アタカマ砂漠・アタカマ高地 0 / 20 | 目次へ↑ | 次の画像へ |
南アメリカ乾燥ダイアゴナルは、北部のペルーでは太平洋沿岸とアンデス山脈西斜面に限られるが、 ダイアゴナルの中部にあたるチリ北部、ボリビア南部、アルゼンチン北西部一帯では、アンデス山脈の大部分を 含むようになる。太平洋岸から標高 2500~3000m までが「アタカマ砂漠」、それ以上の高所が「アタカマ高地」である。 |
背景の写真は、アタカマ砂漠の「砂漠の手」、
このテーマのページ 5 / 20 参照 2003年9月3日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-24 8 53.38, -70 9 30.36 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 167° |
PanoraGeo-No.475 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 1 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠は、チリ北部の太平洋とアンデス山脈の間にあり、ペルー国境付近の
南緯18度から南緯 30 度あたりまで、南北約 1300㎞ つづき、東西の幅はもっとも広いところで 150㎞
前後である。ただし、この範囲のみが砂漠なのではない。東に接するアンデス山脈の高所も砂漠であり、
北に接するペルーの海岸部も砂漠である。
アタカマ砂漠の核心地域(ほぼ、南緯 22 度から 27 度まで)は、世界でもっとも雨の少ないところといわれ、
この写真のような青空の下に無植生の山地や平原がひろがっている。
しかし、この写真には、雨が少ないことと矛盾するような景観が目立つ。
ひとつは、砂漠ワニス(参照1
or 参照2)で黒っぽくなった山の斜面に刻まれた無数の白い筋。
大雨の際に斜面を流れ下る水の流れが刻んだ浅い溝、すなわちガリーである。20~30 年に一度くらいある
大雨の産物であろう。ここに近いアントファガスタの降雨記録では、最近の大雨は 1991 年6月 17 日の
降水量 14.1mm1) で、この時には、同市の裏山で土石流や山崩れが発生したという。
また、この写真の山をやや深く刻んだ谷とその出口にできた扇状地も流水がつくった地形である。
このように規模の大きな地形は、現在のような雨の少ない気候下でできるものではなく、
おそらく1万年以上前の氷期に、ここでも雨が多かった状況でできたものであろう。 1) Direccion Meteorologica de Chile (2001) :Estadistica Climatologia Tomo I, p.164 2003年9月3日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-24 13 14.05, -70 6 46.07 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 207° PanoraGeo-No.420 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 2 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠核心地域で最大の都市は、太平洋に臨む港湾都市アントファガスタ
である。この写真の港から各種の地下資源を積み出すチリ北部の流通の拠点として発展してきた。
この港のある市中心部より 20㎞ あまり北の空港近くには、
南回帰線を示すモニュメントがある。
南北回帰線を中心とした大陸西岸では、亜熱帯高気圧と沖を流れる寒流の影響によって、海岸砂漠(西岸砂漠)
が発達するといわれ、アタカマ砂漠はその典型であり、アントファガスタは典型的な海岸砂漠気候の都市である。
右の表に示されたアントファガスタの気候の特徴は、きわめて少ない降水量(年降水量 1.3mm)、
緯度の割には気温が低く(16.6℃)年較差の小さい(6.6℃)ことである。また、湿度が高く
(年平均 77%)海霧が多発する。写真の朝も、晴れてはいるが、
湿気が高いために靄(もや)がちで、沖合の船舶が霞んで見える。なお、アタカマ砂漠で海霧が多発するのは
海岸沿いの狭い地域に限られている(参照:チリ北部の気候区)。
1) 気象庁資料平年値(1981-2010年) 2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-23 39 41.86, -70 24 12.62 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 345° PanoraGeo-No.213 |
アントファガスタの気候1) |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 3 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠のほとんどの地域は、海岸山脈の急斜面が太平洋に迫っていて、
海岸に広い平地はない。写真は、アントファガスタ市の港に接する旧市街地のウリベ通りから、
背後にせまる無植生の海岸山脈を望んだものである。海岸の平地が狭いので、市街の拡大にともなう新市街地は、
山の麓の緩斜面へと拡大している。アントファガスタ市の人口は、1992 年国勢調査の 22.5 万が 2012 年
