シャパーダって何だ? 0 / 18 | 目次へ | 次の画像へ |
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ブラジルでシャパーダ(Chapada)とは、ほぼ水平な地層でできた
テーブル状の丘を意味し、堆積岩台地、メサ、あるいは単に台地と言える地形である
(この分布図では「○○台地」としてある)。左下の写真はその代表ともいえるアラリペ台地
(シャパーダ・ド・アラリペ)である。ブラジルにはシャパーダの名が付く国立公園が4つもあり、
上の図では赤い図柄と文字で示されている。
シャパーダの平坦な地表は、地層をつくる岩屑(土砂や礫)が堆積した時そのままの平坦面(堆積面)ではなく、
土地が隆起し侵食される過程で、侵食されにく地層の水平な表面(地層面)が現れたもの、
すなわち侵食による平坦面(侵食面)である。
分布図は IBGE(ブラジル地理統計院)2006年発行:ブラジル地形区分図(Mapa de Unidades de Relevo do Brasil) を基図とし、国立公園などを加筆して作成。 |
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シャパーダって何だ? 1 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジルのバイア州の州都サルヴァドールから350㎞ほど内陸には、
シャパーダ・ジアマンチーナ(ジアマンチーナ台地)という景勝地がある。
堆積岩からなる台地を意味するシャパーダ(Schapada)という地形名がついてはいるが、
ジアマンチーナという大きな台地があるわけではない。
シャパーダ・ジアマンチーナとは、この写真のように、小さなシャパーダ(台地あるいはメサという地形)が
多数立ち並ぶ山地の通称で、ブラジル地理統計院(IBGE)の地形区分図では
ジアマンチーナ山地(Serras da Diamantina)とされている。
この山地はいくつかの小さな山脈に細分される。そのうち観光の中心になっているのは、南北に約150㎞のびる
シンコラ山脈(Serra do Sincorá)で、その2/3くらいが
シャパーダ・ジアマンチーナ国立公園に指定されている。
1844年にダイヤモンド(ジアマンチーナはポルトガル語で「ダイヤモンドのように輝く」の意)が発見され、
その後多くの山師が押し寄せたのも、このシンコラ山脈である1)。
写真はシンコラ山脈の北部にあり、アクセスが容易なパイイナシオの丘(Morro do Pai Inácio)の頂から
見下ろしたセルカード谷(Vale do Cercado)である。この地域は国立公園の域外ではあるが、
シャパーダ・ジアマンチーナを代表する景観が展開している。 1) Pedreira, A. J.(2002): Serra do Sincorá, Chapada Diamantina, BA. Sítios Geológicos e Paleontológicos do Brasil, pp.187-194. 2007年3月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 27 28.01, -41 28 17.40 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 22° PanoraGeo-No.80 |
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シャパーダって何だ? 2 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
シャパーダ・ジアマンチーナのシンコラ山脈北部にあるセルカード谷を南から
北を向いて撮影したもので、写真左が西、右が東である。
写真の左の端にパイイナシオの丘がそびえ、正面にはユニークな形をしたカメロの丘が横たわっている。
カメロとはラクダのことである。パイイナシオの丘をつくる地層も地表も水平ではなく、
かなり西に傾いているが、それはこの丘が、緩やかな褶曲の高まった部分、
すなわち背斜(Anticline)の西翼に位置するためである。この褶曲の背斜の部分が削られて
セルカード谷になっており、このような谷を背斜谷という。
一方、カメロの丘はこの背斜谷の中に侵食に耐えてそびえる残丘である
(参照:「褶曲山地の背斜谷」の
A.シャパーダ・ジアマンチーナ、シンコラ山脈北部の地質断面)。
2007年3月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 27 40.91, -41 28 5.25 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 3° PanoraGeo-No.540 |
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シャパーダって何だ? 3 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
