PanoraGeo-No.370 |
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リオグランデドノルテ州の州都ナタールの郊外にあるジェニパブ砂丘では、
この写真のように、バギーで砂丘を縦横に走り回り、砂浜や小さな湖(ラグーン)を巡回するツアーが
大人気。ナタールほどバギーがたくさんある都市は類がないということで、「太陽の都市」ナタールは、
「世界的バギーの都」というタイトルももっている。 日照時間が長く砂丘が多いというと、砂漠のオアシス都市を想像するかもしれないが、そうではない。 ナタールの気候は、雨季と乾季がはっきり分かれた熱帯サバナ気候で、年降水量は1700mmあまりもある。 その砂丘は、海から吹きつける南東貿易風や海風によって砂浜の砂が吹き上げられてできたもので、 日本の鳥取砂丘などと同じ海岸砂丘である。 1) ブラジル気象庁(INMET)資料(1981-2010年平年値) 2001年3月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-5 42 56.38, -35 13 15.56 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 95° PanoraGeo-No.371 |
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ブラジル北東部地方(ノルデステ)の北海岸には、どこでもかなり規模の
大きい砂丘が形成されている。この地方の強い東風で海岸の砂が吹き上げられてできた海岸砂丘である。
この写真の手前のビルが林立しているところは、ノルデステ第2の都市フォルタレーザの都心で、
その左、海岸までの間の裸地が目立つところが砂丘である。セアラ州の州都フォルタレーザの近年の
成長は著しく、この写真を撮影した 1993 年時点でも、すでにこの砂丘地に住宅が建ち始めていたが、
現在では完全に砂丘は市街地化され、そこが砂丘であったことさえわからない状態である。
フォルタレーザの海岸から南東方向へ、すなわちこの写真の遠方へとのびる海岸に沿いに、
幅2㎞前後の砂丘が連続している。
1993年7月23日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-3 41 36.36, -38 30 9.25 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 150° PanoraGeo-No.567 |
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カモシンは、ブラジル北東部地方(ノルデステ)北海岸、セアラ州西部の海岸
にある人口6万ほどの小都市である。沿岸漁業が盛んで、毎日、朝の海には漁師の小舟が並ぶ。三角帆が穏やかな
東風をはらんでいる。この三角帆は、膨らんだ帆の凹面と凸面の空気の流れの速さの差、それによって生ずる
圧力の差を利用して、風に向かっても進むことができるという優れものである。植民地時代初期の
ブラジルでは、ジャンガーダ(Jangada)という丸太を並べてつくった帆かけ舟が、漁師の間で広く
使われていたが、この三角帆はジャンガーダに由来するものである。
時代の流れとともに、ジャンガーダを使った漁が見られる地方は減り、ノルデステ、とくにその北海岸に
絞られてきたが、その経緯に関しては、次のような説が有力である。18 世紀頃、ミナスジェライス州などを
中心としてゴールドラッシュが起きた時代に、ポルトガル王室は、金の密輸を防ぐために舟の出入りを厳しく
取り締まるようになった。そのため、ジャンガーダを使う漁も行いにくくなり衰退していった。
その中にあって、北東部地方北海岸は、住民も少なく、強いギアナ海流が流れる沖を外航船が通る
こともなかったため、当局の取り締まりがゆるく、ジャンガーダが生き残ることができた。
2011年8月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 53 6.40, -40 50 47.46 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 56° PanoraGeo-No.372 |
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ブラジルの”風”景 9 / 13 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジル北東部地方(ノルデステ)北海岸、セアラ州カモシン市の午後の海。
午前中の穏やかな東風の"風"景は一変し、強風地帯の本領を発揮しはじめる。強風が吹き荒れ、
海面は風波が崩れて白波が目立つ。強風は東西に走る海岸線に斜めの東北東から吹き込む。
南緯3度前後のこの地域は、世界の風というスケールあるいは大気の大循環からみれば
南東貿易風の地帯である。
しかしこの地域にはもう一つの風がある。それは、日中、日射で暖まり低圧になった陸地へ海から吹く
海風と、夜間その反対に吹く陸風の繰り返し、すなわち海陸風である。半乾燥気候で植生がまばらな
この地方の陸地は、日中とくに高温になるので、海風が非常に強い。毎日午後になると吹き始めるこの写真の
ような風は、海風が貿易風の助けも借りて生じた強風であろう。
2011年8月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 52 45.35, -40 50 59.60 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 8° PanoraGeo-No.373 |
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ブラジル北東部地方(ノルデステ)の北海岸、セアラ州西部のカモシン市郊外
の海岸では、午後遅くになっても、昼ごろから吹き始めた強い海風は依然として吹いている。
午前中の海の"風"景の主役であった漁船は岸に繋がれ、代わりに主役に躍り出たのはカイト(凧)サーファー