には 35.5万、現在では 40 万に近いというように急増中で、チリ第五の都市になっている。
南アメリカ乾燥ダイアゴナルには、ペルーのリマをはじめとしてこれより大きい都市がいくつかあるが、
いずれも外来河川に沿う水の豊かなオアシスに立地している。これに対して、アントファガスタのオアシスは
極めて小規模で、多くの住民を養うことはできない。このように不利な厳しい環境でも、
都市が成立し今でも顕著に成長しているのは、さまざまな鉱物資源のおかげである。
すなわち、成立当初はグアノ(海鳥の糞の集積物)、それに続くチリ硝石、そして現在は銅である。
産業や生活に不可欠な水は、300㎞ あまり遠方のアンデス山麓からパイプラインでひいてきており、
最近ではろ過膜を使用した海水の淡水化による飲料水も普及している。
2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-23 38 54.48, -70 24 5.23 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 216°136° PanoraGeo-No.425 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 4 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
チリ北部、アタカマ砂漠を行くアントファガスタ・ボリビア鉄道(FCAB)の貨物列車。
この鉄道は、アントファガスタがまだボリビア領であった 1873 年に建設が始まり、同市に
近いこの写真の部分は同年中に完成したが、当時のおもな貨物はチリ硝石であった。
150 年近くたった現在でも健在のこの鉄道の現在のおもな貨物は、銅とその製錬時に大量にできる硫酸である。
チリは世界一の銅の生産国で、世界の銅鉱の31%を産出している(2014年)。
写真の列車は、チュキカマタ鉱山から輸出港アントファガスタへ、銅地金を運んでいる。
チュキカマタ鉱山は銅鉱石(選鉱)のほか、併設された精錬所で銅地金(銅カソード)も生産し
て出荷している。
あたかも材木でも運ぶかのように、無蓋貨車で銅地金が運ばれるのは、ほとんど雨の降らない
アタカマ砂漠ならではの光景である。鉄道も、ほとんど水が流れることのないワジ(砂漠の涸れ川)の
底の平坦地を利用して敷設されている。
この写真撮影のあと、アントファガスタ北 60km のメヒヨネス市に大規模な工業港が開かれ、
アントファガスタ港に代わるこの地方第一の銅積出港となった。
2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-23 43 17.38, -70 22 12.64 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 296° PanoraGeo-No.4 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 5 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
植生が全く見られない単調なアタカマ砂漠核心地域の原野に、マノ・デル・デシエルト(砂漠の手)
の彫刻が忽然と現れる。
チリの彫刻家マリオ・イララサバルが、1992 年に、地元の企業の依頼のもとに制作した、高さ 11m の
鉄筋コンクリート造りの彫刻である。
夕暮れ間近の砂漠はうっすらと霞んでいる。海岸砂漠特有の海霧か? いや、海霧は、標高 2000m 前後の
海岸山脈(写真の背景)によって海と隔てられたこの標高約1100mの高さまでは上がって来ない。
実は、この霞は、40kmほど北、アントファガスタ郊外の高原にある銅精錬所などからの煙であった。
砂漠では、昼と夜の地表の温度差が大きく、日中に高温になった地表は日が暮れる頃には急速に冷える。
このため大気の下層が冷えて強い逆転層が発生、工場などから排出された煙は上昇できずに地面に沿って
流れ、砂漠を広く覆うことになる。
2003年8月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-24 9 58.34, -70 8 49.35 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 312° PanoraGeo-No.212 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 6 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠の内陸部、チリ海岸山脈とアンデス山脈の間にひろがる
標高 1000m 台の平原から東方を望むと、平原のかなたに、アタカマ高地の高峰
ユヤイヤコ火山(6739m)が見える。19 世紀後半に3回の噴火の記録があり、
歴史上の噴火記録がある火山としては世界最高の火山である。
その手前に横たわる山脈は、アンデス山脈の西側の前衛といえるドメイコ(Domeyko)山脈で、
この山脈の向こう(東)には、アタカマ高地の砂漠がひろがっている。
ユヤイヤコ火山は 6000m 級の高峰であるにもかかわらず、ほとんど白雪を戴いておらず氷河もない。
この緯度では、アンデス山脈の高所まで著しく乾燥した気候であるためである。