シャパーダ・ジアマンチーナの代表的見晴らし台であるパイイナシオの丘
から南方を臨むと、眼下に幅2㎞ ほどのカポン谷が横たわり、その両岸にテーブル状の丘
(シャパーダあるいはメサ)がそびえている。
それらの丘の崖に露出する地層を見ると、谷の西側(写真の右端)の丘の地層は緩く西(右)に
傾斜しているのに対し、谷の東側(写真の左)の丘の地層や地表は東(左)に向かって
緩く傾いている。東西の丘の地層は一連のもので、かつては緩やかに上にたわみ(褶曲し)ながら
連続していたが、現在ではその高かった部分(背斜、Anticline)が削られて谷になり、両翼が丘と
なって残っている。このような谷を背斜谷という。ここは背斜谷が一目で眺められる
貴重なスポットである
(参照:
「褶曲山地の背斜谷」のB.褶曲山地における谷の発達と地形の逆転)。
右遠方に見える孤立丘は、この背斜谷の中に削られずに残ったビュート(メサが侵食され、
頂面が狭くなった丘)のモロン(Morrão、大きな丘の意)で、この国立公園のランドマークの
ひとつである。
2007年3月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 27 32.90, -41 28 18.04 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 175° PanoraGeo-No.539 |
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シャパーダって何だ? 4 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
サンパウロからブラジル北東部地方第二の都市フォルタレーザへ向かい北上する飛行機は、
離陸のあと1時間半くらいで、シャパーダ・ジアマンチーナの上空を通過する。写真は左側の機窓から
西を望んで見えるマンガベイラ山脈である。マンガベイラ山脈はシャパーダ・ジアマンチーナの支脈の
ひとつで、同じ支脈であるシンコラ山脈と同様、先カンブリア時代の地層からなる褶曲山脈の
さまざまな侵食地形が発達している。この写真には、東(写真右)に急な崖を向け、西に傾き下る
斜面をもつ非対称な断面形の丘が多数見られる。このような地形は、褶曲山脈の背斜の翼に位置する
傾いた硬層が、侵食に耐えてできた同斜山稜(Homoclinal ridge)とよばれるものである。
同斜山稜のうち、斜面の角度が15度以下ならケスタ、45度以上ならホッグバックであるが、
この写真の丘は、そのいずれにも属さないので、単なる同斜山稜である。
2011年8月27日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-13 3 54.69, -41 41 5.12 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 274° 写真中心位置:-13 3 1.77, -41 53 24.96 (Google Map) PanoraGeo-No.544 |
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シャパーダって何だ? 5 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
これはジアマンチーナ台地(シャパーダ・ジアマンチーナ)のメサの崖に
露出している砂岩を主とした地層(トンバドール層)である。いかにも硬そうな感じがする。
この地層ができたのは先カンブリア時代の原生代中期(約 17 億~ 12 億年前)という古い時代である。
厳密にはゆるやかに傾いているとはいうものの、日本のような地殻変動の激しい
ところでは考えられないほど変形の程度は小さい。ロライマ山やエンジェルの滝で有名なギアナ高地の
ロライマ超層群の岩石も 18 億年台という年代測定結果がでており、この台地とほぼ同じである。
地形もよく似ている。しかし、ジアマンチーナ台地最大のフマーサの滝は落差 340mで、落差約 1000m の
エンジェルの滝には及ばない。ジアマンチーナ台地はギアナ高地を一回り小さくしたものと言えそうである。
2007年3月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 27 25.83, -41 28 19.99 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 260° PanoraGeo-No.250 |
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シャパーダって何だ? 6 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
シャパーダ・ジアマンチーナ国立公園
探勝のおもな基地はこの写真のレンソイスである。
ジアマンチーナの語源であるダイアモンドや金の採掘の基地として成立した集落である。市街中心部への
入口に当たるローマ風アーチ橋は、シャパーダ・ジアマンチーナ国立公園の台地(メサ)を構成する