である。強風地帯のノルデステ北海岸はカイトサーファーたちの天国である。ブラジルで
カイトサーフィンに向いたビーチが最も多いのはこの地帯である。このことは、世界の主要カイトサーフィン
スポットの風向・風速・気温などの状況をリアルタイムに発信している
Local Kite Spots
というホームページに登録されたスポットの数の多さからもわかる。 上記の Local Kite Spots をクリックすると、主要カイトサーフィンスポットの分布を示す衛星写真 と各スポットの風向・風速・気温を示す表が現れる。その衛星写真をクリックすると 今の時刻の風速・風向が一目でわかる衛星写真(地図にも変えられる)になる。午前と午後 (ブラジルと日本の時差は 12 時間なので、日本時間では、たとえば、夜9時と午前3時)を比べれば、 ノルデステ北海岸では、午前中は穏やかな南東風(貿易風)が吹き、午後には強い東~東北東風 (おもに海風)になることが確かめられる(ただし、季節によってははっきりしないこともある)。 2011年8月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 52 44.72, -40 57 30.05 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 25° PanoraGeo-No.376 |
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左遠方に林立するのは、ノルデステ(北東部地方)北海岸の強風地帯の一角、
セアラ州西部のカモシン市西郊にあるプライアフォルモーザ風力発電所の風車である。この発電所は、
50 基の風車で約 10 万kWを発電しており、ブラジルでは中規模の風力発電所である。午後の海風は、
日没時になっても依然として強く、風車が活発に回っている。風車が立っている凹凸のシルエット
(地表)はすべて砂丘である。 ブラジルでは風力発電所の建設が急ピッチで進んでいる( 資料:ブラジルの電源エネルギー別発電量)。 2019年2月現在、583 か所の発電所で、1470 万kW の電力を発生できるまでになった。 これは、あの巨大なイタイプー水力発電所(1400 万KW)に匹敵する発電量である。 地域別では強風地帯の多いノルデステが圧倒的である (資料:ブラジルの風力発電所)。 なお、ブラジルで、この写真のような海に沈む太陽が見えるのは、ノルデステ北海岸の一部だけである。 2011年8月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 52 53.09, -40 57 46.68 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 265° PanoraGeo-No.374 |
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多くの海岸砂丘が並ぶブラジル北東部地方(ノルデステ)北海岸強風地帯の
西の端にあるレンソイスマラニェンセスはブラジル最大の砂丘地帯である。海岸沿いに 70㎞ 続き、
内陸への幅は最大 25km にも達する。三日月型のバルハン砂丘
が横に連接した、横列砂丘への漸移型の砂丘(偽バルハン型砂丘)が 50~60 列も並んでいる。
この型の砂丘は、強い風が吹くところにできるという点ではバルハン砂丘と同じであるが、
バルハン砂丘より砂がたくさん供給される条件のところに形成される。
その名のマラニェンセスは「マラニョン州の」の意で、レンソイスは敷布(シーツ)を意味する
レンソール(Lençol)の複数形である。高いところから見ると、皺くちゃになったシーツのように見えるから
そうよばれるらしい*1)。この砂丘地帯の 1566km2は国立公園に指定されている。
*1)Maíra Pabst(2017):https://www.redbull.com/br-pt/10-curiosidades-sobre-os-lencois-maranhenses (ポルトガル語) 1993年8月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 49 29.80, -43 0 17.45 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 352° 写真中心位置:-2 33 29.77, -43 2 22.04 (Google Map) PanoraGeo-No.48 |
敷布のシワシワは空から見た |
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レンソイスマラニェンセス砂丘は、現在でも移動し、その風下の端では
緑の地表を埋めつつ前進している。これはそのような砂丘の前線に当たる部分をクローズアップ
した 1993 年の写真である。Google Earth の最近(2018年)の衛星写真と比較すると、
大きいところでは 350m も前進していることがわかる。年間平均 14m という速さである
(参考資料)。
レンソイスの砂丘がこのように広大で、しかも今でも拡大し続けている要因は何だろうか?
要因のひとつは強い風であるが、もうひとつは 100㎞ ほど東に河口がある
パルナイーバ川から来る大量の漂砂である。
すなわち、この川が流し出す大量の砂が、強い東風で生ずる風波や沿岸流によって
砂浜や浅海底伝いに運ばれて来て、吹き上げられ、大規模な海岸砂丘が形成される。
1993年8月10日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-2 49 19.93, -43 1 55.96 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 7° 写真中心位置:-2 39 31.43, -43 0 45.70 (Google Map) PanoraGeo-No.49 |
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