2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-24 18 14.95, -69 59 21.95 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 107° PanoraGeo-No.426 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 7 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
無植生のアタカマ砂漠を縦貫するパンアメリカンハイウェーと
アントファガスタ行き長距離バス。その向こうに見える低い平らな丘は、
この地方でかつて盛んだったチリ硝石の採掘所、ロサリオ鉱山の捨石(ボタまたはズリ)置き場である。
チリ硝石(化学組成 NaNO3、硝酸ナトリウム)は水にきわめて溶けやすい塩で、
カリーチ
(CaCO3)よりさらに乾燥したアタカマ砂漠核心地域のような気候でないと生成されない。肥料や
火薬の原料としてかつては貴重品だったこの物質の産地をめぐって、ペルー・ボリビアと
チリとの間で太平洋戦争(1879-1883)が起き、戦勝国チリがアタカマ砂漠核心地域を獲得した。
スカイラインをなす山は、アンデス山脈の前衛山脈であるドメイコ山脈。
2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-24 18 15.13, -69 59 22.15 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 120° PanoraGeo-No.422 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 8 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠の大部分は、標高 2000~3000m のチリ海岸山脈とその背後(内陸側)
に横たわる平原からなる。ともに太平洋の海岸線に沿って南北にのびている。海岸山脈は、太平洋に
急な斜面を向けてそびえ、その麓に海岸平野はほとんどみられない。平原は海岸山脈より数百m
低まった溝状の盆地で、背後にはアンデス山脈の前山がそびえている。
パンアメリカンハイウェー(チリ国道5号線)は地形の険しい海岸沿いを避け、この平原を通過している
(参照:アタカマ砂漠の地形東西断面)。
この平原を南下してきたハイウェーは、アタカマ砂漠の南部に近づくと、
チャニャラルやカルデラのような主要な鉱産物積出港に寄るために、海岸山脈を越えて海岸へ
向かう。写真は、これから越える海岸山脈を前にして、平原を進むパンアメリカンハイウェーで、
正面の峰は、海岸山脈の一峰、カテドラル山(2289m)である。
2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-25 18 46.45, -69 52 8.43 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 210° PanoraGeo-No.210 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 9 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
コピアポはアタカマ砂漠核心地域の南端に位置する都市。ここは、年降水量
20mm 以下で、無植生の土地がひろがるが、これより南では、年に数十ミリの降水があり疎らな植生がみられる
ようになる。コピアポを流れるコピアポ川は、コピアポ火山などアタカマ高地の山々の融雪水に
涵養される水の豊かな外来河川である。その下流部約 150㎞ の沿岸には耕地が続いている。
写真は、コピアポ市のやや下流に開かれたブドウ園で、畝にはオリーブや
ポプラの木立も見られる。この付近の海岸山脈には、銅や金をはじめとした金属資源を産する
鉱山が多い。2010 年、落盤で大勢の労働者が地下 600m に閉じ込められ、69 日後に奇跡的に救助されて
話題になったサンホセ鉱山は、この写真の地点から 15㎞ ほど北にある。
ペルーの海岸砂漠に比べると、アタカマ砂漠にはこのような河川オアシスが非常に少ない。とくに、
このコピアポ川より北では、カラマ市などがあるロア川まで約 600km にわたって川らしい川がなく、
無植生の砂漠、すなわちアタカマ砂漠核心地域がひろがる。 1) Direccion Meteorologica de Chile(2001):ESTADISTICA CLIMATOLOGIA, Tomo I より作成 2003年9月1日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 17 52.74, -70 27 29.73 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 6° PanoraGeo-No.208 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 10 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ州の州都コピアポから、東へ、アルゼンチンへ続く国際道路(国道 31 号線)を
60㎞ ほど行ったところに、プキオス(Puquios)という都市が、多くの観光地図や道路地図に載っている(たとえば、