先カンブリア時代の硬い岩石を組んで造られた美しい石橋である。
下を流れるレンソイス川の水の色が異様に黒い。アマゾン地方の
ネグロ川で代表される熱帯の「黒い水」である。
「黒い川」があるのはアマゾン地方に限らない。この国立公園から流れ出る川の多く
、たとえばこちらがこのタイプである。
2007年3月7日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 33 40.92, -41 23 21.38 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 255° PanoraGeo-No.78 |
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シャパーダって何だ? 7 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
観光地シャパーダ・ジアマンチーナの魅力のひとつは多数の鍾乳洞の存在である。
そのほとんどは、国立公園になっているシンコラ山地の麓にある二つの石灰岩台地、すなわち北西麓の
イレセー台地と東麓のウチンガ台地にある(地図参照)。
美しい鍾乳石を売り物にする鍾乳洞もあれば、この写真のように洞を満たす澄みきった水が人気のものもある。
イレセー台地にあるプラチーニャ農園(Fazenda Pratinha)のこの洞窟は、奥までシュノーケルやフィンをつけて
泳ぎ入って、神秘な光景を体験できる。イレセー台地の鍾乳洞ができた石灰岩は、シンコラ山地の岩石より
一時代新しい原生代後期(8.5億~6.5億年)のものであるが、褶曲運動で沈降した結果、
シンコラ山地より低い位置に横たわっている(参照:
「褶曲山地の背斜谷」の図の「A.シャパーダ・ジアマンチーナ、シンコラ山脈北部の地質断面」)。
2007年3月6日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 21 9.26, -41 32 27.33 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り - PanoraGeo-No.537 |
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シャパーダって何だ? 8 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジル中西部地方マトグロッソ州の州都クイアバの中心から 20㎞ ほど来た
郊外では、緩く起伏した原野を貫く波打った道路の右には、乾季で落葉した樹木も多いセラード原野
(ブラジル高原のサバナ)がひろがり、道路の左ではゲーテドコミュニティ
(治安のために塀で囲みゲートで出入りを管理する住宅団地)の建設が進んでいる。
道路の行く手に横たわるのは、シャパーダ・ドス・ギマランエス国立公園があるギマランエス台地である。
クイアバ周辺の平野は、標高 200m 前後の緩く波打った侵食平野で、先カンブリア時代の
岩石からなるブラジル楯状地の一部である。
これに対して、ギマランエス台地は、ほぼ水平に横たわる古生代以降の地層からなるテーブル状の台地、
すなわちメサという地形で、地質的には卓状地(プラットフォーム、Platform)である。
広大なブラジル楯状地には、このような卓状地が何か所かに分かれて分布し、各所でシャパーダとよばれる
頂の平らな台地を形成している。
南アメリカ大陸の地理的中心(=測地学的中心または重心)は、クイアバ市内(南緯15°35'56", 西経56°06'05")
にあるとする意見と、ギマランエス台地の上のシャパーダドスギマランエス市の郊外
(南緯 15º36'04", 西経 55º28'49")にあるとする意見があり、両方に標識が設置されている。しかし
いずれにしてもこの付近が南アメリカ大陸のど真ん中であることに変わりはない。
内陸で標高約 200m と低いところにあるクイアバ市は、暑さが極めて厳しい都市である。
2003年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-15 25 45.24, -56 1 11.64 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 44° PanoraGeo-No.542 |
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シャパーダって何だ? 9 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ギマランエス台地(シャパーダ・ドス・ギマランエス)は、ブラジル中西部地方の
マトグロッソ州にあるマトグロッソ高原の一部である。
ギマランエス台地の南西側の縁には、写真のような急崖がクイアバ市のある低地を向いて連なっている。
この垂直な崖をつくるのは中生代ジュラ紀~白亜紀(1.3億~1.5億年前)の厚さ 350m にも達する砂岩層
(ボツカツ層)で、硬いこの地層が削られてできた峡谷や奇岩群は、