こちら)。
しかし、アルゼンチンに行くにしても、ネバド・(デ)・トレスクルセス国立公園に行くにしても、これより先には町らしいものはないので、
ここまで行って一休み、水でも補給しよう・・・などと予定を立てたら、大まちがい。
プキオスとおぼしき場所には、写真のようなアドベ(日干し煉瓦)造りの家屋の残骸が並んでいるだけである。
プキオスは、周辺にあった 20~30 の小規模な銅山の従業員が住む人口約 5000 の鉱山都市であった。
コピアポや積出港のカルデラへ通じる鉄道のターミナルでもあった。資源の枯渇によって、多くの鉱山が閉じられた
1930 年ごろ、この都市は放棄された。水もなく畑もできない環境では、鉱山がなくなれば、
都市が存続できる条件は皆無である。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 9 37.21, -69 53 24.33 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 116° PanoraGeo-No.424 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 11 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ州の州都コピアポから東へアンデス山脈に向かい、前山の
ドメイコ山脈に分け入った標高 2000m 付近。南緯 27 度前後のアンデス山脈では、
東方のアルゼンチン平原から来る湿った風を受ける東斜面はかなり雨が降り緑が濃いが、
西斜面のドメイコ山脈は、アタカマ砂漠の続きで降水量がきわめて少ない。
伏流水のある谷底には若干の植生がみられるものの、斜面には全く植生がない。
昼と夜の気温の大きな変化や時折降る雨による急激な水分変化などによって
岩盤が砕かれて(機械的風化作用)できた砂が、崩れ積もったスムーズな斜面の
角度は約 30 度。乾燥した砂などの粉体が落下、堆積したときにできる斜面の角度である
安息角にほぼ一致している。中生代の堆積岩の色の違う岩石が分解してできた砂の斜面は、
濃淡、絶妙のグラデーションを見せている。
2003年8月30撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 9 40.50, -69 38 49.17 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 126° PanoraGeo-No.46 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 12 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠の東に連なるアンデス山脈(アタカマ高地)の標高 2500~3000m 以上は、
高地砂漠気候で、冬を中心に年間数十mm の降水がある。写真の地点より 70㎞ ほど北にある
標高 2850m のポトレリーリョス鉱山では、5月~8月を中心に、年 60mm 程度の降水が記録されている。
写真は、コピアポ市東方、アンデス山脈の前山であるドメイコ山脈の標高 3150m の谷間にあった
人家と牧場である。
谷底の小川沿いの草以外にも、斜面には灌木が点々と生え、季節によっては草が茂るので、牧畜が可能である。
斜面にある水平な縞模様は、草を食む家畜が歩いてできた家畜の道(cattle lane)である。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 3 26.33, -69 19 31.56 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 120° PanoraGeo-No.211 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 13 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ砂漠、とくにその核心地域の東方に接してひろがる
アンデス山脈中軸部をアタカマ高地という。アルティプラノ(ボリビア高原)の
南方延長であるが、アルティプラノのように広々としたな平原がないので「高原」ではなく
「高地」という。現地語ではプーナ・デ・アタカマ(Puna de Atacama)である。
南北 600㎞、東西 300㎞ の範囲に、標高 3000~4000m の盆地と 5000~6000m 台の山岳とが、多数、
複雑に入り組んで分布している(参照:アタカマ高地の衛星写真)。
写真は、そのようなアタカマ高地の一部で、正面に見えるのが、三つの峰からなる火山の
(ネバド・デ・)トレスクルセス火山(6749m)、その手前には、
これらの山から押し出した扇状地で埋められた盆地がある。扇端部にわずかに残った水面は、
水面標高約 3800m で半ば塩地化したサンタローサ湖である。
この付近一帯はチリのネバド・(デ)・トレスクルセス国立公園に指定されている。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 4 39.09, -69 13 38.50 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 93° PanoraGeo-No.427 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 14 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