シャパーダ・ドス・ギマランエス国立公園の呼び物のひとつである。 ブラジルの国立公園にはシャパーダという語が付くものが4つある (地図参照)。そのうち2つ (シャパーダ・ドス・ギマランエスとシャパーダ・ダス・メーザス Chapada das Mesas)は、 古生代や中生代の地層が先カンブリア時代の岩石を覆って横たわる卓状地であるが、残りの2つ( シャパーダ・ジアマンチーナとシャパーダ・ドス・ヴェアデイロス Chapada dos Veadeiros) は十数億年前という古い岩石の台地なので、メサであっても卓状地とは言いかねる。 2003年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-15 22 3.20, -55 50 50.73 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 58° PanoraGeo-No.9 |
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高さ 86m のヴェーウ・デ・ノイーヴァ滝はシャパーダ・ドス・ギマランエス国立公園の
中心的存在で、近くに同公園の管理事務所や売店などがある。ヴェーウ・デ・ノイーヴァとは「花嫁のベール」
という意味である。この滝は、古生代デボン紀前半(3億数千万年前)のパラナ層群フルナス層の砂岩に
懸かっている。パラナ層群という名からわかるように、ギマランエス台地は、大きな地質単位では
ブラジル南部にひろがるパラナ堆積盆地に属し、その北西端の突出した部分に位置している
(参照:ギマランエス台地と周辺の地質図)。
この滝の落ち口付近の台地は典型的なカンポセラード(セラード原野)で、流路沿いのギャラリー林(回廊林)以外は
草原に低木が散在するサバナである。撮影した8月は乾季の真っただ中なので、下草は枯れ、
多くの低木は落葉して、乾いた淡褐色の景観になっている。
2003年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-15 24 27.03, -55 49 57.54 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 169° PanoraGeo-No.533 |
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クイアバ市のある低地からギマランエス台地の崖を登り切ったあたりで現れる
中生代ジュラ紀末から白亜紀はじめ(1.3億~1.5億年前)のボツカツ層の露頭には、
大きく傾いた地層が目に付く。水平~ほぼ水平な地層でできているはずのシャパーダとしては
異様であるが、実はこれ、普通の地層ではなく偽層(ぎそう)である。斜交層理という語の方が
一般的かもしれない。このような斜交層理が多いボツカツ層自体はこんなに傾いてはいない。
この顕著な斜交層理は、砂漠気候下で、砂丘の風下側の急斜面(すべり面)に
砂が堆積してできたものである
(参照:砂丘の風下側の急斜面)。
2003年8月11日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-15 22 24.83, -55 50 55.85 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 129° PanoraGeo-No.541 |
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シャパーダって何だ? 12 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アラリペ台地(シャパーダ・ド・アラリペ)はブラジルにおける代表的シャパーダ
(堆積岩台地、メサ)のひとつで、国立公園ではないが、ブラジル唯一の世界ジオパーク
(UNESCO)である。
白亜紀前期(約1億1千億~1億2千万年前)の化石産地として世界的に有名で、これがジオパーク
認定の主な理由である。魚類、昆虫、植物などの化石が多い。
写真は頂の平らなこの台地とその北東麓のカリリの谷(Vale do Cariri)とよばれる低地を望んだもの
である。ブラジル北東部地方の内陸は、乾燥が厳しい熱帯半乾燥気候であるが、
カリリの谷は、アラリペ台地に吹き当たる風がもたらす地形性降雨に恵まれたオアシスのようなところで、
サトウキビの栽培も行われている。とくに、クラトやジュアゼイロドノルテなどの都市に近い
台地北東部は雨が多く、台地の上にも豊かな森林が茂り、アラリペ・アポジ(Araripe-Apodi)国有林
という自然保護地になっている。
996年7月26日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-7 10 48.08, -39 19 48.48 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 209° PanoraGeo-No.81 |
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シャパーダって何だ? 13 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジル北東部地方(ノルデステ)の内陸のペルナンブコ州とセアラ州の
境界に沿って東西にのびるアラリペ台地の東端部である。この台地はこの付近で最も高く、標高 970m くらいある。
この地形は、きわめて平坦な台地面とそれを取り巻く急斜面、およびその麓の緩斜面からなっている。この台地は、
侵食されにくい地層が、その下位にある柔らかい地層の侵食を防いでできるメサという地形である。
このような地形をつくる侵食されにくい地層のことをキャップロックという。この写真の平坦な台地面と
急斜面とをつくっているキャップロックは、エシュー層(Exu Formation)という砂岩層である。
この地層の下位にあり、急斜面の麓の緩斜面をつくっているのが、化石を豊富に産するサンタナ層
(Santana Formation)である。この緩斜面を刻む小川の河原では、化石を含んだ小石を見つける幸運に
恵まれることもある。
1996年7月31日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-7 17 43.89, -39 2 8.46 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 196° PanoraGeo-No.538 |
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アラリペ台地をつくる地層の最上位に横たわるのが、この写真の崖に現れている
エシュー砂岩層である。台地を取り巻く斜面最上部の急斜面をつくり、また台地の平坦さをつくって
いるのはこの地層である。もっとも厚いところで 300m もあるこの砂岩層にはほとんど化石は含まれておらず、
時代決定が難しいが、ほかの地域の同様な地層との対比などから、中生代白亜紀前期から後期にかけて
(約1億年前)のものとされている。この地層がキャップロックになる要因としては、硬く固結している
ことのほか、透水性が高くて雨水がすぐに地下に浸透してしまうため、台地表面を流れて土地を
侵食することがないこともあげられる。
この台地をジオパークにした要因である豊富な化石を含むのは、エシュー層より下位にあり、急斜面の麓に
分布する中生代白亜紀前期(1.1億~1.2億年前)のサンタナ層とよばれる地層である。アラリペ台地の地質
については、こちらを参照されたし。
1996年7月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-7 20 1.08, - 39 24 43.56 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 282° PanoraGeo-No.543 |
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シャパーダって何だ? 15 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
アラリペ台地の北東麓のカリリの谷は、地形性降雨がある上、
アラリペ台地の麓から湧く地下水も豊富で、水不足に悩む周辺地域より恵まれている。
写真はそのような湧水を集落に引く用水路の水を、途中の農家の人たちが洗濯や水浴に
利用しているところである。最近では、このような豊富な湧水を
利用した水浴リゾート施設もできた。
アラリペ台地に降った雨の大部分は地中に浸透してしまい、台地の上を流れて谷を刻むことは稀である。
したがって、アラリペ台地における侵食の主役は浸透したあと台地の麓から湧き出す地下水である。
地下水の湧き出し口付近の土砂が洗い出される作用を地下水サッピング Groundwater sapping あるいは
単にサッピングという。サッピングによって裾を削られた台地斜面では崩壊がおこり、
そのようなプロセスの繰り返しによって、台地の縁は後退してゆく。
アラリペ台地東部の衛星写真を見ると
アラリペ台地の縁には、平面形でU字型あるいはC字型に食い込んだところが多数見られるが、
これらは地下水サッピングがとくに激しく生じた部分にできた谷あるいはそのできかけの地形である。
サッピングによってできる谷には、平面形が半円形の急崖の谷頭、広いU字型横断面の谷底、谷斜面と
谷底の明瞭な傾斜変換などの特徴があり、円形劇場型谷頭谷(Amphitheater-headed valley)と
いう呼び名がある1)。このような地形は、深層風化でできた
風化層(サプロライト)の丘陵地でもみられる。 1) Barta G., De Hon R. (2014) Amphitheater-Headed Valley (Mars, Earth). In: Encyclopedia of Planetary Landforms. Springer, New York, NY. https://doi.org/10.1007/978-1-4614-9213-9_327-1 1996年7月30日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-7 20 8.51, -39 24 38.94 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 250° PanoraGeo-No.536 |