サンタローサ湖は、チリ・アルゼンチン国境北部のアンデス山脈中軸にひろがる
アタカマ高地にある小さな塩湖で、標高約 3800m。
一部は塩類が集積して塩地になっている。背後の山は(ネバド・デ・)トレスクルセス火山で、
写真右の南峰(6748m)、中央峰、やや手前にある低い北峰の三つの峰からなっている。
その名は「三つの十字架」という意味である。
谷筋には小さな氷河があり、雪線は 6000m 前後とされているが、降水量が極端に少ない上、
積雪も強風で吹き払われるため、この写真を撮影した厳冬期の8月でも、山頂部や尾根筋に雪はない。
世界最高の火山(休火山)といわれるオホスデルサラド山(6887m)がこの山の真後ろに隠れている。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 5 18.50, -69 10 21.60 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 87° PanoraGeo-No.47 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 15 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アタカマ高地の南部、チリのネバド・(デ)・トレスクルセス国立公園内の
標高 3800m の盆地には、トレスクルセス火山などの周囲の山から流れ出る川がつくった
扇状地の広大な礫砂漠がひろがっている。
写真の遠方、この扇状地の扇端にはマリクンガ塩地があるはずであるが、浮島現象のために見えない。
浮島現象は逃げ水と同じ原理で生ずる下位蜃気楼といわれるもので、実物の下に鏡に映ったような形の
虚像が見える。マリクンガ塩地の上の空気が日射で温められ、下部ほど高温・低密度になったため、
光が下にたわむ形に屈折して進むことによって生じた蜃気楼である。
高山気候の特徴のひとつ、強烈な日射が演ずるファンタジーといえよう。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):27 5 52.70, -69 6 44.85 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 9° PanoraGeo-No.428 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 16 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アルティプラノ(ボリビア高原)の南部からその南につづくアタカマ高地に
かけての地域(南緯 19 度~28 度)には、最大のウユニ塩地からこの写真のマリクンガ塩地のように
小さなものまで、多数の塩地(塩原)が分布している。このように塩地が多いのは、この地域がアンデス山脈でもっとも乾燥した
ところだからである。火山による堰き止めや地殻変動でできた閉じた凹地(内陸流域)の底には、周りで降った雨水や
雪解け水が集まって湖ができるが、水の量がきわめてわずかなため、凹地から溢れ出ることはなく、
そこですべて蒸発してしまう。蒸発した水から析出した塩分が少しずつ蓄積して、塩湖になり、
ついには塩原になる。
遠方のピークはコピアポ火山(6052m)である。ペルー南部からチリ・アルゼンチン北部
へのびる(南緯 15度 から 28度)中部アンデス火山群の最南部にある火山のひとつである。
この付近から南部アンデス火山群が始まるまでの約600㎞の区間、
アンデス山脈には火山はない。
2003年8月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-26 50 15.76, -69 3 47.40 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 191° PanoraGeo-No.239 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 17 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
太平洋岸に沿って南北 1300㎞ あるアタカマ砂漠の南部 300km は、
以北の核心地域より雨がやや増え、砂漠ではあるが、この写真のように緑が目につくようになる。
海岸山脈の山の斜面にも疎らであるが灌木が生え、山から流れ出す川の扇状地の植生はさらに濃い。
これは、俗に、ノルテチコ(Norte Chico)とよばれる地方の景観である。
もはや公式な地域名ではではないので「俗に」と言ったが、チリの自然や地理的特徴を
大まかにつかむには便利な用語なので、今でもチリの人々の間で使われている。
自然地域としてのノルテチコの範囲はコピアポ川流域からアコンカグア川流域(首都サンティアゴの北 50㎞)
までである1)。無植生の極端な砂漠気候から地中海性気候への漸移地帯で、
その北部が写真のような砂漠気候地域、南部がステップ気候地域である
(参照:チリ北部の気候区)。
なお、ノルテチコは「小北部」、すなわち、チリ中心部から遠くない北部という意味で、
これ以北のアタカマ砂漠核心地域などはノルテグランデ(Norte Grande、大北部)という。 1) CORFO(1950):Geografía Económica de Chile, Tomo I(9.17MB、スペイン語), p.67. 2003年8月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-27 29 46.68, -70 24 5.21 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 11° PanoraGeo-No.206 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 18 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
バエナル(またはバジェナル、南緯 28 度 34 分)はチリのアタカマ砂漠南縁部、
ノルテチコ(小北部)地方の中都市である。年降水量は 65mm で、おもに5月から8月にかけての
冬季に雨が降る。
アンデス山脈の高所の雪解け水などを集めて山麓のアタカマ砂漠へ流下してくる外来河川、
ワスコ川(Río Huasco)の河川オアシスにある。
この川の低地に立地した旧市街地は、ヨーロッパからの植民者がラテンアメリカにつくった
多くの植民都市と同様、広場と教会(写真中央の塔がある建物)を中心とた正方形の
格子状街路からなっている。人口の増加に伴い、新市街地は、3段ある河岸段丘の下位のものから上へ
と拡大している。
2003年9月2日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 34 21.82, -70 45 29.06 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 225° PanoraGeo-No.207 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 19 / 20 | 前の画像へ | 次の画像へ |
チリのアタカマ砂漠南縁部で、植物が疎らに生えた砂漠がひろがるノルテチコ(小北部)
地方の都市バエナル(バジェナル)のオアシスをつくるワスコ川である。写真右の裸の斜面は、この川がつくった
下位の河岸段丘の段丘崖で、この川にはこれを含めて3段の河岸段丘がある。
この川は、アンデス山脈の分水界に連なる標高5000~6000m級の山々の雪解け水を集めて流れ下り、
下流の砂漠を潤す外来河川である。この地方の北、アタカマ砂漠核心地域があるノルテグランデ(大北部)
地方では、アンデス山脈の高所(アタカマ高地)での降水量がきわめて少なく、雨や雪解け水は
内陸流域(内部流域)の塩地にたまって蒸発してしまい、山麓のアタカマ砂漠には達しない。
これに対してノルテチコ地方のアンデスには、内陸流域や塩地がなく、降った雨や雪解け水は
下流の砂漠に流れ出して外来河川となる。では、ノルテチコのアンデスには、なぜ内陸流域や塩地がないのか?
ひとつは最近活動した火山がなく、堰止めなどによって閉じた盆地(内陸流域)ができる可能性が低いこと、
もう一つは、降水量が若干多く、閉じた盆地があっても水があふれ出し、
あふれた川の侵食によって、長い間には、閉じた盆地はなくなってしまうこと、
このいずれか、あるいは両方が原因であろう。
2003年9月2日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-28 34 52.95, -70 45 45.37 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 154° PanoraGeo-No.429 |
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アタカマ砂漠・アタカマ高地 20 / 20 | 前の画像へ | 目次へ |
南緯30度、南アメリカ大陸西岸に沿う長大な砂漠の南限に近い海岸に、
ラセレナとコキンボという、ともに人口 20 万前後の双子都市がある。両市の市街地はほぼ連接している。
ラセレナは、首都サンティアゴに次いでチリで2番目に古い都市である。
写真のような深い湾入に恵まれたコキンボは、ラセレナの外港として発展してきた。
この港の現在のおもな積み出し品は、近くで採れる銅とワインである。
隣接した都市ラセレナの気候1)は、冬雨型で、年平均気温 13.7℃、
年降水量 86mm であるから、ケッペンの気候区分では完全な砂漠気候である。しかし、
沖を流れる寒流(フンボルト海流)が原因の一つである海岸砂漠の常として、
写真のような低い雲や海霧に閉ざされることが多い(海霧について、詳しくは、
PanoraGeoテーマ18「霧の砂漠」を参照)。
1) 気象庁資料平年値(1981-2010年) 2003年9月2日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-29 59 30.05, -71 21 43.50 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 29° PanoraGeo-No.421 |
ラセレナの気温と降水量1) |
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