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卓状地にできたシャパーダ(メサ)の特徴は、この写真のスカイラインが示すように、
地表がきわめて平坦なことである。もっとも、その平坦な台地面は、わずかに傾いている場合が多いが、
アラリペ台地では西に向かって1㎞あたり1mくらい低下する程度で、傾きは極めて小さい。それでも、
東端で標高は1000m近くあった台地は、東端から120㎞くらい来たこの付近では 850m 程度に、
190㎞ 行った西端では 760m くらいになる。
水に乏しい台地の上には大きな集落はなく、ほとんどの都市は台地の麓か、このアラリペの町のように、
台地に切り込んだ浅い谷の湧水に恵まれた場所などに立地している。
1980年1月18日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-7 12 28.68, -40 8 22.81 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 159° PanoraGeo-No.535 |
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シャパーダって何だ? 17 / 18 | 前の画像へ | 次の画像へ |
ブラジル内陸のバイア、トカンチンス両州の州境付近上空から西を望んだ写真である。
写真下部の薄い茶色の部分は、一面に大豆畑が広がる平坦なサンフランシスコ川台地
(シャパーダス・ド・リオ・サンフランシスコ)である。色の違いで明確な
この台地の西の縁(写真では上縁)が、トカンチンス州(西=上)とバイア州(東=下)の境界であるとともに、
トカンチンス川流域とサンフランシスコ川流域の分水界である。トカンチンス川流域の侵食平野は
標高 600m 前後なのに対しサンフランシスコ川台地の縁は 900m あり、その間は比高 300m あまりで
西を向いた急斜面になっている(写真で緑の濃い部分)。この急斜面がジェラール・デ・ゴイアス山脈で、
低いトカンチンス川流域から見るとかなり険しい山地に見えるが、実際には台地を限る斜面にすぎない。
ブラジルで山地・山脈(Serra、セラ)とよばれるものの大部分はこの手のものである。
サンフランシスコ川台地はきわめて平坦であるが、東方のサンフランシスコ川に向かって1㎞ に
つき1m くらいの割合で傾斜している。したがって極めて緩やかなケスタの背面ということもできる。
撮影地点の東方にあるバイア州バレイラス市を中心としたサンフランシスコ川台地は、マトグロッソ州、
ゴイアス州などとともに、1990年代以降盛んになったカンポセラード(ブラジル高原のサバナ原野)
における大豆生産の中心地である。
2011年9月4撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-12 17 52.80, -46 11 49.31 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 289° 写真中心位置:-12 13 55.31, -46 23 28.01 (Google Map) PanoraGeo-No.534 |
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ブラジルの首都ブラジリアの東方、ゴイアス州とミナスジェライス州の境界付近の
カンポセラード(サバナ原野)を上空から南望したものである。画面の中央を縦に西向きの
(写真では右を向いた)崖が走り、その頂に平坦な土地が細長く続いて畑になっている。
この平坦地は、先カンブリア時代末期(約6億年前)の地層を覆う新生代の地層がキャプロックとなって
できたシャパーダ(台地)である。
このシャパーダは、広大なサンフランシスコ川台地の一部で、かつては、東方(画面左方)に
広がっていたが、サンフランシスコ川支流の多数の小谷によって侵食されて、緩やかな丘陵になり、
平坦地は崖の頂部に残るだけになった。
近年盛んになったカンポセラードの農地化では、機械化の容易なシャパーダの平坦地が好んで開発され、
大規模な大豆やトウモロコシ畑になっているところが多い。
2002年7月29日撮影 カメラの位置 (緯度,経度):-15 13 47.14, -46 57 3.39 (Google Map) 撮影方向:北から時計回り 176° 写真中心位置:-15 27 30.72, -46 55 51.78 (Google Map) PanoraGeo-No.116 |
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